ジャイアント・ボックス:ドン・セベスキー | かえるの音楽堂

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052-ジャイアント・ボックス













GIANT BOX: DON SEBESKY
(1973年)
 60年代にはVERVEレーベルやA&Mレーベルで、また70年代にはCTIレーベルで活躍した名アレンジャー、ドン・セベスキーは元・トロンボーン奏者でメイナード・ファーガソンや、スタン・ケントンなどのオーケストラを経て、アレンジに専念するようになりました。彼はビッグバンド・オーケストレーションを得意とし、多くのアルバムのアレンジを担当しました。VERVEではウェス・モンゴメリーの「夢のカリフォルニア」やアストラッド・ジルベルトの「いそしぎ」などのアレンジを行い、A&Mではウェス・モンゴメリー名盤「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を、またCTIでもフレディ・ハバード、ジム・ホール、ミルト・ジャクソン他、多くの作品のアレンジを手がけました。CTIではレーベル最大のヒット作であるジム・ホールの「アランフェス協奏曲」での仕事が特筆されます。CTIのアレンジャーとして一躍、時代の音を築いたセベスキーですがキャリアの割に彼自身のアルバムは意外に少なく10数枚位です。またCTIレーベルでは2作品のみになっています。今回紹介するアルバムがそのうちの1枚“GIANT BOX(ジャイアント・ボックス)”です。この作品では、これまでアレンジに関わったミュージシャン達を適材適所に配し、ジャズ、クラシック、ポップスを見事に融合させたもので、素晴らしいフュージョン作となっています。メンバーはドン・セベスキー(arr,cond,keyb)、フレディ・ハバード(tp,flh)、ヒューバート・ロウズ(fl)、 ポール・デスモンド(as)、ジョー・ファレル(ss)、グローヴァー・ワシントン(as,ss)、ミルト・ジャクソン(vib)、 ジョージ・ベンソン(g)、ボブ・ジェームス(keyb)、ロン・カーター(b)、ビリー・コブハム、ジャック・デジョネット(ds)、アイアート(perc)、ジャッキー&ロイ(vo)他と当時のCTI/KUDUレーベル所属のミュージシャンが参加しており、当時のレーベルの勢いを感じさせます。このアルバムは発売当時はアナログ2枚組でしたがCD化にあたり1枚に収められておりその点でも嬉しい限りです。

1.「FIREBIRD/BIRD OF FIRE(火の鳥)」
2.「SONG TO A SEAGULL(カモメの歌)」
3.「FREE AS A BIRD(フリー・アズ・ア・バード)」
4.「PSALM 150(サーム 150)」
5.「VOCALISE(ラフマニノフのヴォカリーズ)」
6.「FLY|CIRCLES(フライ/サークル)」
7.「SEMI - TOUGH(セミ・タフ)」

 1曲目「FIREBIRD/BIRD OF FIRE(火の鳥)」は、ストラビンスキーの組曲「火の鳥(Firebird)」とマハビシュヌオーケストラの「火の鳥(Birds Of Fire)」を見事に合体させたもので14分程の大作となっています。二つの曲を単にメドレーで演奏するのではなく、一つの作品の中に完全に合わせてしまったもので、クラシックとロックが完全に融合してしまっています。曲はフルオーケストラでストラビンスキーの曲からスタート、途中からマハビシュヌの曲へ切り替わって行きます。弦でのテーマのあとヒューバート・ロウズやフレデイ・ハバードが大活躍します。ストラビンスキーの旋律とマハビシュヌの旋律が交互に登場し、フレディのソロの後にマハビシュヌのオリジナルメンバー、ビリー・コブハムのドラムソロを経て、ストラビンスキーのフィナーレのモチーフが登場し、大きく盛り上がった後にマハビシュヌのテーマが登場し演奏を閉じます。この曲だけでもセベスキーの着想の斬新さとアレンジの素晴らしさを感じられます。2曲目「SONG TO A SEAGULL(カモメの歌)」はシンガー・ソングライター、ジョニ・ミッチェルの曲です。ポール・デスモンドのアルトがフューチャーされます。エレピはドン・セベスキー自身で、ドラムはジャック・ディジョネット、ベースはロン・カーターです。ポール・デスモンドが次から次へとメロディーを歌い上げる打情味溢れる曲です。3曲目「FREE AS A BIRD(フリー・アズ・ア・バード)」はセベスキーのオリジナルです。セベスキーの静かなエレピのイントロから一転アップ・テンポになります。ボブ・ジェームズのピアノ・ソロ、フレディ・ハバードのトランペット、グローヴァー・ワシントンのソプラノ・サックス・ソロと続きます。4曲目「PSALM 150(サーム 150)」
はジム・ウェッブの作品です。おしどりデュエット、ジャッキー&ロイがフューチャーされます。賛美歌のようなイントロでスタートします。コーラスではドン・セベスキー自身も参加しています。フレディ・ハバード、ロン・カーター、ボブ・ジェームスのオルガンがソロを取ります。ドラムはビリー・コブハムです。5曲目「VOCALISE(ラフマニノフのヴォカリーズ)」は、CTIではお馴染みのクラシックの曲を取り上げたもので、ロシアの作曲家、ピアニストのラフマニノフの作品です。ポール・デスモンドのサックス、ミルト・ジャクソンのヴァイヴがフューチャーされます。ミルト・ジャクソンのヴァイブに絡むボブ・ジェームスのピアノはMJQを彷彿させます。この曲も打情味溢れる作品です。6曲目「FLY/CIRCLES(フライ/サークル)」はドン・セベスキーの曲のメドレーです。フライでは、ヒューバート・ロウズのエレクトリック・フルートのソロに続くヴォーカルはセベスキー自身です。サークルでは、ジョー・ファレルのソプラノ・サックスとボブ・ジェームズのピアノ、ヒューバート・ロウズのフルートがフューチャーされます。7曲目「SEMI - TOUGH(セミ・タフ)」もセベスキーのオリジナルです。ロック・ビートを導入したアップテンポの曲です。ジョージ・ベンソン、グローヴァー・ワシントン、ボブ・ジェームスのソロがフューチャーされます。それにしてもこれだけのミュージシャンをソロにバックに使い分け、各自のソロを次々と効果的に配置し、細部まで神経を使った隙のないアレンジを行っているドン・セベスキーに脱帽です。