クローサー・トゥ・ザ・ソース:ディジー・ガレスビー | かえるの音楽堂

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042-クローサー・トゥ・ザ・ソース

CLOSER TO THE SOURCE : DIZZY GILLESPIE
(1985年)
 70年から80年代のフュージョン・ブームの時にはジャズ界の大物達もフュージョン作品を製作しました。そういった姿勢にかたくななジャズ・ファンの中には批判をする人も多くいました。しかし考えてみればこれまでもジャズだって新しいことを吸収しながら、すこしづつ変化してきたはずです。ミュージシャン達だって「流行っているからフュージョンでもやってみるか」といった乗りではなく、新しいことに挑戦してみる気持ちで取り組んでみたのではないでしょうか。そして今回紹介するアルバムは、大物中の大物、バップの巨人、ジャズ・トランペットの巨匠ディジー・ガレスビーの初フュージョン作品です。ディジーのフュージョン・タッチの作品としては1977年の「フリー・ライド」というアルバムがありますが、こちらは全曲ラロ・シフリンがアレンジを行っており、どちらかと言えばラロ・シフリン色が強くラロとディジーのコラボ作品に近い物です。よってディジーのフュージョン作品としては、「クローサー・トゥ・ザ・ソース」が初作品と言われています。レコーディング・メンバーはジャケットにもスペシャル・ゲストと記載がある、マーカス・ミラー(b)、スティーヴィー・ワンダー(harm,syn)、ブランフォード・マルサリス(ts)の3人の他にハイラム・ブロック(g)、ソニー・フォーチュン(as)、ケニー・カークランド(key)、トム・バーニー(b)、バディ・ウィリアムス(ds)、ミノ・シネル(per)等が参加しています。このメンバーを見ただけでも絶対に聴いてみたくなります。この作品のプロデュースは川島重行氏で、日本の“エレクトリック・バード”が製作しました。経緯はディジーのマネージャーよりオファーがあったとのことです。ディジー側でメンバーも決めフュージョン作品を製作する計画を立てていたとのことです。詳しくはCDのライナー・ノートに川島氏自身が書かれています。ディジーはこれまでのようにがんがん吹きまくるような吹き方でなく、どちらかと言えば朗々とした感じでチャック・マンジョーネのようなイメージが近いかなと感じました。またヴォーカルをフューチャーした曲も含まれており、曲によってはスムース・ジャズにも通じる作品もありまったく古くささを感じない出来です。

01.COULD IT BE YOU(クッド・イット・ビー・ユー)
02.IT'S TIME FOR LOVE(イッツ・タイム・フォー・ラブ)
03.CLOSER TO THE SOURCE(クローサー・トゥ・ザ・ソース)
04.YOU'RE NO.1 - IN MY BOOK(ユー・アー・ナンバー・ワン)
05.ICED TEA(アイス・ティー)
06.JUST BEFORE DAWN(ジャスト・ビフォー・ドーン)
07.TEXTURES(テクスチャーズ)

 1曲目「COULD IT BE YOU(クッド・イット・ビー・ユー)」マーカスのオリジナルでアレンジもマーカスです。ベースとドラムのイントロからガレスビーとマーカスによるテーマが始まります。フュージョンを演奏してもディジーはディジーです、ややバップ調で吹きます。2曲目はケニー・カークランドがアレンジを担当しています。ディジーが朗々とした感じで情感たっぷりに吹きます。ディジーに続いてブランフォード・マルサリスがテナー・ソロを吹きます。このテナー・ソロも素晴らしい演奏です。3曲目「CLOSER TO THE SOURCE(クローサー・トゥ・ザ・ソース)」はアルバム・タイトル曲で、アレンジはバリー・イーストモンドです。スティーヴィー・ワンダーがハーモニカとシンセで参加しています。ヴォーカルもフューチャーしており今聴いても古くさくありません。ディジーのミュートが効いたソロ、ヴォーカルに続いてスティーヴィーのハーモニカ・ソロと聴き所満載の曲です。スティーヴィーのジャジーなハーモニカ・ソロに拍手。4曲目「YOU'RE NO.1 - IN MY BOOK(ユー・アー・ナンバー・ワン)」はケニー・カークランドがアレンジを担当しています。ディジーがミュートを効かしてテーマを吹きます。ケニーのピアノの旋律も美しいです。5曲目「ICED TEA(アイス・ティー)」はマーカスがアレンジを担当。軽快なリズムをバックにディジーが伸び伸びと吹きます。6曲目「JUST BEFORE DAWN(ジャスト・ビフォー・ドーン)」はケニー・カークランドがアレンジを担当しています。エンジェル・ロジャースのヴォーカルを大きくフューチャーしたポップな曲です。エンジェルのダイナミックなヴォーカルに続いてディジーのスリリングなソロが演奏されます。7曲目「TEXTURES(テクスチャーズ)」はハービー・ハンコックの作品でアレンジはブランフォード・マルサリスです。ディジーの歌心に溢れるトランペット・ソロが素晴らしいです。このアルバム製作時のディジーは68歳位でした。バックのリズムがどう変わろうともディジーはディジーです。こういったサウンドに挑戦しても全く違和感を感じません。この年齢で新しい事に挑戦したことは素晴らしいことです。