ノー・ワン・ホーム:ラロ・シフリン | かえるの音楽堂

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032-No One Home













NO ONE HOME : LALO SCHIFRIN
(1979年)
 ラロ・シフリンは1932年生まれですから、今年83歳になる今も現役で活躍している巨匠です。シフリンはパリ留学後ジャズ・ピアニスト、アレンジャーとして音楽活動を始めました。60年にディジー・ガレスビーのグループに加入し、また一方でクインシー・ジョーンズ、スタン・ゲッツ、サラ・ヴォーン、ジミー・スミスなどの作品に参加しました。所属していたヴァーヴ・レコードが、映画制作会社MGMの子会社であった縁でMGMの映画音楽を作曲することになりました。この頃からハリウッドに住むようになり、“ダーティー・ハリー”、“燃えよドラゴン”、“スパイ大作戦”など数々のヒット作品を手がけました。自身のリーダー・アルバムも60年代から現在にいたるまで数多く制作しています。1976年にはCTIレコードからフュージョンのヒット作「BLACK WIDOW(ブラック・ウィドウ)」を発表しました。この中では、映画音楽“JAWS(ジョーズ)”をディスコ・ビートにのせたフュージョン作品に仕上げたアレンジは見事でした。翌年1977年には同じくCTIより「TOWERING TOCCATA(タワーリング・トッカータ)」を発表しました。ここではバッハのクラシック曲や、映画音楽などを見事なフュージョンにアレンジしました。CTIにはこの2枚の作品を残して78年には“TABUレコード”に移籍し、「GYPSIES(ジプシーズ)」を発表しました。この作品はCTIからの延長線上にある、映画のサウンド・トラック的な展開のジャズ・ファンク調のフュージョン作品でした。そしてTABU第2 弾となる本作品では、当時のフュージョン~ディスコを反映した内容で、“ストリート”をキーワードに全編に女性ヴォーカル&コーラスをフューチャーしたファンキー・メロウなダンス、ディスコ作品となっています。参加メンバーは、ラロ・シフリン、ロニー・フォスター、パトリース・ラッシェン、イアン・アンダーウッド(key)、ワー・ワー・ワトソン(g、voice bag)、ポール・ジャクソン、ジョニー・グラハム、ティム・メイ(g)、バイロン・ミラー、エド・ワトキンス(b)、レオン・ンドゥグ・チャンクラー、アレックス・アカーニャ(ds)、パウリーニョ・ダ・コスタ(perc)、オスカー・ブラッシャー(tp)他と当時ソウル、ジャズ、フュージョン・シーンで活躍した人達が並んでいます。曲はオリジナルは6曲で、CDで発売された際シングル・ヴァージョンと、「GYPSIES(ジプシーズ)」から2曲の4曲がボーナス・トラックで追加されています。

1.NO ONE HOME(ノー・ワン・ホーム)
2.OH DARLIN’...LIFE GOES ON(オー・ダーリン...ライフ・ゴーズ・オン)
3.ENCHANTED FLAME( エンチャンテッド・フレーム)
4.YOU FEEL GOOD(ユー・フィール・グッド)
5.MEMORY OF LOVE(メモリー・オブ・ラヴ)
6.MIDDLE OF THE NIGHT(ミドル・オブ・ザ・ナイト)
以下ボーナス・トラック
7. NO ONE HOME(ノーワン・ホーム)(シングル・ヴァージョン)
8. NO ONE HOME(ノーワン・ホーム)(インスト・ヴァージョン)
9.MOONLIGHT GYPSIES(ムーン・ライト・ジプシーズ)
10.PROPHECY OF LOVE(プロフェシー・オブ・ラブ)

 1曲目「NO ONE HOME(ノー・ワン・ホーム)」はラロ・シフリン作のアルバム・タイトル曲です。ワー・ワー・ワトソンのヴォイス・バッグが印象的なファンク・チューンです。ちょっとクールな女性ヴォーカルもどんどん熱くなっていきます。2曲目「OH DARLIN’...LIFE GOES ON(オー・ダーリン...ライフ・ゴーズ・オン)」はミニー・リパートンのカヴァーです。オリジナルに近いアレンジですが、ここではシンセやギターがメロディを歌います。3曲目「ENCHANTED FLAME( エンチャンテッド・フレーム)」はラロ・シフリン、奥様ドナ・シフリン、チャイニー・ファウラーの共作です。ギターのカッティングがリズムをキープし、それをバックにリード・ヴォーカルが歌います。フルートの使い方はラロ・シフリンらしい感じです。4曲目「YOU FEEL GOOD(ユー・フィール・グッド)」もラロ・シフリンらしいアレンジです。シンセ、フルートのソロをフューチャーし、どんどんリズムが厚くなり女性ヴォーカルが加わります。5曲目「MEMORY OF LOVE(メモリー・オブ・ラヴ)」はラロ・シフリンとマヤ・アンジェロウの曲です。二人の女性ヴォーカルがオーケストラをバックにリードをとるメロウな曲です。途中のピアノ・ソロはラロ・シフリンでしょうか、このピアノも美しい旋律を聴かせてくれます。6曲目「PROPHECY OF LOVE(プロフェシー・オブ・ラブ)」はモニーク&ルイ・アルデベール夫妻の作のメロウな曲です。中間のエモーショナルなサックスや、フルートの使い方はラロ・シフリンらしいです。大幅にヴォーカルをフューチャーしており、CTIでの作品とは感じも違うので初めて聴くと誰の作品か分からないかもしれません。私も当時アナログ・ディスクで購入しましたがあまり聴いていませんでした。CD化を機会にまた購入したのですが今聴くと結構新鮮で楽しめます。ラロ・シフリンの映画音楽や、ジャズ、フュージョン作品に比べて決して劣ることのない記録の一つです。フュージョンの隠れた名盤とも言えるのではないでしょうか。