
たくろう火 [出現地] 広島県
妖怪たくろう火は海上に浮かぶ火の妖怪で、かつては重要な交通路であった瀬戸内海で船乗り達に目撃されたという。
非業の死を遂げた二人の女性が、京女郎、筑紫女郎と呼ばれる二つの石と化し、その霊がたくろう火になったという伝説が残っている。
いわゆる火の玉のような存在だろうか。
以前私は『火の玉とは一体何か』という検証に立ち会ったことがある。
様々な検証の結果、前時代的ではあるが松明に灯した火が最も「それっぽく」見えたように記憶している。
しかし今のご時世、夜に松明を持って歩く人はいないだろうが、それでも火の玉の目撃例がなくならないのは、やはりこの世に未練を残したまま死んでしまった人間の魂が宙をさまようというとこが起こり得るからだろう。
たくろう火が現れたのはかなり昔の話で、現在では地元の古老ですらその存在を知る者は少ないという。
二人の女性の無念は悠久の時に癒され、魂は安らかな眠りについた。
私はそう信じたい。
妖怪たくろう火の伝説は我々が語り継いで行けばよいのだから・・・。
記者 牧田龍彦