すねこすり

[出現地] 岡山県

犬のような姿をした妖怪で、夜道を行く人の足にまとわりついて歩くのを邪魔すると言われている。



古来より日本には、人の足にまとわりつくという悪さをする妖怪が各地に伝わっている。
群馬県のオボ、香川県の足まがり、愛媛県のノツゴなどがそれで、中には新潟県佐渡島のウブのように大きな蜘蛛の姿で人に追いすがり命を奪うという恐ろしい物までいる。

これらの妖怪達は共通に『夜、子供を一人で出歩かせないための抑止力』としての役割を持っていた。

あんまり遅くまで遊んでると○○が出るよ!

子供の頃こんな事を言われた方も多いのではないだろうか。


このすねこすりもそのひとつである。
足にまとわりつく以外これといって攻撃をしてくるわけではないようなので、こちらの被害としては「歩きづらい」だけなわけだが、子供をビビらすという点においては十分な効果を発揮していたのだろう。

何か得体の知れない物と遭遇するかもしれない恐怖というのは、子供にとっては非常に恐ろしいのものなのだ。




かく言う私もそういう類いの脅しにはまんまとビビらされた口である。

そこで今回そんな幼き日を懐かしく思うと同時に、もしかしたらすねこすりに出会えるかもしれないという淡い期待を抱き、私は一人夜道を歩いてみる事にした。




しばらく歩いていると何かが足にまとわりつく感覚が。

歩きづらい!と思った次の瞬間、足元に得体の知れない生物がいる事に気づいた。

恥ずかしながら驚きのあまり手が震え、写真がブレてしまっている。





「すねこすりだ!」

そう直感した私はすかさず手を伸ばし、死闘の末その生物を捕獲する事に成功した。


それがこちらだ。




伝承にある「犬のような姿」とは少々違うようだが、冒頭の絵と見比べてみると非常によく似ている。


これは恐らくすねこすりと考えて間違いないだろう。




この妖怪の生態については現在調査中であるが、どうやら空腹になると食べ物が欲しいのか自分の体を私のスネにこすり当てる仕草をするようだ。
案外この辺りがすねこすりという名前の由来になっているのかもしれない。

伝承とは裏腹に大変愛くるしい姿を見せる妖怪すねこすり。
今後も調査を続けて行きたい。


記者 牧田龍彦