山じじい

[出現地] 高知県、四国地方


一つ目一本足の妖怪で、山父(やまちち)、地域によっては「やまんじい」とも呼ばれる。

身長約90~120㎝、本来目は二つあるのだが片方の目が異常に小さいため一つ目に見えるといった身体的特徴から、その正体は奇形あるいは障害を持って生まれてしまった子供で、村八分を恐れた家の者によって山に隔離された悲しい姿であるという説もある。




しかし私にはこの山じじいは実在する可能性が極めて高い、日本古来のUMA『妖怪』であると思えてならない。
なぜならば身体的特徴に加え、特殊能力についても数多くの言い伝えが残されているからだ。

読心術、出会った者に幸福をもたらす逸話、
噛む力が非常に強いため猟師達が餌で手なずけて狩りに使っていたという記述すらある。

中でも私が驚愕したのは声の大きさである。
その叫び声は凄まじく、天地を震えさせ岩をも動かしたという。
声を聞いた猟師の中には鼓膜が破れ命を落とした者までいたそうだ。

さらに驚くべきことにそんな恐怖の声を持つ山じじい、山で出会うと「大声比べ対決」を挑んでくるというのである。

これは恐ろしい。

私が大声で叫んだ所でせいぜい飼い猫がびっくりするぐらいだが、山じじいの声には殺傷能力があるのだ。




こんな物を買ってみたが些か心許ない。
何か良い手立てはないものだろうか。

その答えは猟師達の間に伝わる伝承の中にあった。

猟師達は大声比べ対決に備え「伊勢八幡大菩薩」と祈りを捧げながら、その名を刻み込んだ銃弾を作り常にそれを携帯していた。
この銃弾は狙わずとも必ず命中するという代物で、これを使うぞと言って脅すと山じじいは恐れをなして逃げてゆく。

というものである。
早速作ってみた。

伊勢八幡大菩薩…
伊勢八幡大菩薩……


弾があるからといって銃を扱えるわけではないし、そもそもおもちゃの銃弾なので少々リスキーなハッタリだが、そこは猟師達の伝承を信じるより他はない。
これでひとまずは安心だろう。



様々な言い伝えや記述により実在する可能性が高いと思われるUMA、妖怪山じじい。
いつか対峙するその日まで、私は耳栓と銃弾を肌身離さず持ち歩こうと思う。



記者 牧田龍彦