その事件以来、僕はまず彼女たちの入力スピードを個々にデータ化した。
それも病状によって影響を受けるので、約3ヶ月ほどのデータをとった。
それをグラフ化し、1時間の入力文字数、半日の入力文字数、1日の入力文字数にと一度に表示できるようにする。
すると時間帯や曜日でその人の疲れやすい時間や、やる気の起きる時間が把握できるようになってきた。
また、長いスパンで見ると季節の変わり目に大きく影響を受ける人もいる。
そのデータにさらに、校正から見た誤打数を加えていく。
自分は正しく入力できたと思っても、実は良く校正すると赤字が出るものだ。
それが個々人でどのくらい出るのかを観察していった。
そうして、ひとりのオペレーターの病状からくる仕事への影響の特性を調べることにより、どの様な仕事なら誰にどの位作業させれば良いかがおのずと分かるようになってきたのである。
入稿した仕事の仕分け段階で、その中のどれをどの位誰に仕分ければ良いかが瞬時にわかり、その結果これまでの処理スピードが格段にアップしたのである。
これまで1週間かかってようやく終わっていた仕事が2日から3日で処理できるようになった。
と、ともにこれはまったく予測できなかったことだが、彼女たちオペレーターのモチベーションが上がってきたのである。
大変な仕事だと思っていたものが、仕分けによって適正に配分されることで、これまでよりずっと楽に仕事がこなせる様になった彼女たちは、仕事をするのが楽しいと思えるようになっていったのだ。
ついに僕たち電算課チームは、営業がとってくる仕事をことごとくやってしまい、もう仕事ないの? という言葉が出てくるまでになっていったのである――。