ずっと観たいと思っていた『関心領域』をやっと鑑賞。
恵比寿ガーデンシネマ2スクリーンの1番後ろ真ん中を陣取ったのですが
あまり入っていない観客のほとんどが後ろの席に密集(笑)。何で!?
でも本編が始まったら周りにいてくれる「普通の人々」が尊かった…。それほど恐ろしく怖い映画でした。
アウシュヴィッツ収容所所長ルドルフ・ヘス一家の日常を描いたこの作品は
初めから終わりまでの殆どのシーンの背景を、収容所の銃声、人々の叫び声、ひっきりなしに走るユダヤ人を乗せた列車、彼らを焼く煙突の煙、灰などの怖めな要素で彩られております。
臆病な私はナチスの大きめな声や銃声、列車の音が聴こえるたびにビクビクして震えてしまいました。
中でも川遊び中の子供たちの方にユダヤ人を燃やした灰や骨が流れてきて
その灰を慌てて洗い流し全身を消毒していたシーンは何だか涙が出てしまった。
もし自分の家族や両親が燃やされて灰になり
その灰をバイ菌のように扱われたらどうだろう…??
このシーンは(も?)ヘス一家に対して嫌悪感でいっぱいになった。
ラストにヘスが2回ほど嘔吐するシーンがあります。
なぜかこのシーンでヘスの人間的な一面を垣間見た気がして救われた気がしました。なぜならこの映画を観て私も彼のように吐きそうになったから。それほど酷かった。
映画を全て観終わった後に気がついたことがありまして。
視覚、聴覚など様々な感覚を研ぎ澄まして鑑賞した映画でしたが
食べ物をみても味覚が全く伝わってこなかったこと。
ヘスの誕生日ケーキや庭に置いてあるオレンジジュース、ヘスの妻の朝食ドイツパン、近所の少女が収容所付近に置くリンゴ。
『ティファニーで朝食を』では、オードリーがティファニーの前でパクっと加えるクロワッサンの香りや味が口の中に広がるのに。
この映画では味も食感も全く伝わってこなかった。
味覚というのはもしかしたら「心の平穏」とセットなのかもしれないと思ったりしました。
少し言葉が悪いですが大変胸糞悪い映画で、もう2度と観たくないと思いました。