みすぼらしいなりの男が酒場にやってきて

飲み物を頼んだ。

バーテンダーがいった。

「だめだよ。払え ないんだろう?」

男が言った。

「そのとおり。おれは文無しだ。

だけど、あんたがこれまで見たことも無い物を見せたら、

一 杯飲ませてくれるかい?」

バーテンダーは、

「あんたの見せるものがきわどいものじゃなければね」

と答えた。

「ようし!」

男はコートの ポケットに手を入れると、

ハムスターを取り出した。

男がハムスターをカウンターの上に置くと、

ハムスターは端まで走っていって、

ストゥールを伝って、部屋 を横切り、

ピアノに登って、キーボードに飛び乗って、

ガーシュインの曲を弾き始めた。

おまけに、とても上手に。

バーテンダーは言った。

「あんたの言う通りだ。こんなのは見たことがない。

あのハムスター。本当にピア ノが上手だな。」

男は飲み物を飲み干すと、もう一杯ほしいと言った。

「金を払うか、不思議なものをもう一つ出さない と、だめだね」

バーテンダーが言った。

男はまたポケットに手を入れると、カエルを取り出した。

カエルをカウンターに置くと、カエルは歌い始め た。

すばらしい声で、音程も正確で、立派な歌い手だった。

酒場の向こう端にいた見知らぬ男が男に駆け寄って、

カエルの代金として300ドル払うと申し出た。

男は「承知した」と言った。

300ドルを受け取って、カエルを渡すと、

相手は酒場から大急ぎで出ていった。

バーテンダーは男に言った。

「あんた、頭がおかしいんじゃないのか?

歌うカエルを300ドルで売るなん て!

何百万ドルもの値打ちがあるかもしれないのに。ばかだよ、あんた。」

「いいや」と、男が言った。



「俺のハムスターは腹話術もできるのさ。」




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