墓地の前を通りかかった初老の紳士
ふと見ると,若い男がある墓にすがりついて,
「なぜ死んでしまったんだ
…なぜ死んでしまったんだ!」
と嘆き悲しんでいるのが見えた。
紳士は,そっと嘆いている男に近寄った。
「失礼ですが,これほどまでの深い悲しみと苦しみを,
私は未だかって見たことがありません。
私も共に心からお悼みいたします・・・」
うずくまる男の肩に手をかけて,
紳士はやさしく尋ねた。
「この墓に入っている方は本当に大事な方だったのですね。
奥様でしようか?お子さんでしょうか?」
男は,泣きじゃくりながら答えた。
「入っているのは妻の前夫です・・・
なぜ死んでしまったんだ
…なぜ死んでしまったんだ!!」