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浜辺に打ち上げられた古いランプ。

その男は,何の気なしにそのランプを袖でこすった。

もちろん,ランプから煙と共に現れ出でたのは,ランプの精。

ランプの精は助けてもらったお礼に

何でも一つだけ願い事を叶えてくれると言った。

しばらく考えていた男は,やがてこう言った。

「前々からずっとハワイに行きたいと思ってたんだ。
でも,僕は飛行機恐怖症でね。
だからハワイまでつながる橋を出してくれないか。
車で行けるように」

「だめ!だめ!」ランプの精は大声をあげた。
「いいか。ここからハワイまで何千キロあると思っているんだ。
必要な鉄骨やコンクリートの量を考えてみろ。
それに,太平洋の底に届く橋脚の強度の設計が…
いや,とても無理だ!別の願いにしろっ!!」

男はまたしばらく考えていたが,ついにこう言った。

「妻ともう二十年も連れ添っているが,
どうしても気持ちのすれ違いがあって口喧嘩をしてしまうんだ。
きっと,ボクが女性の気持ちが分からないせいだと思うんだ。
だから,女性はどう感じるのか,何を思っているのか,
なぜ泣くのか,何を望んでいるのか,
どうすれば幸せにしてあげられるのか・・・」

「待った!」ランプの精は鋭く男の言葉を遮った。


「さっきの橋の話だが,四車線と二車線どっちがいい?」




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