ドライブインの駐車場で,ロールスロイスの持ち主の紳士が一服していると,
となりにキャデラックが滑り込んできた。
キャデラックのウィンドウが開いた。
「やあ」キャデラックの中の男が言った。
「そのロールスロイス,あんたのかい?」
「まあね」紳士は自慢げに答えた。
「ロールスロイスって,テレビはついているのかい?」とキャデラック。
「もちろんあるさ」
「じゃ,冷蔵庫はどうだい?」
「あるとも」紳士は言った。
「ロールスロイスは,世界一贅沢な車だからね」
「ふーん」キャデラックの男が言った。「じゃ,当然ベッドもあるだろ?」
「い、いや…」紳士は口ごもった。「それは・・・」
「ははは」キャデラックの男はニヤリと笑うと走り去った。
「世界一贅沢な車は,やっぱりキャデラックのようだな」
ロールスロイスの紳士は,すぐさまディーラーに乗り込んだ。
「すぐ,ベッドをつけてくれ。一番贅沢なやつだ」
次の日。ロールスロイスの紳士は,キャデラックを探して一日中,町を走り回った。
日も暮れた頃,ようやく見つかったのは,町はずれのキャンプ場の駐車場だった。
キャデラックの窓は曇っていて,中は全然見えない。
紳士は,キャデラックの窓をたたいた。
しばらくして,例の男が顔を出した。なぜか髪の毛がぐっしょり濡れている。
さっそく紳士は宣言した。「ロールスロイスにもベッドはあるぞ」
「あー。少し待ってくれないか」キャデラックの男は答えた。
「今,風呂に入っていてね」