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重々夢




私はいつものようにベットで眠っていた。 うつら、うつら…眠りへと入っていく

…夢か現(うつつ)かの境目、突然身体に緊張が走る。

金縛り!?…  まだ寝呆けた頭で考える。

私にとって金縛りは比較的、日常の事... それほどの焦りも無い。

金縛りといっても、体が動かなくなるだけで、特に霊的なものが見えるわけでもない。

きっと身体的な疲れから来るものだろう… だから今夜も、
いつものようにこの状態のまま寝てしまおう……

トン トン トン トン !

誰かが階段を上ってくる音がする!? 一人暮らしの私の部屋は2階なのだけれど玄関は1階、
そこから2階へ続く階段がある。 その階段を誰かが上がる音が聞こえた。

トン トン トン

…また!?

鍵はオートロック。身体は依然として動かない。
どうしよう!? 足音は近づく。

…トン トン トン

階段を上り終えたのだろうか。 階段から部屋までは3メートル程の廊下が続く。
近い!?何とか身体が動かないかと全身に力を入れてみる
わずかに手が動いた!ベットの脇にあるスイッチを暗闇の中を探る。

ダダダダダッ! 駆け出した!?

パチッ……

電気を付けた瞬間、目も覚めた。 今のは夢か?
魘されて(うなされて)たのか汗がひどい。 やけにリアルな夢だったなと思った。
消したはずの部屋の電気は付いている、 眠りながら付けてしまったらしい。
まだ朝まで時間がある。眠ろう… 再び眠りに入ろうとした瞬間…
また金縛りにあった。 さっきの夢と一緒だ。 少しばかりの緊張が走る。

トン トン トン トン トン トン

その音に寒気を覚える。 音の主は階段を上り終える。
もちろん私以外の誰かがいるはずはない。

ダダダッ!

私の部屋までの3メートルを駆けてくる音がする。
今度、さっきの夢のように覚めることが無い、
現実!? 身体も動かない。 どうする??

ドンドンドン!!!!

部屋の扉を叩く音がした!と、金縛りが解ける。
同時に目が覚めた。 今のも夢だ…… 夢の中で夢を見ていたのか!?
ふと横に目をやると 誰かが私の隣に横たわっている!!

奈々??

そうだ。今夜は友人の奈々が泊りに来ていたんだ。
一人じゃないことに安心してしまった。
たかが夢に何をそんなに怯えているんだろう私は。
再び、眠りにつこうとした。 …奈々がくっついてくる。
寝呆けてるのかなと思いながら、頭をなでてみる。
奈々の頭の温かさが私に心地の良い眠気を誘う
その瞬間、体が動かなくなる。

また!?

トン トン トン トン 階段を上る音がする
ダダダッ! 廊下を駆けてくる音がする。
ドンドンドン!!!!

部屋の扉を叩く音がする。 何??  もうダメだ…
恐怖が体中を支配する。 金縛りは解けない。 …でも夢と違う事実が一つ。
大丈夫!奈々が隣に寝ている。

奈々がいない!? 奈々がいるはずがない。
奈々は初めから泊りになんか来ていないとこの時、唐突に気付く。
何故?? 奈々が泊りに来ていると思ったんだろうか。
じゃあ 今、確実に私の左手に感じる温もりは何なんだろう。

ガチャッ!!!

音の主が部屋に侵入した瞬間、金縛りが解けた。
と、同時に目が覚めた。 恐ろしい夢を見てしまった。
その時、冷え性の私の左手だけ温かかった。
消して寝たはずの電気が付いていた。
これが何を意味しているのか私には分からない。

翌日、私は大学で奈々にその話をした。
「良かったねぇ。目が覚めて。」
「そうだね。起きれなかったかもしれないね。」
…箱のなかに箱があって、その箱の中に箱があるというように、
夢の中の夢の中の夢に私がいたのだとしたら。
一つ一つの夢を順序立てて覚ましていかなければ、
私は一生、現実に辿り着く事無く夢から出られなかったのかもしれない。
奈々がくったくの無い笑顔で…言った

「実はこれも夢なんだよ」








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