《コンビニ》
僕は霊感なんてこれっぽっちもないし
霊なんて全然信じてなかった…
でも今は信じている、あの事件が起てからは…
僕は2年ほど前コンビニでバイトしていた。 そのコンビニは23時に閉店という店。
(客が少ないからというより、近隣住民の苦情が多かったため！？)
その日は僕と後輩の佐藤、二人でバイトに入っていた、
時刻は22時45分。
「おい、佐藤、そろそろ閉めるか？」
「そうですね、ジャンプ読みたいんで早く閉めましょ～」
閉店は23時だが実際タイムカードを押すのは23時30分という取り決めがあって、
いつも僕達は早く閉店準備し、漫画を読んで時間をつぶすのが習慣になっていた。
その日も売上の確認、自販機の精算、洗いものを急いで終わらせた。
時刻は23時ちょうど。
入り口の鍵を閉め、電気を落とし、僕達は裏でマンガを読み始めた。
…その時、
ピンポーン、ピンポーン・・・
チャイムが鳴った。(コンビニの入り口に入る時に鳴るアレです)
「ん？誰か来たかな、佐藤ちょっと見てきて」
「了解です♪」
僕は佐藤に見にいかせ、監視モニターを入り口に設定した。
(監視モニターは店内に複数ある監視カメラの映像をテレビに映すもので、
普段は3秒間隔ほどで映像が切り替わっていきます。
この時は入り口のカメラだけを映すよう設定したわけです。)
監視モニターを見ると、女の人が立っていた。
髪が長く白っぽいワンピースを着ていたのは分かったが
顔までは確認できなかった…
様子を見にいった佐藤がモニターに写った。
佐藤は入り口の外を軽く見渡した後こっちに戻ってきた。
「女の人がいただろう！？ 佐藤、ああいう時は鍵開けて対応しなきゃダメだろう？」
このコンビニはまさか23時に閉まるとは思っていない客が
閉店後も時折やってくる。
僕達はそのたびにお詫びを言って帰ってもらっていた。
なのに様子を見ただけで帰ってきた佐藤に一応先輩として注意した訳で…
「え～？俺、外見たけど誰もいませんでしたよ？」
「いやいや(笑)女の人いただろう？ 俺、モニターで見てたから！」
「ホントですよ～！ 俺ちゃんと見ましたよ～」
(ドアの外正面に立ってたのに見えなかったはないだろう！このアホが！！)
その時は、まぁこの佐藤はお調子者な奴でミスを指摘しても
シラを切り通すタイプだから、 対応するのが面倒くさかったのだろうと思っていた。
「・・・そうか、ま、いいや」
監視モニターの設定を順送りに戻し、僕達は再びマンガを読み出した。
…10分が経過
僕はチラッと腕時計に目をやった、
時刻は23時15分。
(あと15分か、読みきれるかな？)
そんな事を思いながらふとモニターに目を向けた、
モニターにはお酒コーナーが映し出されている。
パッと画面が切り替わり週刊誌コーナーが映しだされた。
…その時
週刊誌コーナー正面のガラスの向こう、店の外にさっきの女が立っている！？
女はこっち(監視カメラを)見ているようだった。
(監視カメラというより、監視カメラ越しに僕を見ているような感覚がして気味が悪かった。)
次の瞬間弁当コーナーに画面が切り替わった。
「おい・・・外にさっきの女いたぞ」
「え～、だからそんなのいませんでしたって」
「・・・んじゃ俺が見てくるわ」
この時点ではひやかしか、ちょっと変な人ぐらいにしか思っていなかった。
立ち上がろうとした瞬間、
「先輩・・・待って！！ちょ、ちょっと、モニター！！」
「モニター？？」
モニターに目をやるとお菓子コーナーが映し出されていた・・・が、
そこにさっき店の外にいた女が立っていた・・・今度はカメラに背を向けている。
「えっ？・・・え？・・・？？」
佐藤はパニックだった。無理もない、鍵は確実に閉めてあったはず、
鍵を抉じ開ける音もしていなかった。
というよりさっき店の外で確認して、まだ20秒もたってない、
「お、落ち着け・・・」
僕はそのお菓子コーナーにモニターを固定した。
女は相変わらす動かない。
その時、
ルッルルルルル、ルッルルルル
電話が鳴った。僕と佐藤はビクっ！！電話に目を向けた。
電話は2コールほどで鳴り止んだ。
ハっと気付いてモニターに目を向けた・・・女がいない！？
「ち、ちょっと・・・先輩・・・お、お、女は・・・？？」
僕はあわててモニターの切り替えボタンを押した。
ピ、週刊誌コーナー異常なし
ピ、お菓子コーナー異常なし
ピ、お酒コーナー異常なし
ピ、カウンター異常あり
いるっ！！
カウンターの中に！こちらに背を向けて立っている。
「先輩・・・ち、ち近づいてきてるんじゃ・・・」
正直僕も心の中では佐藤より大パニックだった。
女は相変わらず背を向けて立っている。
「・・ど、どうする？」
「ど、どうするって先輩・・・どうにかしてくださいよぉ・・・」
「・・・逆のドアからダッシュで逃げるかっ！？」
今、僕達がいる裏に入るにはカウンターからと、
カウンターの向かいに位置する奥のドアから、二つの入り口がある。
しかし、逆のドアから出ても、店内を通って入り口の鍵を開けて外へ出なければならない。
その時に女と出くわすことになる、それは危険すぎる・・・
などと考えをめぐらせていた
その時、
「ぎゃぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあああ！！」
佐藤が叫んだ。 「どうしたっ？？」
モニターを見ると体は背を向けているのに顔だけ180度回転してカメラを見ている！！
…ニッと口は笑っている・・・
僕は声にならなかったが、正直ちびるかと思った。
女は相変わらず不自然な格好でこちらを見ている。
「あかん・・・あかんあかんあかんあかんあかんてぇぇぇぇ！！」
佐藤は半狂乱になりながらモニターの電源を落とした。
「し、しばきましょ！！あ、あいつ、あかんあかんあかんしばいて逃げましょ！！」
佐藤は大パニック。
「お、落ち着けって！！・・・裏から思いっきりダッシュするぞ！」
正直この時は、カギを開けるまでに女と絶対会うことになるし、
なんとなく僕らは死ぬんだと思ってた。
幽霊なんて架空のものだと思ってた、それが今すぐそこにいる。
僕はカギを手にとった、その時・・・モニターの電源が勝手についた、
映し出されたのは・・・
女の顔のアップ。
顔は全く笑ってない、これ以上ないってぐらい無表情、それが余計に怖かった。
肌は白っぽい、死んだ人って感じの顔色、でも目だけマジ綺麗、吸い込まれそうだった。
あ、目が動いた、僕を見た・・・あ、佐藤の方も見た・・・
どうやって天井近くにあるカメラに顔だけ映ってんだろう？
なんてことを一瞬のうちに考えていた、走馬灯みたいなものか？
あまりの恐怖と驚きの中になぜか冷静な部分があった。
あ、そうだ、佐藤は・・・
「・・・む・・・むりむりむりむりむりむりむりむり！！殺されるぅぅぅぅ！！」
佐藤は錯乱しながら裏のドアに走りだした。
「ちょ、ちょっと、、、待て！！」
佐藤は裏のドアに猛ダッシュし、ドアノブに手をかけ・・・
「・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁぁああああ！！！」
佐藤は絶叫し、その場に倒れこんだ。
「お・・・おい！！佐藤！！」
僕は意識を失っている佐藤のもとに駆け寄った。
頭を抱えて起こそうとするが佐藤に返事はない・・・気を失っている！？
ふと、僕はドアを見た。
「・・・う、うわぁぁ！！」
佐藤が見たものが分かった・・・。
ドアの窓から女が・・・こちらを見ている。
それもケタケタケタケタと笑みを浮かべながら。
僕は恐怖と共に、「なんで僕がこんな目に合わなくちゃいけないんだ」
と怒りがこみ上げてきた。
「・・・な、なんなんだ・・なんだよお前！！何がしたいだよ！！どっか行ってくれ！！」
僕はありったけの勇気を振り絞って叫んだ。
すると、ケタケタ笑っていた女の笑みが止んだ。
そして・・・一瞬睨むような恐ろしい目つきになり、スーっと窓から立ち去った。
「はぁっ・・・はぁ・・・どっか行った・・・」
と安心・・・したのもつかの間。
店内から激しい物音が聞こえてきた、棚が倒れる音だ。
バタン！！バターン！！・・・ガチャーン！！
怒らせてしまったのか？？
僕は佐藤の傍に座り込んでガタガタと震えていた。
精神的にどうにかなりそうだった。
－ドスン！！バリッ！！メキ・・・バタン！！・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
どれくらいの時間だったろう？？たぶん１分ほど激しくなり続けていた音が突然止んだ。
気がすんだのか・・・
僕は立ち上がろうとした。
その時、
－プルルルルル、プルルルルルル
電話が鳴り出した。
－プルルルルル、プルルルルルル
鳴り止まない、僕はとるのを躊躇った。
さっき電話がかかってきた時も、
モニターから僕達の気を引くような不自然なコールだった
そして、静かになったと思ったらこれだ、タイミングがよすぎる。
しかし、もうどうにでもなれ、そんな気持ちで僕は電話をとった。
「・・・もしもし」
「・・・・・・・・・・・・」
「もしもし！！」
「・・・・・・・・・・・・」
僕は確信した。
「は、早く・・・早くここから消えろ！！」
「・・・・・あ・・・あ・・・・・あああ」
（しゃべった？！）
「あ・・あ・・・ひ・ひ・・ヒィィヒヒヒヒヒィィィィィ」
（や、やばいやばいやばい・・・・・）
その瞬間、僕の頭の全思考がストップした。
声が・・・こ、声が・・・受話器からだけじゃない！？
すぐ・・・ぼ、僕の・・・後ろから？？
ゆっくりと振り向く。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁあ！！」
そこには・・・気味の悪い笑い声を発しながらも、
この世のものとは思えない形相で睨む女の顔があった。
…僕は気をう・し・な・っ・た・・・
…ぉぃ、ぉぃ・・・おい！！起きろ！！」
「先輩！！起きてください！！」
誰かに呼ばれている、僕はゆっくりと起き上がった。
そこにいたのは佐藤と店長だった。
時刻は4時50分、6時に店を開くため店長が出勤してきたのだろう。
それにしても何て長い間気を失っていたのかと自分でも思う。
「何があった！！何で店の中があんなことになってる！？」
店長は驚きと怒りでいっぱいといった様子だ。
「佐藤、お前店長に何があったか言ってないのか？」
「はい・・・まだ信じられなくて・・・先輩から言ってくださいよ。」
さすがの佐藤も気が滅入ってるようだ。
「実は・・・」
僕は店長に一部始終を伝えた。
「そん馬鹿なことが・・・そうだ！！監視カメラ見れば・・・！！」
「や、やめときましょ！！」
佐藤が叫ぶ。そりゃそうだ、もうあんな顔は見たくない。
そういうわけで、僕は23時から見てくださいとだけ伝え、
佐藤と共に店の外で頭を冷やして待つことにした。
－20分後
「佐藤！！○○(僕)！！入ってこい！！」
店長が言った。
「お前らが言ってた女は映ってなかった。…ただ、棚はひとりでに倒れていった…
どうやら嘘じゃないみたいやな・・・」
「女は映ってなかったんですか・・・？」
「あぁ・・・でも、俺もこういうことを全く信じないほど頭が固いわけでもない。
実際勝手に棚も倒れてる、お前らの言うことを信じないわけにもいかない。」
どうやら店長も信じてくれたようだ。
「お前らはもう帰れ、とりあえず皆(アルバイト)に電話して
片付け手伝ってもらえる奴いないか聞いてみる。
あっ、このことは皆には言うな。ビデオも俺が処分する、
大丈夫、みんなには適当にごましとくさ。」
「わかりました・・・佐藤帰ろうか」
「はい・・・そうですね・・・」
「おう、気をつけてな！！もう忘れろよ！！」
僕達は外に出た、5時過ぎだが冬だったためまだ空は暗かった。
「佐藤、送るわ、乗ってけよ」
佐藤は徒歩で10分ぐらいかけて通っているが、さすがに心細いだろうと
思って佐藤を車に乗せた。
・・・うん、もちろん僕が怖かったのもあるけどね。
(まぁ、いつまでもくよくよしてても意味がない。きっぱり忘れるのが正解だ！！)
僕は力強く自分に言いきかせ、車に乗り込んだ。
「よっしゃ！！帰るか！！さ・・と・・・・」
佐藤が口を大きく開き、目を見開いて店の中を見ている。
「あ・・・あ・・・」
「佐藤！？・・・ま・・・まさ・・か」
僕はゆっくりと振り返り店内を見た。
店長が掃除を始めている・・・その後ろにいたのは・・・
僕はものすごい速さでエンジンを掛け車を出した。
佐藤は終始無言だった。
佐藤を送り、帰宅した僕はベッドに倒れこんだ。
「○○！！いつまで寝てるの！？お昼過ぎてるよ、授業あるんじゃないの！？」
母の声が聞こえてきた、時刻は13時前、ずいぶん寝てたようだ。
あ・・・そうだ、僕にはしなければならないことがあった
店長に電話して無事を確かめること、後・・・バイトを辞めると伝えること。
さすがにもう続けることはできない。
電話をかけた。
「もしもし、○○です。」
「おぉ、どうだ、寝て少しはスッキリしたか？」
「えぇ・・・まぁ・・・それよりあれから何も起こらなかったですか？」
「何か？？・・・あぁ・・・大丈夫、何もなかったぞ。」
僕は店長の声に何か違和感を感じた・・・が、あえて触れようとはしなかった。
「それで店長・・・バイトなんですが、辞めさせていただきたいんです。」
「なんだ、お前もか・・・佐藤もついさっき電話があったよ、辞めるってな…」
どうやら佐藤も考えてることは同じだったようだ。
僕はバイトリーダーだったため、一度店に来てほしい、話がしたいと言われたが断った。
もうあの店には行きたくない。
僕はそれっきり店に行くことはなかった…
その後、僕たちが辞めて一ヶ月がたったころ、店は潰れた。
バイトに聞いてみると営業不振が原因だったらしい。
やはり気になったので店長に連絡をとった。
バイトの人には営業不振と伝えてあるが、実際は違うようだった。
理由を聞いても店長は言いたがらない・・・
僕はおそらくあの女が原因だろうと思っている。
そのコンビニは今も残っている、土地は店長のものだから建物はそのまま…
時が経った今も、車でその店の前を通ることがある
僕は絶対店の方は見ないようにしている。
……たとえどれだけ視線を感じても…
僕は霊感なんてこれっぽっちもないし
霊なんて全然信じてなかった…
でも今は信じている、あの事件が起てからは…
僕は2年ほど前コンビニでバイトしていた。 そのコンビニは23時に閉店という店。
(客が少ないからというより、近隣住民の苦情が多かったため！？)
その日は僕と後輩の佐藤、二人でバイトに入っていた、
時刻は22時45分。
「おい、佐藤、そろそろ閉めるか？」
「そうですね、ジャンプ読みたいんで早く閉めましょ～」
閉店は23時だが実際タイムカードを押すのは23時30分という取り決めがあって、
いつも僕達は早く閉店準備し、漫画を読んで時間をつぶすのが習慣になっていた。
その日も売上の確認、自販機の精算、洗いものを急いで終わらせた。
時刻は23時ちょうど。
入り口の鍵を閉め、電気を落とし、僕達は裏でマンガを読み始めた。
…その時、
ピンポーン、ピンポーン・・・
チャイムが鳴った。(コンビニの入り口に入る時に鳴るアレです)
「ん？誰か来たかな、佐藤ちょっと見てきて」
「了解です♪」
僕は佐藤に見にいかせ、監視モニターを入り口に設定した。
(監視モニターは店内に複数ある監視カメラの映像をテレビに映すもので、
普段は3秒間隔ほどで映像が切り替わっていきます。
この時は入り口のカメラだけを映すよう設定したわけです。)
監視モニターを見ると、女の人が立っていた。
髪が長く白っぽいワンピースを着ていたのは分かったが
顔までは確認できなかった…
様子を見にいった佐藤がモニターに写った。
佐藤は入り口の外を軽く見渡した後こっちに戻ってきた。
「女の人がいただろう！？ 佐藤、ああいう時は鍵開けて対応しなきゃダメだろう？」
このコンビニはまさか23時に閉まるとは思っていない客が
閉店後も時折やってくる。
僕達はそのたびにお詫びを言って帰ってもらっていた。
なのに様子を見ただけで帰ってきた佐藤に一応先輩として注意した訳で…
「え～？俺、外見たけど誰もいませんでしたよ？」
「いやいや(笑)女の人いただろう？ 俺、モニターで見てたから！」
「ホントですよ～！ 俺ちゃんと見ましたよ～」
(ドアの外正面に立ってたのに見えなかったはないだろう！このアホが！！)
その時は、まぁこの佐藤はお調子者な奴でミスを指摘しても
シラを切り通すタイプだから、 対応するのが面倒くさかったのだろうと思っていた。
「・・・そうか、ま、いいや」
監視モニターの設定を順送りに戻し、僕達は再びマンガを読み出した。
…10分が経過
僕はチラッと腕時計に目をやった、
時刻は23時15分。
(あと15分か、読みきれるかな？)
そんな事を思いながらふとモニターに目を向けた、
モニターにはお酒コーナーが映し出されている。
パッと画面が切り替わり週刊誌コーナーが映しだされた。
…その時
週刊誌コーナー正面のガラスの向こう、店の外にさっきの女が立っている！？
女はこっち(監視カメラを)見ているようだった。
(監視カメラというより、監視カメラ越しに僕を見ているような感覚がして気味が悪かった。)
次の瞬間弁当コーナーに画面が切り替わった。
「おい・・・外にさっきの女いたぞ」
「え～、だからそんなのいませんでしたって」
「・・・んじゃ俺が見てくるわ」
この時点ではひやかしか、ちょっと変な人ぐらいにしか思っていなかった。
立ち上がろうとした瞬間、
「先輩・・・待って！！ちょ、ちょっと、モニター！！」
「モニター？？」
モニターに目をやるとお菓子コーナーが映し出されていた・・・が、
そこにさっき店の外にいた女が立っていた・・・今度はカメラに背を向けている。
「えっ？・・・え？・・・？？」
佐藤はパニックだった。無理もない、鍵は確実に閉めてあったはず、
鍵を抉じ開ける音もしていなかった。
というよりさっき店の外で確認して、まだ20秒もたってない、
「お、落ち着け・・・」
僕はそのお菓子コーナーにモニターを固定した。
女は相変わらす動かない。
その時、
ルッルルルルル、ルッルルルル
電話が鳴った。僕と佐藤はビクっ！！電話に目を向けた。
電話は2コールほどで鳴り止んだ。
ハっと気付いてモニターに目を向けた・・・女がいない！？
「ち、ちょっと・・・先輩・・・お、お、女は・・・？？」
僕はあわててモニターの切り替えボタンを押した。
ピ、週刊誌コーナー異常なし
ピ、お菓子コーナー異常なし
ピ、お酒コーナー異常なし
ピ、カウンター異常あり
いるっ！！
カウンターの中に！こちらに背を向けて立っている。
「先輩・・・ち、ち近づいてきてるんじゃ・・・」
正直僕も心の中では佐藤より大パニックだった。
女は相変わらず背を向けて立っている。
「・・ど、どうする？」
「ど、どうするって先輩・・・どうにかしてくださいよぉ・・・」
「・・・逆のドアからダッシュで逃げるかっ！？」
今、僕達がいる裏に入るにはカウンターからと、
カウンターの向かいに位置する奥のドアから、二つの入り口がある。
しかし、逆のドアから出ても、店内を通って入り口の鍵を開けて外へ出なければならない。
その時に女と出くわすことになる、それは危険すぎる・・・
などと考えをめぐらせていた
その時、
「ぎゃぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあああ！！」
佐藤が叫んだ。 「どうしたっ？？」
モニターを見ると体は背を向けているのに顔だけ180度回転してカメラを見ている！！
…ニッと口は笑っている・・・
僕は声にならなかったが、正直ちびるかと思った。
女は相変わらず不自然な格好でこちらを見ている。
「あかん・・・あかんあかんあかんあかんあかんてぇぇぇぇ！！」
佐藤は半狂乱になりながらモニターの電源を落とした。
「し、しばきましょ！！あ、あいつ、あかんあかんあかんしばいて逃げましょ！！」
佐藤は大パニック。
「お、落ち着けって！！・・・裏から思いっきりダッシュするぞ！」
正直この時は、カギを開けるまでに女と絶対会うことになるし、
なんとなく僕らは死ぬんだと思ってた。
幽霊なんて架空のものだと思ってた、それが今すぐそこにいる。
僕はカギを手にとった、その時・・・モニターの電源が勝手についた、
映し出されたのは・・・
女の顔のアップ。
顔は全く笑ってない、これ以上ないってぐらい無表情、それが余計に怖かった。
肌は白っぽい、死んだ人って感じの顔色、でも目だけマジ綺麗、吸い込まれそうだった。
あ、目が動いた、僕を見た・・・あ、佐藤の方も見た・・・
どうやって天井近くにあるカメラに顔だけ映ってんだろう？
なんてことを一瞬のうちに考えていた、走馬灯みたいなものか？
あまりの恐怖と驚きの中になぜか冷静な部分があった。
あ、そうだ、佐藤は・・・
「・・・む・・・むりむりむりむりむりむりむりむり！！殺されるぅぅぅぅ！！」
佐藤は錯乱しながら裏のドアに走りだした。
「ちょ、ちょっと、、、待て！！」
佐藤は裏のドアに猛ダッシュし、ドアノブに手をかけ・・・
「・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁあぁぁああああ！！！」
佐藤は絶叫し、その場に倒れこんだ。
「お・・・おい！！佐藤！！」
僕は意識を失っている佐藤のもとに駆け寄った。
頭を抱えて起こそうとするが佐藤に返事はない・・・気を失っている！？
ふと、僕はドアを見た。
「・・・う、うわぁぁ！！」
佐藤が見たものが分かった・・・。
ドアの窓から女が・・・こちらを見ている。
それもケタケタケタケタと笑みを浮かべながら。
僕は恐怖と共に、「なんで僕がこんな目に合わなくちゃいけないんだ」
と怒りがこみ上げてきた。
「・・・な、なんなんだ・・なんだよお前！！何がしたいだよ！！どっか行ってくれ！！」
僕はありったけの勇気を振り絞って叫んだ。
すると、ケタケタ笑っていた女の笑みが止んだ。
そして・・・一瞬睨むような恐ろしい目つきになり、スーっと窓から立ち去った。
「はぁっ・・・はぁ・・・どっか行った・・・」
と安心・・・したのもつかの間。
店内から激しい物音が聞こえてきた、棚が倒れる音だ。
バタン！！バターン！！・・・ガチャーン！！
怒らせてしまったのか？？
僕は佐藤の傍に座り込んでガタガタと震えていた。
精神的にどうにかなりそうだった。
－ドスン！！バリッ！！メキ・・・バタン！！・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
どれくらいの時間だったろう？？たぶん１分ほど激しくなり続けていた音が突然止んだ。
気がすんだのか・・・
僕は立ち上がろうとした。
その時、
－プルルルルル、プルルルルルル
電話が鳴り出した。
－プルルルルル、プルルルルルル
鳴り止まない、僕はとるのを躊躇った。
さっき電話がかかってきた時も、
モニターから僕達の気を引くような不自然なコールだった
そして、静かになったと思ったらこれだ、タイミングがよすぎる。
しかし、もうどうにでもなれ、そんな気持ちで僕は電話をとった。
「・・・もしもし」
「・・・・・・・・・・・・」
「もしもし！！」
「・・・・・・・・・・・・」
僕は確信した。
「は、早く・・・早くここから消えろ！！」
「・・・・・あ・・・あ・・・・・あああ」
（しゃべった？！）
「あ・・あ・・・ひ・ひ・・ヒィィヒヒヒヒヒィィィィィ」
（や、やばいやばいやばい・・・・・）
その瞬間、僕の頭の全思考がストップした。
声が・・・こ、声が・・・受話器からだけじゃない！？
すぐ・・・ぼ、僕の・・・後ろから？？
ゆっくりと振り向く。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁあ！！」
そこには・・・気味の悪い笑い声を発しながらも、
この世のものとは思えない形相で睨む女の顔があった。
…僕は気をう・し・な・っ・た・・・
…ぉぃ、ぉぃ・・・おい！！起きろ！！」
「先輩！！起きてください！！」
誰かに呼ばれている、僕はゆっくりと起き上がった。
そこにいたのは佐藤と店長だった。
時刻は4時50分、6時に店を開くため店長が出勤してきたのだろう。
それにしても何て長い間気を失っていたのかと自分でも思う。
「何があった！！何で店の中があんなことになってる！？」
店長は驚きと怒りでいっぱいといった様子だ。
「佐藤、お前店長に何があったか言ってないのか？」
「はい・・・まだ信じられなくて・・・先輩から言ってくださいよ。」
さすがの佐藤も気が滅入ってるようだ。
「実は・・・」
僕は店長に一部始終を伝えた。
「そん馬鹿なことが・・・そうだ！！監視カメラ見れば・・・！！」
「や、やめときましょ！！」
佐藤が叫ぶ。そりゃそうだ、もうあんな顔は見たくない。
そういうわけで、僕は23時から見てくださいとだけ伝え、
佐藤と共に店の外で頭を冷やして待つことにした。
－20分後
「佐藤！！○○(僕)！！入ってこい！！」
店長が言った。
「お前らが言ってた女は映ってなかった。…ただ、棚はひとりでに倒れていった…
どうやら嘘じゃないみたいやな・・・」
「女は映ってなかったんですか・・・？」
「あぁ・・・でも、俺もこういうことを全く信じないほど頭が固いわけでもない。
実際勝手に棚も倒れてる、お前らの言うことを信じないわけにもいかない。」
どうやら店長も信じてくれたようだ。
「お前らはもう帰れ、とりあえず皆(アルバイト)に電話して
片付け手伝ってもらえる奴いないか聞いてみる。
あっ、このことは皆には言うな。ビデオも俺が処分する、
大丈夫、みんなには適当にごましとくさ。」
「わかりました・・・佐藤帰ろうか」
「はい・・・そうですね・・・」
「おう、気をつけてな！！もう忘れろよ！！」
僕達は外に出た、5時過ぎだが冬だったためまだ空は暗かった。
「佐藤、送るわ、乗ってけよ」
佐藤は徒歩で10分ぐらいかけて通っているが、さすがに心細いだろうと
思って佐藤を車に乗せた。
・・・うん、もちろん僕が怖かったのもあるけどね。
(まぁ、いつまでもくよくよしてても意味がない。きっぱり忘れるのが正解だ！！)
僕は力強く自分に言いきかせ、車に乗り込んだ。
「よっしゃ！！帰るか！！さ・・と・・・・」
佐藤が口を大きく開き、目を見開いて店の中を見ている。
「あ・・・あ・・・」
「佐藤！？・・・ま・・・まさ・・か」
僕はゆっくりと振り返り店内を見た。
店長が掃除を始めている・・・その後ろにいたのは・・・
僕はものすごい速さでエンジンを掛け車を出した。
佐藤は終始無言だった。
佐藤を送り、帰宅した僕はベッドに倒れこんだ。
「○○！！いつまで寝てるの！？お昼過ぎてるよ、授業あるんじゃないの！？」
母の声が聞こえてきた、時刻は13時前、ずいぶん寝てたようだ。
あ・・・そうだ、僕にはしなければならないことがあった
店長に電話して無事を確かめること、後・・・バイトを辞めると伝えること。
さすがにもう続けることはできない。
電話をかけた。
「もしもし、○○です。」
「おぉ、どうだ、寝て少しはスッキリしたか？」
「えぇ・・・まぁ・・・それよりあれから何も起こらなかったですか？」
「何か？？・・・あぁ・・・大丈夫、何もなかったぞ。」
僕は店長の声に何か違和感を感じた・・・が、あえて触れようとはしなかった。
「それで店長・・・バイトなんですが、辞めさせていただきたいんです。」
「なんだ、お前もか・・・佐藤もついさっき電話があったよ、辞めるってな…」
どうやら佐藤も考えてることは同じだったようだ。
僕はバイトリーダーだったため、一度店に来てほしい、話がしたいと言われたが断った。
もうあの店には行きたくない。
僕はそれっきり店に行くことはなかった…
その後、僕たちが辞めて一ヶ月がたったころ、店は潰れた。
バイトに聞いてみると営業不振が原因だったらしい。
やはり気になったので店長に連絡をとった。
バイトの人には営業不振と伝えてあるが、実際は違うようだった。
理由を聞いても店長は言いたがらない・・・
僕はおそらくあの女が原因だろうと思っている。
そのコンビニは今も残っている、土地は店長のものだから建物はそのまま…
時が経った今も、車でその店の前を通ることがある
僕は絶対店の方は見ないようにしている。
……たとえどれだけ視線を感じても…
少しぞっとする話
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