ETV特集「命と向きあった日々」の録画を、今、見ました。

 

妊娠3か月の頃、妊婦健診で障害児の可能性を指摘され、出生前検査を受けたところダウン症だとわかり、産むか産まないかの選択を迫られた夫婦のドキュメンタリーです。

 

夫が報道関係の方で、この葛藤の記録を残そうと、ダウン症取材の経験豊かな人に撮影を頼みました。それで、産むまでの心理的な経過が生々しく伝わる作品に仕上がっています。

 

様々な葛藤の末に産むと決めてから、妻が実家の父親にその決心を伝えるシーンがありました。電話口で初めて障害のある子供を産むと知らされた父親は落ち着いた声で「自分たちがしっかりしとったら大丈夫」「こればっかりはもう運命」「なんも気にせんでええ。」「お父さんたちも隔たりなく、同じ孫としてかわいがるから心配せんでいい」と答えていました。

 

ああ、よかったな、と、その優しさに涙がこぼれました。娘さんも嬉しかったでしょう。私にも自閉症のルイ君がいるので、祖父としての気持ちも、娘としての気持ちもとてもよくわかりました。

 

私はルイ君の障害が分かった時、ルイ君よりも娘を心配しました。ルイ君は娘夫婦が愛情たっぷりに見守っています。辛いのは娘であり、娘が壊れたら、ルイ君の幸せも無くなると思ったからです。

 

なので、私が少しでも手伝えるようにと、小学校入学を機に日本での子育てを勧めました。年上のお婿さんのご両親はルイ君が生まれる前に既に亡くなられていたからです。


お婿さんも了解してくれて、当初は彼が東京―パリを往復する暮らしをしていました。今は滞在許可証を取得して住所も東京に移しました。

 

ルイ君の場合は、生まれる前には障害が分からなかったので、こういう葛藤がなくてむしろ幸せだったなと思いました。もしわかっていたら、このご夫婦のように、産む前からどんなにか悩み、そして心配をしたことでしょう。

 

ルイ君の障害がわかったのは、3歳少し前に高熱を出して、急に今まで出来ていたことが出来なくなってしまったことからです。


小さい頃は天使のように可愛かったルイ君。いたずらっぽい表情をして踊ったり、ボールをサッカーのように蹴ったりしていました。

 

障害が無ければ、色々な可能性があったルイ君なのに、と考えないでもありません。でも、健康で、体の心配がないだけでも感謝しなくてはならないとも分かっています。この番組を見て、私ももっとルイ君の幸せのために協力をしていかねばと思いました。

 

昨夜もNHKの番組で、東京には重度の知的障害者を預かる施設が絶望的に不足していて、青森県の施設に大勢が預けられている、という報道を見たばかりです。中には、夫が働けず妻が働いているため経済的な余裕がなく、青森まで一度も会いに行っていないという人もいました。

 

私も、東京には障害者に関する施設や機関が不足していると感じています。東京都も、私の住む区も、ダイバーシティを謳っていますが、声高に主張されているのは性的マイノリティーや少子化を防ぐための優遇策ばかりで、障害者に対する策は耳にしません。

 

勿論、私の子供時代のような差別は否定されてきてはいますが、娘たちが世話を出来なくなった時に安心してルイ君を託せる場所が近くにないのは気になるところです。

 

障害児を抱えて、肉体的、精神的に本当に苦労の真っ最中の若いお母さんたちのブログをいくつか読んでいますが、その辛さは、娘が慢性睡眠不足でクタクタになった頃と重なります。


どこか専門性のある信頼できる相談先はないのかと思います。障害があろうがなかろうが、まずは親の健康を守らないと子育てはできません。

 

ダウン症で生まれた子供さんを囲んで幸せそうなこのご夫婦のように、ルイ君も障害があっても幸せに暮らしていけるよう、私も微力ながらお手伝いしようと改めて思いました。