嘘 「雪、一度も見たことないんですよ。」 イチョウの葉っぱをスニーカーのつま先で蹴飛ばしながら くったくのない笑顔でそう言った人がいた 独特のイントネーションで いくら南国育ちでも あれは 嘘だよね 「早く、外見て。降ってるよ!」 初雪の日に私が慌てて電話することを見越しての 今から思えばあれは 小憎らしい嘘だったんだ そういえば最後の言葉まで言わされたくせに 離れて十年以上たってから気がつくなんて どうしようもないね イチョウの黄色が やけに明るい夜だったね