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2015年10月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1510ページ
ナイス数:29ナイス

寝ても覚めても (河出文庫)寝ても覚めても (河出文庫)感想
なるほど、という感じ。柴崎友香は芥川賞を『春の庭』で受賞したが、極めて技巧的な作家であることがわかる作品。「意識」というものの捉え方が近代的意味の信頼の置ける理性ではないこと。語り手が「信頼できない語り手」であること。「~た。~た。」を極めて多く多用していること。描写力の高さは言うまでもない。ゆえにこの作品を物語性を重視する読者が読むと戸惑いを覚えるだろう。最後に仕掛けてみせる作者の意図というものが見られないこともないが、それは物語性というより心理描写の巧さといったほうがいいだろう。作者の実力を認める。
読了日:10月25日 著者:柴崎友香
デカルト『方法序説』を読む (岩波現代文庫)デカルト『方法序説』を読む (岩波現代文庫)感想
岩波文庫の『方法序説』の訳者谷川多佳子による入門書。レベルとしては高卒~大学教養程度の知識があれば十分と思われる。もちろん高校生でも意欲があれば問題はないほど丁寧に書かれているが、当時のデカルトが置かれていた状況、つまり世界史の知識が多少なりとも必要とされるだろう。入門書であるだけにデカルトについて満遍なく触れられているし、デカルトの思想の問題点も若干であるが触れられている。より詳しく知りたい人のために参考文献も書かれているのでまさに「デカルト入門」にうってつけの本といえるだろう。
読了日:10月17日 著者:谷川多佳子
芥川龍之介全集〈1〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈1〉 (ちくま文庫)感想
芥川の題材の選び方、語りの手法には非常にシンパシーを感じる。同じ手法は2度と使いたくないという芥川の作家としての矜持が自分を追い詰めたのであろう。おそらくあまりに切れすぎていたために短篇を書かざるを得なかったのだろうなと思わせたのは「偸盗」を読んだときだ。芥川自身は評価していなかったようだが、現代の大衆が最も楽しめるのはこの作品ではないのか。「羅生門」の続編的位置づけらしいが、確かにあまりに大衆的ではあるが、芥川作品の中でも加速度のある=読ませる作品だと思った。個人的には「二つの手紙」が気に入っている。
読了日:10月15日 著者:芥川龍之介
ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)感想
小説が書かれた背景として、ウクライナのキエフでこのような作品が書かれたということが非常に興味深い。読み始めたときには特にペンギンにもソーニャにも感情移入していなかったが、読み進めて、彼らとの生活を追体験するうちに愛着が湧いてくる。主人公のヴィクトルは死亡記事を書く仕事をしているのだが、このことが作品にある種の不透明感を与えている。まさに、「他人の死が自分自身に迫ってくる」ということになる。作品を読む前と読んだあとで確実に世界が変わったと感じさせる作品でもあった。これは良作と言っていいだろう。
読了日:10月12日 著者:アンドレイ・クルコフ
文学の力×教材の力 小学校編1年文学の力×教材の力 小学校編1年感想
小学1年生の国語教科書に掲載されている作品についての研究が書かれている本。みんなが馴染みの「おおきなかぶ」から比較的新しい「サラダでげんき」など。6作品について書かれているが、それぞれ違った視点から小学1年生が想像力を働かせるために工夫がこらされているのがわかる。動物の擬人化というのはその最も典型的な例だ。「サラダでげんき」は「魔女の宅急便」の角野栄子さんが文を書いている。見えないお母さんを想像させる長新太さんの絵と相まって、とても現代的で子どもが読んだら喜ぶだろうなと思わせるものだ。
読了日:10月2日 著者:

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