『吸血鬼は夜恋をする (SF&ファンタジィ・ショートショート傑作選)/ R・F・ヤング、R・マシスン他』
SHE ONLY GOES OUT AT NIGHT and other stories / R.F.Young, R.Matheson and more
『サラゴサ手稿』はお休みし、気分を変えてこちらのSF・ファンタジィものの短編集を読みました。
全32編収録してあり短いものだと2ページで終わるものもあり。
この中で一番印象に残ったのがクロード・F・シェニスという作家の「ジュリエット」という作品で、これは全イタ車旧車乗りに是非とも読んで欲しいと思わせるようなお話し。
全てがロボット化している未来が舞台で車が人間と対話し、自分の意志で動く世界で、ジュリエットという名の愛車と主人公の会話がメインで話が進んで行きます。
で、このジュリエットは文中でミラノの工場から来たと語られているので恐らくアルファロメオのジュリエッタのことだと思う。
主人公は男性でジュリエットは女性、男性はジュリエットをずっと大切にしていこうと思っているが・・・。
最後の男性のセリフはイタ車の旧車乗りなら「その気持ち分かるわ~」と心に染み入ります。
あと面白かったのがこの本のタイトルにもなっているウィリアム・テンの「吸血鬼は夜恋をする」とアラン・E・ナースの「旅行かばん」
まずウィリアム・テンの方は原題”SHE ONLY GOES OUT AT NIGHT”というちょっと味気ないタイトルを「吸血鬼は夜恋をする」と改変した編者のセンスが良いですね。
町中の子供たちが謎の病気に罹り、町医者が原因が分からず苦悩するところまでは不穏な雰囲気で話が進みホラーの様相なのですが、息子が恋をしている相手が吸血鬼だと知ってからはホラ話的な展開になって心温まるエンディングになるのが面白い。
以前ウィリアム・テンの別の短編を読んだけど、それもホラ話的だったのでそういうお話が得意な作家なのでしょうね。
「旅行かばん」は永遠に旅をし続けるタイムトラベラーが主人公のお話で、もうどこにも行かず腰を落ち着けるんだと意を決するがしかし・・・というお話し。
ラストの恋人のポジティブなセリフにググっと来ますね。