そして次のステップへ
ピンチョスでは期間限定でスープカレーを出すようになった。
スリランカ狂和国のファンたちが待ち望んでいた水谷流スープカレーにはならなかったが、スープカレー通の札幌人たちをうならせることはできた。
それはタックがスープカレーを作ったらどんな風になるのだろう?という疑問と、期待と、面白みに溢れた問いかけに、私はただそれに答えただけである。
三重県に来て3年ぶりにスープカレーを作ることになる。
北海道以外では驚くほどスープカレーは他県民に浸透していない。
存在は知りつつも、食べたことがない人の方が多いだろう。
多分、例えて言うならジンギスカンは知っているけれど、北海道に行った時以来食べたことがない。
そんなところだろう。
三重県にはスープカレー屋さんが存在しないし、愛知県ですら数件あるかないかといったところだ。
魚の鮮度が必要なわけでもないし、北海道にしか存在しない食材を使っているわけでもないのに、ここまで違いが生まれているのは何故なんだろう?
そんな中、名古屋市瑞穂区に「FUKUROO(梟)」というスープカレー屋さんがある。
オーナーは奥芝商店の店主から教わったと言っていたが、はっきり言って札幌市内どこのスープカレー屋さんよりも美味しいんじゃないかと思う。
私は札幌にいた時よりも、こちらに来てからの方がスープカレーを食べているんじゃないかと感じる。
それはやはり「FUKUROO」の存在が大きいだろう。
この数ヶ月で私の元にレシピを教えて欲しいとか、作って欲しいなどという以来が立て続けに来た。
私は過去のレシピを思い出し、今の自分のエッセンスを加えながら何度も試作を作り、先日皆さんに食べていただく機会ができた。
少し緊張した。
皆さんの反応は上々で安堵したが、新たな使命をその時受けたのだった。
「このスープカレーは美味しいけれど、私たちが希望するスープカレーを作って欲しい。」
それは
「ビーガンスープカレー」である。
ビーガンとは完全菜食主義のことであり、肉、魚、乳製品、卵、などを一切使わない料理である。
つまりはスープカレーの主となるスープには鶏ガラや、鰹節などではなく、何か別の食材を使う必要があるということだ。
一見、難題に聞こえるが、私はそうは思わない。
むしろ私がビーガン料理を作るとどうなるのか?を私自身が知りたいという興味の方が先に湧いてくる。
以前から、タックがこれを作ったらどうなるの?
タックが野菜炒め作ったらどうなるの?
タックがインスタントラーメンを作ったらどうなるの?
タックが星の王子様でカレーを作ったらどうなるの?などなど、
面白い問いに答えてきたのだから、これもまたその一環であろうと思うのだ。
こういった機会をあたえてくれる皆様に本当に感謝している。
これらはすべて私の経験となり成長へと繋がっていく。
世の中には「面白そうなこと」を考える天才がいる。
その天才は思いついた「面白そうなこと」を人に与える天才でもある。
与えられた人はその「面白そうなこと」を実現させる力を持っている。
天才は力を持っていそうな人にしか「面白そうなこと」を与えないのだ。
そうして「面白そうなこと」は「面白いこと」に変わる。
それを見た天才はこう言うのだ。
「ね!面白いでしょ!」と。
そして私は次のステップへと進む。