26話 水浸し
さて、この日はホテルのチェックアウトを済まし、ヴェネチアのホテルに移動する日だ。
私達は出来るだけ安いホテルを選んだためメストレに泊まる事になったのだが、実際来てみると夢のようなヴェネチアの街並を見た後、工事現場のメストレに戻る事が、どうも気分が半減してしまう感じがした。
まぁ、1日、2日の話なのでどうって事ないと言えばそれまでだが、出来ればヴェネチアで泊まってみたいと思い、前日スマホのアプリでホテルを探した所、オフシーズンだった事もあり、駅近くで意外と安いホテルを見つけた。なぁ~んだ。結構あるじゃん。
朝食を済まし、朝早々とチェックアウトと思いカウンターに鍵を返すと、受付の人が支払いを要求して来た。
え?確か支払いは既に済んでいるはず。
インターネットを使いクレジットで支払っているよと伝えると、朝食代がまだ払われていないという。
なに?
そんな事言われたの初めてだぞ。
今まではホテル代に朝食も含まれていた。
それがこのホテルは別払いなのだという。
しかも一食€6で二人の2日分で€24だというのだ。
おいおい、それは高いよ~。
ホテルの宿泊代で一泊2人で€39なのに朝食で€24って...
本当かな~。
少し不安になった私は一生懸命フロントに説明するのだが、もちろんそれはきちんとは伝わらないし、相手の言っている事はなんとなくしかわからない。わかる事は「朝食代を払え」という事だけだ。
う~ん。。。とアプリをもう一度確認してみると、日本語相談センターの電話番号が書いてあったのでそこに連絡してみる事にした。
日本人が電話に出てくれて安心して相談したのだが、説明はこうだ。
ホテルによっては朝食代を別に請求する所がある。
食べなければとられないし、食べた分だけ請求するという。
しかし、それは事前にフロントに確認しておかないとわからないというのだ。
私達はこれまでのホテルで朝食代を別に要求された事はないので、料金に含まれている物だと思っていたがどうやらそうではないホテルもあるらしい。
でも、実際この後、数カ所のホテルに泊まったが別で請求してくるホテルはなかった。
むむ~。唯一イタリアで感じた「言葉の壁」の瞬間だった。
まぁしかたない。
これも経験だし、一つ勉強になった。
実際ホテル自体はとても綺麗で快適な部屋だったし、朝食もおいしかった。
フロントの対応も感じが良かったし、ただ私達が言葉を知らなかっただけだ。
気を取り直してヴェネチアへ行こう!
今日はキャリーバックなどの大きな荷物もあるので鉄道で行く事にした。
実は昨日の夜、みっちは遅くまで起きていた。
珍しく私よりも夜更かしした理由はこれだった。
昨日、無印良品で見つけた折り紙で、
和柄で可愛い折り紙を使い、夜な夜な「鶴」を折っていたのだ。
そう、昨日のレストランで喜ばれた鶴を今度は折り紙でプレゼントしようと考えた。
それは、レストランで働く女の子と眼鏡屋さんの男性、ガラス職人のおっちゃんにそれぞれ渡せるように数を揃え、今日の一つの目的としてそれぞれにもう一度会う事を決める。
あと一つ、今日中にやらなければならない事は、明日どうやってフランスのパリに行くかを決める事だった。今わかっている手段としては鉄道か飛行機の2種類。
ちなみにどちらもチケットの購入方法はわからなかった。
まぁなんとかなるでしょう。
昨日の夜、ヴェネチアは雨が降っていた。
朝になると回復はしていたが、ヴェネチアが雨になるとこうなる。
わわわわっ。水が溢れてるよ。
えええ!大丈夫?
普通にちょっとした波で水が歩道へ流れて来ている。
え~、お店とかホテルとか大丈夫なのかな~?
と思いながら私達が泊まるホテルへ行くと、普通に1Fフロントは水浸しになっていた。
入り口に排水用のポンプがあり、水を外へ吐き出すシステムになっていたが、全然間に合っておらず浸水真っ最中だった。
しかし、ビックリなのはその事に動じていない事。
水が入って来るのは日常茶飯事で、なんら普段の生活と変わらない。
考えてみればそりゃそうだ、少しの雨でも水が入って来るんだから、ましてやアクアアルタともなればこんなものではすまないらしい。
ユーロニュース参照
あぁ、だから長靴がいっぱい売っているのか。
浸水がひどいときは大人の膝上くらいまでは来るらしい。
どうやら時期があって特に寒い季節に多いという。
そうか私達がいたのは11月の後半だからまさにこれからなのか。
いやはや、それにしてもどうしてこの町に暮らすのだろう。
当たり前とはいえ、大変な事には変わりないと思うが、
私は必ず浸水する町、このヴェネチアにますます興味を持った。
これで、興味を持つ自分も少し変わっていると思うけどね。