24話 Bruno Amadi (ブルーノアマディー) | たっくのブログ

24話 Bruno Amadi (ブルーノアマディー)



ヴェネチアは海の町だ。
これだけ海と密着していれば、それは海産物が美味しいに決まっている。
有名なのはイカスミパスタだが、地元が愛する市場に行けば様々な食材に触れる事ができた。

どこに行っても市場は楽しい。
日本では観た事もない食材に私の目は釘付けになった。








うひょー!美味そうだ。
みんな生き生きしてるぞ。

ここに住む彼らの生活は日本から比べるととても不便だ。
車やバイクなどは一切通れないし、階段が多いので高齢者などは足が丈夫じゃないと出掛ける事が出来ない。

宅急便なども大きな荷台に積んで二人掛かりで引いているが、階段にさしかかると一段一段持ち上げなければならない。ゴミの収集だってそうだ。朝早く手押しのリアカーに積んでいる人を見かけた。道が細い所はそのリアカーすら通れないので自分達が行くしかない。

今の世界で、現代の建築技術を使えば、この町をもっと便利にする事だって出来るはずだ。
今じゃなくたって、何百年も昔から便利さだけを考えればこの景色はないと思う。
それでも尚、いつ沈むかもわからないこの町に暮らし、守り続けている人達は皆、この町を愛し続けているという事だろう。

フィレンツェの歴史地区を今でも石畳にしておく気持ちと、このヴェネチアという町を守り続けている気持ちはどこか共通する部分があり、私はとても魅力的に感じた。



ヴェネチアングラスと聞いた事がある人も多いだろう。
主にワインを飲むグラスや器やアクセサリーなどが有名だ。

町を歩いていると、沢山のお店がある。
どれもこれも綺麗で素晴らしいのだが、どうも私は興味がなかった。

観光地だからなのかヴェネチアって言えばグラスとお面でしょう!ってな感じでぐいぐい押してくるお店にはどうも魅力を感じない。もちろん素晴らしい作品もあるとは思うが、作者が見えなくてピンとこないのだ。

しかし、このお店はどこか違った。
赤を基調とした独特のセンスに私達は立ち止まった。



え?なんだこのお店?
なんか凄そう。



え?これ魚?
え?ガラス?
え?凄くない?

え?え~!!



なにこれ?虫だ!
すげー!めっちゃすげー!

ガラス越しで興奮した私達は、このお店がただならぬお店だと感じた。
すぐに中に入ると感じのいいおじさんが一人迎えてくれた。


ブルーノアマディーさん
帰国後に、ものすごい人だとわかるがこの時すでにものすごい人だと思っていた。

この作品の細かさ、精密さはまさに職人だと思う。
4畳にも満たないスペースで工房も兼ねそないており、ガスバーナーでガラスを溶かして作っている。

なんと、日本の昆虫図鑑や鳥の図鑑があり、日本にも何度も来た事があるという。
どの国よりも日本の図鑑が一番鮮明に書いてあるというのだ。

私達が興奮して店内を見ていると、アマディーさんは「まだ見てるか?」という。
「俺はそこのカフェでコーヒーを飲んでくるよ。」というそぶりと、お店の入り口にカフェにいますと書いた張り紙を貼っていた。

その時は私達も一緒に出たが、ちょっと興奮が収まらなかった。
これは...
明日もこようか?
明日も来よう。

そう、この日はメストレのホテルで一泊(前日夜到着のため実質は2泊3日)にし次の日にフランスへ行く予定になっていたのだ。
パリは5日間くらいかけないと行きたい所に行けないと思っていたため、日にちを取っていたがあまりにもヴェネチアが凄すぎて気持ちが揺らいでいた。

とても一日ではヴェネチアを見切れない。
このまま離れたら後悔しそうだと思い、少し今後の予定を考えてみる事にした。