料理の即興
黒豆時代、ミュージシャンの即興音楽をよく聴いていた。
その時感じた事を、音で表現する。
たとえば、ピアノパフォーマー「hajime」
くんがお客さんからドレミの中から三音をリクエストしてもらい、その三音だけで即興音楽を作り上げる。
サンポーニャの「岡田浩安」
さんは題名は決まっているが実際演奏するものは即興になっていて、毎回楽しめる。
まあ、本当に挙げていたらきりが無いが、様々な即興があって、演奏する側も聴く側もなんともいえない様な緊張感があり、演奏後の感動は人一倍味わえる。
実は、料理にも即興が存在する。
たとえば、お寿司屋さんで言う「大将!お任せで握ってよ。」とかは典型的だ。
行ったことは無いが、スペインの「エル・ブリ」もそれに近いことをやっている。
特に料理の場合、一対一が多い。
その人がどんな料理が食べたいのか?
好みの味付けは?
などと模索することもあるが、ほとんどは出してみないとわからない。
私が焼き鳥屋さんにいた頃、その感覚は自分にも生まれていた。
そのお店ではカウンター越しに焼いていて、お客さんが食べている光景を見ることが出来る。
最初、一品焼き鳥を出した後からじゃないと、その人の好みなどわからなかったが、それ以外にもヒントが沢山合ったことに気づいた。
サービス品で一番最初に出されていた「大根おろし」
この食べ方によってお客さんの好みがはっきりわかってしまったのだ。
そのまま食べる人、お醤油を少したらす人、お醤油をどばぁっとかけすぎてしまう人、大根おろしには目もくれないひと、など・・
少なくとも味の好みはわかりやすかった。
薄味か濃い味か位は伝わるので、焼き鳥の味付けも微妙に変えていた。
私にとっては当たり前のことと思っていたが、どうやら違うらしい。
ある意味、特殊な才能らしいという事を教えてもらった。
現在、ピンチョスには一対一の即興料理はメニューには載っていないが、そういうメニューもあってもいいと思う。
料理人として、ワクワクする瞬間だ。
やっぱり、そんなお店が素敵だと思う。