あれは…
今からさかのぼること、2日前…
時刻は深夜の2時を回った頃だろうか…
パソコンの制作作業のせいか、はたまた、連日のストイック過ぎる程の稽古のせいか…
俺は一つの強い感情に支配されていた…
まぁ、敢えて簡単に言葉にしようとするならば…
ベリー疲れていた…
迫りくる明日にまだ必要な用意があったが、圧倒的な疲労という名の欲に支配 されていた俺は…
頭の中に確かな閃きが起こり… 脳は俺にこう呟いてきた…
ユー寝ちゃいなよ…
すると睡魔という名の悪魔は俺の弱い心を貪欲に蝕んでいった…
いっそこのまま寝てしまおうか… そんな矢先の出来事だった…
“カツン!!!”
突然窓に、衝撃音がほとばしった…
『何だ』
窓に駆け寄り、漆黒の闇が支配した夜に目を向けると
“カサ”カサ”カサ”
”ガン!!!”ガン!!!”
奴は激しく、激突を繰り返した。
奴にとっては、窓などシルクの布程度にしか感じなかったのだろうか…
固い甲殻の鎧は、漆黒の闇を纏い、長く伸びる兜の先は、天に向かって真っ直ぐ伸びていた…
俺を支配していた睡魔の呪縛は、跡形もなく消え去り、俺は奴の異常な行動に酷く興奮していた…
この瞬間を逃す訳にいかない…
気が付くと、俺はただただ夢中に、モバイルフォンのピクチャーボタンをプッシュしていた…
しかしそんな行動も長くは続かなかった…漆黒の訪問者は、カサカサ音を微かに残しながら、静寂という名の夜の闇の中へと消えていた…
これは幻なのか…
疑心暗鬼の中、俺の出した答えは、やはり
“睡眠”
だった… そして…
小鳥の囀りと共に目覚める朝が来たが、そこには、何ひとつ変わらない朝が存在していた…
信じたい、でも昨晩は夢を見ていたんだ…
そう言い聞かせて、遅刻気味で慌ててドアを開けた…
奇跡は、信じた人間にしか訪れない…
奴が俺の前に再び訪れたのだった
続く…