雛祭母の娘になりに行く  羽貝昌夫

        朝日新聞「俳壇」への投句 2015.3.16掲載

 

描かれている主人公は、もう孫のいるような年齢なのでしょう。お母さんとは別居ですが、時々は会いに行っているのでしょう。会いに行くと、いつも子供のように扱われてしまいます。「お前の好きなお菓子を買っておいたよ」とか「幾ら食べても良いけど、食べ過ぎはいけないから、少し食べたら持ってお帰り」とか、直ぐ言われてしまいます。母に会いに行く時は何十年か昔に戻った気持ちで行くと、和やかな気持ちで過ごせます。

 母-娘はこういう関係が多いようですが、父―息子はこうはいかないような気がします。人類男子はエディプスコンプレックスに支配されているのでしょうか。父親は息子を子供の時からあまり子ども扱いしません。だから子供が成人になってからも、従来同様、対等の競争相手の男としてしか扱えないのです。

対抗する俳句を無理やり作ると「正月や親父が何時も飲み勝って」とかになってしまいます。(文:海千)

「こんばんわ60段のお雛様」(勝浦市・遠見岬神社)(写真:南岳)