(とう)()の忌季語で終ってなるものか  長谷川櫂

2018.4.29朝日新聞「俳壇」の選評として詠む

 

金子(かねこ)(とう)()(1919-2018)は旧制高校時代から俳句を始めた。大学卒業後、海軍中尉として太平洋のトラック島で従軍する。悲惨な消耗戦の後、敗戦・捕虜も体験する。復員後、日本銀行で働きながら反戦・平和の句を詠み続けた。季語や花鳥諷詠といった伝統的な形式にとらわれず、戦争の悲惨さや社会問題も題材にして自由な俳句の世界を築いた。現代俳句協会長や朝日俳壇選者も長く務め、テレビの俳句番組にも数多く出演。反戦・平和の俳人として広く知られており、その命日(2月20日)は「(とう)太忌(たき)」として季語にも使われる。

長谷川櫂は朝日新聞の「俳壇」の選者の一人だが、そこで投稿句の中の一句「春雷忌即ち兜太の平和主義」を選んだが、「兜太の忌」を俳句に入れただけで、その句が平和の句になってしまうことを自戒の念を込めて一句に詠んだ。

(文:海千)


(写真:南岳)