さて、先ほどの記事でライカM3を不用意に落とした話を書いたが、顛末は以下のとおりである。
家から持ち出したライカM2のシルバーボディには今年になって修理したズミクロン50㎜が付いていた。もともとは初めてのM型ライカを手に入れたときに一緒についてきたレンズだ。このところ会社の帰り道に1日1枚撮影をやっていて(こちらはまた改めて紹介する)、そちらに現在のメイン機材であるM2のブラックを使っているので、M型で他の撮影をしようとすると、シルバーボディのM2かM3を持ち出すことになる。そういうわけで久しぶりにかつての私の主力機であった、M2のシルバーボディを50mmズミクロンとともに持ち出したのである。

喜多院につくや、このM2に50㎜ズミクロンで撮影を始めたのだが、やはり50㎜では建物などの全景を撮ろうとすると結構厳しい。何より自分の目が35㎜標準になっているから、カメラを構えてファインダーを覗いてみると、ことごとく建物が視野に入らない。ということで仕方がなく、35㎜に付け替えようとしたのだが

鞄から35㎜の付いたM3を取り出したときのこと。いつも私はM型ライカをハーフの革ケースに入れて使うのが常だ。理由はボディの保護というよりは、M型ライカボディのストラップを止める「耳」を使いたくない、からだ。ボディ本体とともに真鍮でできているあの耳を使うと、だんだんと削れていくからだ。しかしその結果、耳が擦り切れてボディを落とした、という話を聞いたことがない、とは彼の田中長徳先生もそうおっしゃられていたが。

しかし私のM3は実はきちんと革ケースに入っておらず(革ケースのネジとM3のボディは一体化しておらず)、私がカメラを取り出してケースを持ったら、固定されていないM3のボディはそのまま地面にボロッと落下したわけである。その時の焦ったこと、焦ったこと。「やってしまった!」というのが第一印象だったが、しかし誰もいない境内、私は冷静にM3を拾い上げ、まずファインダーを確認した。M型ライカは丈夫なカメラだが、壊れるとすればファインダーなのである。もし覗いて真っ黒になっていたらアウトである。直せるという話もあるが、しかしいずれにしても安い修理にはならないだろう。そして私の「落下」したM3は果たして大丈夫であった。下が土の地面だったのが幸いしたに違いない。とはいえ境内なので結構固い地面で、実に焦った。

M3を落下させたのち、なぜボディとケースが止まっていなかったのか、が漸く判明した。そのケースはM2のライカビットMP用に特注したケースだったからだ。ライカビットMPのケース用のネジ穴は通常のM2やM3のボディ下の穴と逆側に穴が開いているのである。だから自分では気が付いてなかったのだが、M3ボディとライカビット用のケースは止まりっこなかった、のである。

では、なぜM3にライカビットのケースが付いていたのか。それは私が本来ライカビットを付けるべきM2のブラックペイントのボディにビットを付けずに使っているから、だ。ではなぜビットを付けないか、というとビットのレバーを止めているスプリングの力が弱くなり、意図せずにビットからレバーが飛び出してくるから、である。現在1日1枚の撮影シリーズを並行してやっていて、毎日ブラックのM2を使っているのだが、そちらに通常のM2の底蓋を付けて、M3から取り外したケースを付けて使っているのである。で、仕方がないからビット用のケースをM3にかぶせて、カメラ棚に置いていた、ということなのである。

さて、そんなわけで不用意にM3を地面に落下させた私であったが、地面がアスファルトとかコンクリートでなかったのは真にラッキーだった、としか言いようがない。実はこれまでもカメラを落下させたことは何度かあるのだが、大抵は外でしゃがんでフィルムを入れ替えているとき、であった。立ったまま器用に数秒でフィルムを入れ替える、のがM型の達人ということであるが、私はできればベンチを探して座ってゆっくり交換したい。ベンチが近くになかったこともあるが、なまじ立ったままレンズを入れ替えようなどとするから、こんな落下事故を起こすのだ。
