さて、九份の紹介も終わったところで、ネガの合間にあったものから1枚紹介してみようと思う。
 
旅の出発と言えば成田空港だ。私は可能ならばJALを好んで乗るので、成田といってもそこは第二ターミナル、ということになる。チェックインして南ウイングもしくは北ウイングから荷物検査ののちパスポートコントロールを通って搭乗口へ、ということなのだが、チェックインカウンターとウイングの間にはSKYRIUMというちょっとしたステージがあってちょっとしたライブとかそういうものをやっていることが多い。誰かと待ち合わせてチェックインのときには、ここに座ってしばし何かを鑑賞しながら待つことも多い。
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この日はジャズをやっていた。それなりには有名な方々らしいが私にはさっぱり分からなかった。だがその演奏は素晴らしかった。そこで私の目を引いたのは、演奏もよかったけれども写真中央に写っている黒い格好の人が持っているギターだ。これが何とEpiphone Casino(エピフォンカジノ)だったのだ。そして私が今年になって手に入れたギターこそ、このエピフォンカジノだった。それは3月末のことであって、だからギターにうつつを抜かして、せっかくブラックペイントのM2のセットが手元に来たのに、写真から離れそうになっていた。それを再び戻してくれたのは、他ならぬ「想定外の」台湾行きだった。もっともちゃっかり私は鞄の中にライカ、そしてスーツケースとともにこのエピフォンカジノの入ったギターケースも持って赴任することとなったのだが。
 
このときの写真はこれ以上ないのだが、備忘録として少しだけカジノについて触れておこう。アメリカで19世紀にトルコ出身のギリシャ人がバイオリンなどを作り始めたのがエピフォンの始まりだが、楽器メーカーとしてのエピフォンの創業は1928年である。1957年にギブソンに買収されることとなったが、カジノが発売となったのは1961年。そしてエピフォンとカジノの名を世界中に一躍広めたのはビートルズが使用してから、である。ジョンもポールもジョージもカジノを使ったが一番に手にしたのはポールで1962年製。あの武道館公演でジョンとジョージが手にしていたのもカジノなら、Sgt.Peppers Lonely Hearts Club Bandでリードギターに使われたのもカジノであるし(演奏はポール)、RevolutionでもGet Backでも使われた(塗装を剥がしたジョンのモデル)、ビートルズと縁の深いギターである。
 
しかしエピフォンはその後ギブソンの安型モデルを作るメーカとして今に至るのだが、60年代までギブソンと同じカラマズー工場で製作されたため、60年代のモデルは総じて人気があり高い。1970年代からはエピフォンは日本のマツモク製になった。だから私が高校生のころにバンドを初めて、雑誌Playerを見て憧れていたころのカジノは日本製であった。その後90年代に入って生産国は韓国となり、現在は中国に主流が移っているが、一部高級ラインは日本で製造されている。
 
ビートルズが使ったものだから、そのフォロワーも多い。特にジョンレノンが68年にサンバーストの塗装を自分で剥いでナチュラルにし、映画Get Backの中で演奏している様子が多くあったから、ジョンレノン好きなら初期のリッケンバッカー325と並んで人気が高いギターだ。しかし他にもカジノを愛用したことで有名なギタリストがいる。私が敬愛するMod Fatherのポールウェラー、その人である。彼のモデルはおそらく64年モデル(ただし本人は66年と言っている)で、枯れたサンバーストにピックガードなし、が特徴だ。私は私が思うソロとしての彼の頂点、93年のアルバムWild Woodの日本ツアーでこのカジノを持って歌う彼の姿を千葉のベイNKホールで見た。
 
私はギターが大好きだが、ビートルズとウェラーが使ったので一番は、と言われればカジノと高校生のころから思っていたものの、ポールマッカートニー好きのベーシストとしてバンドを始めたため、長らく巡り合うチャンスがなかった。今でも新品で手に入るカジノは、特段高級でも高いギターでもない、にもかかわらず、である。しかしそれが今年、突然の巡り合わせで自分のものになった。それもウェラーとドンズバの「塗装」(ちなみにラッカーである)に「仕様」の改造が施されたカジノであった。手にしてみれば、それは既に持っていたギブソンのSGやリッケンバッカーの330と並んで、あるいは昔弾いたことのあるギブソンのES335と同じくらい弾きやすいギターであったので、すぐにとても気に入った。だから私はそれを台湾に赴任するときに持って行って毎日ホテルで弾いていた、のである。
 
と、1枚の写真から語れるストーリーというのもあるものだ。ギターの話だけでも話し出したら(書き出したら)終わらないので、今宵はこれくらいにしておく。しかしラッカー塗装のカジノはめっちゃカッコイイギターなのだ。