「副長、ききましたか?たまが、自分の根性がババ色なのは、副長の性格のせいだっていっていますよ」

 

 ソッコーでチクってやった。

 

 俊冬め。副長に思いっきり叱られればいいんだ。

 

 が、副長はきいていなかった。月經量多 子宮肌腺症 それどころか、こちらに意識が向いていない。「副長、ききましたか?たまが、自分の根性がババ色なのは、副長の性格のせいだっていっていますよ」

 

 ソッコーでチクってやった。

 

 俊冬め。副長に思いっきり叱られればいいんだ。

 

 が、副長はきいていなかった。それどころか、こちらに意識が向いていない。は、どうやら自分の部屋のほうに向いているようだ。

 

 副長だけではない。その場にいる全員が、俊春の小柄な背をじっとみている。

 

 相棒が、俊春のうしろを距離をおいてついていっている。それはまるで、はじめておつかいにいくわが子のあとを尾行する親のようだ。

 

 さらに距離をおいて、まずは大鳥が、それから副長が、ためらいがちに進みはじめた。

 

 もちろん、副長の部屋のほうへとである。

 

 結局、ほかのお偉いさんたちもぞろぞろついていく。

 

 冷静に廊下をあるいてみると、結構走ったんだなということに気がついた。

 

 さっきは、進めども進めどもまったく進めていないような気がしていた。だから、すぐにでも熊に追いつかれてでかい掌で頭をもがれたり、背中を斬り裂かれるかと焦っていた。

 

 実際はちゃんと二本の脚は動いていて、そこそこの速さで廊下を走り抜けていたのだ。

 

 その間、いくつもの部屋を通過している。

 

『廊下を走らない』

 

 ここに、そんな規則はない。

 

 だが、ここは学校ではない。大人ばかりがいる。まぁ、首相官邸みたいなものであろうか。よほどのことがないかぎり、廊下を走る者はいないだろう。

 

 三人の男が力いっぱい走りまくったというのに、廊下に面している部屋の主はだれ一人として気がつかなかったわけだ。

 

 でっ、おれの悲鳴からの副長と大鳥のつられ悲鳴でやっと気がついたというわけだ。

 

 もしかしたら、居眠りでもしていたのかもしれないな。

 

 

 それは兎も角、さっき副長の部屋から飛びだしたとき、大鳥が一番最後だった。

 

 ドアをしめるヨユーなどあるわけもない。

 したがって、ドアはあけっぱなしになっている。

 

 そのあけっばなしのドアのまえに、俊春が立っている。

 相棒はその横でお座りをしていて、とも室内をみつめているようだ。

 

 そうと認めた時点で、先頭をゆく大鳥と副長が立ちどまった。もちろん、おれも含めた後続のだけであるが。

 

 そして。口のまえに指を一本立てた。

 

『シャラップ』

 

 という合図である。

 

 どうなっているんだろう。

 

 もしかして、熊がドアのすぐちかくにいるのか?

 わずかな間をおき、俊春と相棒の動きをじっとみまもっているのだろうか。

 

 ドキドキがとまらない。

 

 そのとき、犬を主人公にした漫画をふと思いだした。

 

 北海道から渡ってきたでかい羆を、主人公の犬と仲間たちが全国から犬を集め、協力して倒すのだ。

 

 それは兎も角、俊春、はやくなにかアクションを起こしてくれ。

 

「副長、いまから選択肢を三つ提示ます。どれがいいか、選んでください」

 

 俊春は、唐突に問いを投げつけた。かっこかわいいを右にわずかにかたむけてからつづける。

 

「その一、熊を廊下にひきずりだして仕留める。その場合、室内とドアが残念なことになります。それから、廊下の強度によっては、床や壁が残念なことになる可能性があります。その二、窓から外へと引きずりだし、外で仕留める。その場合、室内と窓がかなり残念なことになります。その三、室内で仕留める。その場合は、室内がご臨終レベルに残念な結果になるかもしれません。副長、どうぞお選びください」

「いやまて、ぽち。どれを選んでも、おれにとっては残念なことばかりじゃないか……」

「いいねぇ。いいよ、ぽち。トレビアーンってやつだね」

 

 副長にかぶせ、大鳥がちいさく掌をうちつついった。

 

 なにがいいんだろう?

 なにがトレビアーンなんだろう?

 

「どれも興奮ものだね」

「はああああ?あんた、他人事だと思って、なにをいいだすんだ。いま、おれの部屋が熊に占拠されていて、奪還するにはおれの部屋が破壊されるんだぞ。それのどこが興奮するっていうんだ」

「ああ、これはすまない」

 

 大鳥は、副長の眼前に人差し指を一本立て、それを左右に振った。

 

「ノンノン。興奮するのはそこじゃないんだ。ぽちのようなプティでおとなしい