が、島田と蟻通まで不在だと、だれが新撰組を束ねるのかという問題がでてくる。もちろん、副長不在時の最高責任者は大鳥である。最終的にはかれの指示をあおぎ、従わねばならない。

 

 しかし、実質上の指揮官は必要である。

 

 というわけで、実際のところは俊冬と俊春をどうするか、という問題なわけである。

 

 さきほどの副長の質問は、おれにたいしてのものであった。

 

「はい。副長は川汲峠で箱館府軍を破ります。婦科檢查 それから、大鳥さん率いる本軍もなんとかっていう村となんとかっていう村で敵を撃破します。清水谷箱館府知事はその報を受け、とっとと五稜郭を放棄して本土へ逃げるのです。だから、われわれは難なく五稜郭に無血入城できるわけです」

「なるほどな。ということは、おれは一度は戦って勝つってわけだ」

「ええ、副長」

「ならば、やはりどっちかにきてもらわねばな」

 

 副長は俊冬と俊春に流し目、もとい

「それで?おれは、

 

 結局、使者一行は先陣やそのあとに合流する伝習隊と

 

 その使者には、伊庭八郎のいる遊撃隊の一員である

 

 江戸幕府が瓦解すると、新政府軍はそこに箱舘府を設置した。

 現在、そこは

より半世紀ほどまえの1836年に、ナポレオン・ボナパルトがつくらせたものである。

 それは、より半世紀ほどまえの1836年に、ナポレオン・ボナパルトがつくらせたものである。

 

 銃の改造や手入れは、隊士たちも率先して手伝ってくれた。なので、この二日間で

 を向けた。

 

 欄干のちかくに立っている俊冬と俊春は、たがいのでは、副長ですら個室をもたせてもらえない。だから、打ち合わせも甲板で立ったままおこなっているのである。

 

「どちらにしますか?」

 

 俊冬が尋ねた。

 

「うーむ」

 

 副長は遊郭で遊女を格子越しに品定めする助兵衛親父みたいに、指先で顎をこすりつつ二人をみくらべている。

 

「どっちのほうが安い?」

 

 副長が尋ねると、俊冬と俊春は同時に相手を指さした。

 

 思わず、ふいてしまった。おれだけではなく、その場にいる全員がふいた。もちろん、かれらの間でお座りしている相棒もである。

 

「物見をおこない戦術を立て、その上で実践します。いまならもれなく、狙撃もおつけします。敵の指揮官の軍帽をふっ飛ばし、一瞬にして戦意を喪失させることが可能です」

「ぼくは敵の指揮官のもとへゆき、丁寧に退くよう直接お願いすることが可能です。迅速にして丁寧な仕事です。お客様に星を五ついただける仕事をいたします」

 

 俊冬につづき、俊春まで営業をはじめた。

 

 まるで現代の営業マンだ。

 

 またふいてしまった。

 

 副長も笑っている。「おれが同道いたします」

 

 ひとしきり笑った後、俊冬が申しでた。

 

 副長は、これまでもどちらかといえば俊冬を連れての行動がおおかった。自分により似ている俊冬のほうがやりやすいのかもしれない。

 

 そして、俊冬も大鳥や島田や蟻通よりも副長との方がやりやすいんだろう。

 

「ならば頼む。おまえがいてくれれば安心だ。ぽち、大鳥さんのことを頼んだぞ。に上陸したといっても、「ああ、蝦夷の地を踏みしめている」っていう感動や実感はあんまりない。

 

 ほかのおおくの国同様、「ようこそ蝦夷へ」とか「いらっしゃい北の大地へ」とか、そんな看板がでかでかと並んでいるわけではないからだ。

 

 蝦夷っていうか北海道は、個人的に旅行をしたことが二度ほどある。一人で訪れたのは、新撰組関連だったので五稜郭を中心だったし、友人たちと訪れたときにはレンタカーで北海道をまわった。

 

 どちらも駆け足だったので、北海道を堪能しつくしたわけではない。

 

 もっとも、今回は数日で本土にもどれるわけではない。終戦する来年まで滞在することになるのだ。

 

「まさかかような北の地までくるなんてこと、京にいたときには想像もしなかったがな」

 

 副長の上陸してからの第一声である。

 

 すべての兵が上陸しおえるまで、わずかなときを要するだろう。

 

 あいにく、すべての