に移しちまうことを可能にするんだな」

 

 馬車に揺られつつ、松本は感心しきりである。

 

 馬車を取り囲む隊士たちや子どもらも、「へー」やら「ほー」やら感心している。

 

 なにゆえかみんな集まってきていて、団子状態で行軍している。

 

 みんな、話をききたいからである。

 

 もちろん、おれのではない。子宮內膜異位症 俊春の、である。

 

 俊春が血液型について簡単に解説した。

 

 松本は理解している。そこはさすがである。が、隊士たちはよくわかっていない。それでも、わかったふりをしているところが健気である。

 

「副長は何型だと思う?」

 

 ふと尋ねてみた。副長のDNAを継ぐ俊春ならしっていると思ったからである。

 

「主計。きみは、何型だと推察する?」

 

 かれが問い返してきた。

 

 かれと俊冬には、本名である肇ではなく、主計と呼んでほしいと頼んだ。

 

 親父とお袋がつけてくれた肇をないがしろにしているわけではない。うまくいえないが、肇は現代に生きる、っていうか現代での名の気がする。では、主計って気がしてならないのである。

 

「B型かAB型かな?ああ、几帳面なところはA型かも。すくなくとも、O型ではないな」

 

 おれの答えに、かれはぶっとふいた。

 

「どういうこった。から、血液型がわかるっていうのか?」

「血液型じたいは、検査をすればわかります。それとは別に、それぞれの血液型には似たようながあるといわれてまして。それで、だいたいの予測ができるんです」

 

 松本にきかれたので、そう答えてみた。

 

「主計。きみは、O型だな。しかも、典型的なO型だ」

「悪かったな。どうせ、おれは典型的なO型だよ。そういうきみだって、O型だろう?」

「悪かったね、典型的なO型で。かれもO型だ。の血液で組織されている。DEA式ではない。万が一にも輸血するようなことがあれば、きみかぼくの血のほうが確実そうだね。犬からはだめだ。の血でないとね」

 

 俊春はそういいながら、自分の脚許で機嫌よくあるいている相棒にを向けた。

 

 犬の血液型はDEA式で分類されていて、十三種類あるといわれている。

 

 なんてこった。いくら相棒がのDNAを継いでいるとはいえ、の血とおなじで大丈夫だなんて。

 

 しかも、おれたちはとも同じ血液型っていうのか。

 

「ということは、逆におれたちも相棒から血をもらうことができる、と?」

「うーん、それはどうだろう。ぼくならもしかすると、だけど。そこのところは、試してみないと正直わからないね」

 

 俊春の答えに、思わず相棒をみてしまった。型であろうと犬型であろうと遺伝子操作でなにかをつくりあげるなんて罪深いことを平気でやる。

 

 おれごときが倫理や人道を問うべきではない。それでも、複雑というかモヤモヤというか、釈然としない。

 

「で?オー型というのは、どういうの「なんたら」について考察中に、好奇心旺盛な永遠の少年島田が尋ねてきた。

 

「O型ですか?一般的には、大雑把でおおらかでって感じでしょうか。助兵衛ってところもあるかも。ふだんはおおらかですが、キレるとめっちゃ口が悪くなったり、一人で行動したがるわりには孤独は嫌いだったり。そうそう、豊臣秀吉がO型であるといわれています。日本人は、A型についでO型がおおいんです。さきほどの輸血の話ですが、基本的にはおなじ血液型の人にしか適合しません。ですが、O型は他の型の人にもすることができます」

 

 Rhマイナスとかプラスというのは、話さなくてもいいだろう。「A型は几帳面でやさしく、中途半端が大嫌いです。織田信長がA型だといわれています。好きな人には意地悪だったり、キレたときには暴言を吐くという特徴もあります。B型は、個性的です。興味のあることにしか関心がなく、楽天家でちょっととっつきにくい面はありますね。がB型だったといわれています。AB型は、一番すくない型です。A型とB型、両方の面をもっています。几帳面で真面目で天才肌なのに教えるのは嫌で……。

が賜った城である。

 

「ならば、おれはこのまま別れて仙台城にいったほうがいいだろうな……。いや、まあいいか。むこうもおれがいくってことはしらねぇし、まってるわけでもねぇ。一日二日おくれたところで、どうってこたぁねぇな」

 

 松本が自問自答すると、俊春が笑って提案した。

 

「にゃんこかぼくがお連れします。どうか、ぎりぎりまでともにおすごしください」

 

 それから、俊春は前方にいる桑名少将にも行き先を告げにいくという。

 

 かれは社畜みたいなものである。

 現代人らしい、とつくづくかわいそうになってしまう。

 

「きみにツッコみたいところだけど、社畜のぼくにそんな時間はないからね。スルーさせてもらうよ」

 

 おれの心を盗みみたモラルのない俊春は、そうささやくと、ジャンプ一番あっという間に樹の枝の上に飛び移ってしまった。

 

「だから、きみの場合は盗みみたり探ったりなんてこと必要ないんだってば」

 

 俊春はバツが悪いものだから、そんな捨て台詞を残して枝から枝へと飛び去ってしまった。

 

「なんだよもうっ!ノリが悪いんだから。なぁ、相棒?」

 

 左脚許のいつもの定位置をみおろした。

 

 相棒はこれまでのような塩対応ではないものの、めっちゃしらーっとした