やおねぇ、あっおねぇはちがったかな?兎に角、それらすべてを護り抜くためには、いくらおれたちでも下準備や工作なしにはムリだからね」
俊冬が『相棒と副長と利三郎が護ってくれる』といったとき、反射的にを向けてしまった。
利三郎は、不敵な笑みとともに両肩をすくめた。副長のイケメンには、これまでお目にかかったことのないやさしい笑みが浮かんでいる。
副長のはどれだけほれた女性にたいしてでも、子宮內膜異位症 こんなにやさしい笑みをみせることはないだろうっていうくらいのやさしくあたたかい笑みである。
そして、相棒である。
があった瞬間、いつものような「ふふふんっ」っていう鼻鳴らしの塩対応ではなく、どことなくやさしげな感じに口吻がゆるんだ、気がする。
「暗示にかけていたり、だましていた何名かには真実を告げて謝罪をした。会津中将、それから永倉先生と原田先生。永倉先生と原田先生には、こいつが告げた。それから、おれは丹波で沖田先生や藤堂先生に」
深更、会津侯と別れる際にハグされた。いまの俊冬の説明で、会津侯がそのときにささやいた言葉の意味が理解できた。
それを思えば、永倉と原田と二度目の別れの際、かれらの様子がおかしかったことが思いおこされた。そのときには、かれらも別れじたいに平静でいられないんだって思いこんでいた。
だがしかし、その直前に俊春から真実をきかされ、かれらも混乱していたのかもしれない。
「なぜ、このタイミングで正体と真実を明かしたのか?」
かれは、言葉がでないままでいるおれに微笑んできた。
「蝦夷に渡ったら、本格的な戦闘になってゆく。うしろめたさや心配事を抱えているままでは、おれたちも本来の力を発揮することができない。だから、いまのうちにそれらを解消したかった。そして、なによりも近藤局長との約束があったからだ」
かれは、しばしを天へと向けた。
「肇君。きみに真実を告げ、その上できみや副長を護ってほしい……。近藤局長は、副長や沖田先生とはちがう意味で、きみのことを心配されていたから」
近藤局長が?
なんか涙がでてきた。
「おれたちは、さっきもいったとおり究極の兵器だ。現代に存在するいかなる兵器をも凌駕する、人類の最高傑作といっていい。実際、おれたちは科学者たちが想定していたよりもはるかにうわまわる成果をあげている。とくに中東では、きみもしっている人物を精神的に追い詰め、結果的に破滅させた。それ以外でも、「9.11」以上のテロ活動をいくつも阻止している。軍事規模でいえば、北朝鮮や中国やロシアといった国の基地や施設をいくつも消滅させた。こいつとおれ、二人っきりでだ。きみになら、おれがいまいったことを理解できるよね?」
理解したくても、想像の斜め上をいきすぎていて正直できそうにない。
「いやいや。正直なところ、なにがなにやらさっぱりわからねぇが、兎に角すごいってことはなんとなく理解できた。おめぇらなにか?土方の餓鬼ってわけか?」
「おれの餓鬼ぃぃぃぃぃぃっ?」
「副長の餓鬼ぃぃぃぃぃぃっ?」
突然、割り込んできた松本の問いに、俊冬と俊春と相棒とおれをのぞく全員が叫んだ。
「たしかに、たまは副長にそっくりであるが……」
「たまにいたっては、みてくれだけでなくも似ているな」
「さよう。頬の傷さえなければ、どちらが副長なのかと問われても、わからぬやもしれぬ」
斎藤、蟻通、尾関が二人をみくらべている。
「厳密には、副長の子どもとはちがいます。広義にいえば、そうかもしれませんが。まぁ血ではなく、副長のなかにある「もと」を継いでいると表現すればいいでしょうか」
現代でも「遺伝子操作で生まれた」のメカニズムについて、説明するのはむずかしいだろう。それでも、実際に遺伝子操作でつくられているものはあるし、創作の世界でも題材にしているものがある。だから、おおくの人が「遺伝子操作」じたいの存在はしっている。
しかし、その存在どころか「遺伝子」がなにかもわからないこの時代の人に、それを理解してもらうのはまず不可能であろう。
たとえ有能な医師である松本でも、それこそ空想や妄想をこえる内容を理解しろといわれても、土台無茶な話かもしれない。
「おかしいのではなかろうか?」
現代っ子バイリンガル野村が、冷静にいった。
「副長の「もと」を継いでいる?それがぽちたま?どこをどう間違ったら、かようにスペシャルでエクセレントな