「伊東が動きます」
斉藤は目を瞑って言った。
はい?
何を言ってるの?
美海は目を見開いた。
「ほぅ」
土方はニヤリと笑う。
「近藤を暗殺すると」
「やっぱり来たか」
「えぇ!?」
美海は立ち上がった。
「うるさい」
土方に一喝入れられる。
美海はシュン…と再び座った。【香港植髮價錢】小心平價陷阱! | 方格子
「土方さん。どういうことです?」
「斉藤くんは、伊東の所に密偵として送り込んだんだ」
「な!なんで言ってくれなかったんですか!」
「お前らに言ったら妙な動きするだろ。とりあえず斉藤くん。密偵は終了だ」
「はい」
斉藤は頭を下げた。
「え?じゃあ…」
「これからはこっちに戻る」
斉藤のかわりに土方が答えた。
「やった!!」
美海は斉藤に飛び付いた。
斉藤も照れたように笑っている。
また戻ってくるんだ…!
顔のニヤけが止まらない。
「ということなんです」
美海は部屋に戻ると先程の話を沖田にした。
「へぇ…。斉藤さんは密偵だったと」
沖田は心底驚いている。
「はい!」
美海はにっこり笑った。
嬉しそう。私もかなり嬉しいけど。
「藤堂さんはどうしてますかね?」
「藤堂さんはあっちでも元気がないらしいです…。原田さんと永倉さんといないからかな?」
「そうですかぁ…」
藤堂さんは帰ってこないのかな?
それだけが気がかりだ。
「じゃあ注射打ちますからね」
美海は注射を用意する。
初めは沖田も針にびっくりしていたのだが、今は慣れたようでスッと腕を出してくる。
黙って静かに受ける。
沖田にとってはこんな細い針、痛くも痒くもない。
「よし。耳聞こえてますか?」
「大丈夫です」
ストレプトマイシンを打つと副作用が起こる可能性が極めて高い。
だが治ると再発の可能性は5%未満だ。ここは何としてでも治したい。
“近藤を暗殺すると”
「美海さん」
「はい?」
「ただ事じゃ済まなくなりそうですね」
「………どうかなぁ」
美海は苦笑いして首を傾げた。
美海もそう思うが、否定しておきたい。
沖田の言う通り、本当にこれはただ事じゃ済まなくなる。
ガラッ
「美海くん!何本かできたぞ!」
「松本先生!」
箱を持っている。おそらく中にストレプトマイシンが入っているだろう。
松本には薬の作り方と注射の説明をした。
やっぱり彼も一流の医者なため、直ぐに理解してくれた。
コツコツと作っていってくれている。
松本は今大阪城にいるため、遠い。沢山溜めてから持ってきてくれる。
「ありがとうございます!」
「いやいや!」
こんな薬がこの時代に出来て公に出回るとパニックを起こすため、こっそりとやっている。
「あ。そういえば、美海くんを門前で呼んでる人がいたんだが、入れてもらえないようだ」
「どんな人ですか?」
今日誰かが訪ねてくる予定はない。
「なんかよくわからんが海…海援隊?かなんかの…」
松本がそう言っている間に美海は立ち上がった。
龍馬さん!
私を訪ねてくる海援隊なんて龍馬さんぐらいだ!
「知り合い?」
松本は沖田に聞いた。
「さぁ?」
沖田も首を傾げた。
美海は急いで外に出た。
だが知ってる顔は見当たらない。
あれ?帰った?
なんだ。
美海は再び背を向けて屯所へ足を運んだ。
「た…立花美海!」
名前を叫ばれ、美海は後ろを振り向く。
そこには肩を震わすまだ若い男がいた。
誰?
美海は自分を指さして首を傾げた。
相手もうんうん。と頷いている。
私なんかしたっけ?
「あのー…海援隊の方ですか?」
「そうだ。坂本先生が…立花美海に会いたいと…」
「……?わかりました」
よくわからないまま美海はついていった。
あの人は今いったいどこにいるのだろう。
お龍さんと喧嘩でもしたのかな?
龍馬さんから私を呼ぶなんて今までになかったな。なんか嬉しい。
移動中海援隊の若い男は全く喋らない。
そりゃそうか。坂本龍馬を追い回してる新撰組だからな。