先日、母が亡くなった。

この世的に見たらとても数奇な人生を生きた人で、特に晩年は絶望の中にいたようだった。

身体を動かすこともままならない状態だったので、本当にお疲れ様でした、という気持ちで見送った。

 

そんな中、起きた気づき。

それは、母の人生というものは跡形もなく消え去り、もうどこを探してもないんだな、ということ。

 

それはまるで、さわれもしない、取り出すことも出来ない、夢の中で起きたことと同じだな…と。

ああ、何もないんだな…と。

 

もちろん記憶を使えば、母との思い出は色々出てくるけれど、その記憶自体が実体のないもの。

 

もちろん、"私の人生"なんていうものも、本当はなくて。

その瞬間瞬間の"経験"があるだけで、何一つ持ち運べるものはない。

経験を所有し、持ち運び、人生に仕立て上げているのは、これまた実体のない私。

 

たった今起きていること以外、何ひとつ実体がない。

そのたった今起こっている経験すらも、瞬間瞬間、跡形もなく消え去っていく。

 

この世界は夢や幻想である…。

そんな直接的な理解が起きた感じだった。

 

なんにもない。

その感覚を体感したとき、涙があふれたけれど、涙の理由を探すのはやめておいた。

 

母よ、あなたからたくさんの愛や学びや気づきをもらいました。

本当にありがとうございました。