かもめ食堂をみて | アジアご飯、とくにマレーシアご飯、時々つぶやき

アジアご飯、とくにマレーシアご飯、時々つぶやき

2005年から2009年までの4年間、常夏のマレーシアで暮らしていました。2年過ぎた今でも、日本食は「ハレ」の料理でちょっぴりよそよそしく、アジア飯のほうが「ケ=日常」のご飯で、ホッとします。私にとっての食とは、味わいながら、みんなとつながることです。

フィンランドの街にある日本の食堂「かもめ食堂」。淡い水色で塗られた木製の壁、オフホワイトのテーブル席、レトロなコーヒーメーカーなど、北欧の街にぴったりマッチするインテリアで飾られた店内では、「カフェルアック!」というおまじないをしたコーヒーや、焼き立てのシナモンロールが出てきて…。

 

というような内容の映画「かもめ食堂」を見た。予想どおり、おいしそうな料理がいっぱい出てきて、ほっかほかの気分になった。なんといっても、かもめ食堂のインテリアがかわいい。マレーシアでは、赤提灯や凧などの純和風なインテリアが日本食レストランの定番だったけど、パステル調の缶詰やステンレスのフライパンなど、フィンランドのかわいい雑貨がてんこもりの食堂。思わず、一見しただけでは日本食屋って分かんないよな~と思ってしまったけど、そんなツッコミはひとまずよそう。

 

でもひとつだけ、ちょっと思った。

 

かもめ食堂の看板メニューは「おにぎり」。ほっと息をしたいときや悲しいことがあったとき、みんなでおにぎりを食べる。でもこのおにぎりの味は、きっと、絶対に、みんな同じじゃない。

 

主人公の小林さとみちゃんが言う。「おにぎりは、唯一お父さんが作ってくれた料理。それがとてもおいしかった」って。だから看板メニューにおにぎりを選んだって。

 

心に残る食べ物や心に沁みる食べ物は、必ず、なにかの思い出と結びついていると思う。めちゃおいしい!なんて感覚は、究極に主観的なものだから、そのおいしさには、必ず個人的な理由があると思う。

 

だからフィンランドで、その思い出のあるおにぎりをフィンランド人にぶつけてみるのは勇気のある行動だとは思うけど、その味をみんなが感じてくれるかというと、そうじゃないと思う。日本人であれば、ある程度おにぎりに対する思いはあると思う。でもフィンランド人にとってのおにぎりは、きっとポテトやサーモンなんだよ。

 

本当においしいものは国境を超える。と、ときおり実感することがあるけれど、よくよく考えてみると「これ、おいしいんだよ~」と紹介してくれた人が仲良しだったり、料理を作ってくれた人の顔が見えるときに起こりやすい。そのときのわたしの気持ちを翻訳するならば、「あ~、この人は、こういう味をおいしいって言うんだ、なるほど」みたいな、共感的おいしさだと思う。

 

マレーシアでたっくさんのおにぎりを食べて、そのときはおいしいって思っていたけど、日本に帰ってくると、日本で食べるおにぎりがやっぱりおいしくて、おいしくて仕方がない。それは気候、具、お米の種類など、いろんなものが関係しているから当たり前のことなんだけど、マレーシアで本気でおいしい料理は、やっぱりチキンライスやナシレマなどの現地の食事だと思う。日本食のおいしさは、思い出や故郷の懐かしさなど、日本人としての思いがいっぱいこもったおいしさだったんだね。

 

「おいしい」っていろいろあるんだなぁと改めて実感。

といっても、かもめ食堂がおいしい映画であることはまちがいありません。

 

おまけ:先日、五目寿司に初挑戦してみました。


体と心をつなぐ食、ときどき、つぶやき