馳星周『不夜城』ネタバレ感想 | 好奇心の権化、アクティブに生きたい。

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なるべくお金をかけずに日常と本を絡めてみる

※本題の前に
先日カクヨムのマイページを確認したところ、『ルザマン』をほぼ一気読みして下さった方がいらっしゃいました。
ここのプロフィールからのアクセスか、カクヨムで偶然見付けて下さったのかはわかりませんが、大変嬉しかったです。
見ていらっしゃるかわかりませんが、ありがとうございます。

あと、たまにエゴサするんですが、昔の作品の感想が忘れた頃に増えてます。
私にとってはすでに過去のコンテンツであり、もはや半分黒歴史でもあるんですけど(制作に協力してくれた人には感謝してますが)やっぱり嬉しいです。
こちらのリンクは流石に張りませんが、お見かけの際は何か感じていただけると幸いです。

このブログから読める自作品が『ルザマン』しかない状態で申し訳ありません。
現在は別の場所で作品を連載中です。こちらもその内にリンクを張るつもりなので、よろしくお願いします。

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【注意】
一個人が好き勝手に書いてます。

なおネタバレ全開です。
これから読む予定のある人の閲覧はお控え下さいますようお願いします。

あらすじは前回の記事をご覧下さい。





崔虎が好きです。
(大胆な告白かな)


こういう狂犬キャラ、好きやなぁ。
端的に言ってやべーやつ。

一見すると楽しそうに話してるのに、次の瞬間には手とか足とか飛んでくるかもしれない雰囲気がたまらないというか。
それでいてちょっと気だるげな喋り方なのがまたいいというか。

現実では絶対に関わり合いになりたくないタイプですけどね。



勢力の構図は、台湾vs上海vs北京というところでしょうか。
(健一は一応台湾勢ですが、日本人との混血であるせいと台湾のトップ・楊偉民から見放されてるせいで、事実上どこにも属してません)


私は中国文化には全く明るくありませんが、上海と北京って仲悪かったんですね。

ちらっと調べてみたところ、どうやら上海人が一方的に北京人を田舎者だと馬鹿にしてるみたいです。
北京人にもそういうところはあるけど、上海の比じゃないという意見も目にしました。

だから、上海人は中国の中でも嫌われてるのだとか…

上海人は気質が京都人と同じなのかもしれませんね。


ただ上海は本当に都会で、遊ぶところもたくさんあるそうです。

はっきり言って京都にあるものは大抵滋賀にもあるので、京都が都会ぶってるのを見るとすごく違和感を覚えます。
私にとって京都は大阪行く為の中継点でしかないんでね。



…本の感想記事で書くことじゃないですね。
大変、失礼しました。



健一が華聖宮の婆さんから拳銃と弾丸をぼったくられそうになった時、婆さんの夫が彼女に
「わしらは世間様に胸を張れるような商売をしている訳ではない。分をわきまえんと天罰が下るぞ」
と怒鳴るシーンがあるのですが、その少し後で思わず声出して笑いました。

拳銃は安く、弾丸はなんと無料で譲らせてくれた寺院の爺様だったのですが、こっそり健一に耳打ちします。
「頼みがあるんだが……値引きした弾丸の分、八万でどうかな?」

かっこよく決めたと思ったのに、自分のお小遣いが欲しかっただけ!笑

そりゃあね…婆さんの懐に入るぐらいなら自分のものにするか。



この物語は基本的に利己的な登場人物ばかりで構成されてます。


主人公の健一も例に漏れず。
裏切られた分、裏切ってます。

だからこそ同じように裏切りを重ねて生きている夏美に親近感を抱きます。
そこには確かに愛があったように思えました。


夏美の方も最初は演技だったかもしれないけど、最後には健一を愛していたと思います。

けど、裏切りで繋がった絆は、やっぱり裏切りで終わるしかなかったのでしょうね。



二人に絆が芽生えたのはそれだけじゃなく、お互いに混血だったというのもあるかもしれません。


正直、混血同士ってだけなら絆は芽生えないと思います。

作中にもありましたが、大事なのは自分を何人だと思うかにあるから。

台湾人になりたかった健一と、自分は日本人であると確信したかった夏美。
なりたかった人種は違えど、自分はどちらかでしかないと主張したい気持ちは共通していました。

夏美の言うことにどこまで信憑性があるかは、最後まで疑問が残りはしたものの…
(私だけでしょうか)


これに関して、痛いほど…ではないけど、気持ちはわかる気がします。

というのも、一昨年、親戚に日本ではないアジア系(私が…というか、まともな日本人ならまず嫌ってる国)の人がいるのを知って。
もしかして私は完璧な日本人じゃないのか?って思い悩むことがあったんです。

結果として私は胸を張って日本人だといえる存在なんですけど、当時その悩みを二人にこぼしたことがあって。
一人はネットで知り合った顔も知らない人だったんですけど、

「まあ日本人にも嫌な人はいますからねぇ。ボクは差別しませんよ」

みたいなことを言われたんです。

びっくりしました。
今まで対等に接してきた相手を、いきなり上から目線で「お前は日本人じゃない」呼ばわりできるんだなって。

もう関わることもない人だからどうでもいいといえばどうでもいいんですが…


でもそういう嫌な思いを経たからこそ、生粋の日本人(だと信じてる人)の抱く傲慢さみたいなものを知った気がしました。

本作の混血の人たちのように二つの国の板挟みに遭ってる人には、私たちの想像に及ばない苦労があるのかもしれませんね。


ちなみに私が当時の悩みを話したもう一人というのが、家族みたいな関係の人なんですけど、この人にもなかなかキツイ一言言われてます。
もし私が典型的な女だったら縁切ってたでしょうね。


(念の為に言いますが、当該の親戚の方には一度大変お世話になってます。その国の人だからという理由で私が敵意を持つことはありません)



世界の中では国同士で、国の中では東と西で、一部の愚か者が男と女で、若者と老人で…
人ってくだらないことですぐに争いたがる、本当にしょうもない生き物だと思います。

でも同郷同性同年代にも敵はいるように、逆もまた然り。

ハッピーエンドではない本作にも、立場を超えた信頼はあったのじゃないかな…そう思いたいです。



なんだか本作を読んでる間、色々と考えさせられてしまいました。

色々と脱線もしましたが、これも考えてしまった結果ということで…



とりあえず、崔虎が好きです。
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以上、『不夜城』ネタバレ感想でした。