フードアナリストが語る「私が絶対摂らない食品添加物」 9種類の実名は?



デイリー新潮 2022年05月06日 10時56分


スーパーなどの棚に並ぶ、多種多様な加工食品。それらの多くに「食品添加物」が含まれていることは知っていても、避け方まで把握している人は少ないだろう。一体、「専門家」は何を避けているのか。予防医学指導士でフードアナリストの若尾洋祐氏による解説。

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 生まれた時から、スマホなどインターネット環境があった人たちのことを「デジタルネイティブ」と呼びますよね? 僕は、生まれた時からコンビニが身近にあった人たちのことを「コンビニネイティブ」と呼んでいます。コンビニが24時間営業を始めたのは1970年代半ばなので、それ以降に生まれた人、特に40代以下の人が「コンビニネイティブ」だといえるかもしれません。コンビニの存在と便利さを「当たり前」のものと考えている世代です。

 コンビニに行けば、見栄えが良くて保存が利き、安価な食料品がたくさん並んでいます。それを可能にしているのが、食品添加物です。その意味で、コンビニには買っても大丈夫なものはほとんどない、と僕は考えています。コンビニで買ってもいいのは水とビールくらいでしょうか。発泡酒や缶チューハイは食品添加物まみれですからね。ただし、コンビニネイティブの人に「コンビニで物を買うな」と言ったら、え?となるでしょう。僕としても「食べるな買うな」と言うつもりは全くありません。大切なのは、自分が食べているのがどういうものなのかを「知る」ということなのではないでしょうか。

〈そう語るのは、予防医学指導士で1級フードアナリストの若尾洋祐氏。元々は繊維業界で生地のデザインなどをしていたが、その後、「食の世界」に飛び込んだという異色の経歴の持ち主である。現在は「Zoom」なども用いて食と健康に関するセミナーを定期的に催している。〉


食品添加物はメーカーの都合

 あなたはスーパーで買い物をする時に何を気にしていますか? 価格や量や新鮮さ、といったところでしょうか。多くのスーパーでは、野菜や肉などの生鮮食品は店の壁側に配置されています。僕がスーパーで気にしてほしいと思っているのは、主に店の中心側の棚に並んでいる加工食品です。その代表格であるインスタント食品には間違いなく食品添加物がたっぷり入っています。

 では、そうした加工食品にはなぜ食品添加物が使われているのか。理由はいくつも考えられますが、食品添加物を入れることで「低コスト・大量生産」が可能になり、日持ちするので長く販売できる。いずれも食品メーカーの都合であり、それを食べる私たちのためではない、ということは知っておいても損はないでしょう。だからといって食品添加物のことを全て知ろう、といった欲張った考えは持たない方がいいと思います。何がどう問題なのか、ということだけを知り、「知っておいた方がお得」という感覚を持つのが大事だと思います。


避けた方がいい9種類の食品添加物

 確かに、食品添加物まみれの加工食品を食べ続けたとしても、すぐに病気になるわけではありません。だからこそ、あまり気にせずにコンビニやスーパーの加工食品を食べている人が多いのでしょうが、10年後、20年後も「体に何の影響もない」と断言できる人はいないはずです。であれば、それらを「避ける方法」を知っておいてもいいのではないでしょうか。

 かくいう僕も、かつては食品添加物など全く気にせず、カップ麺やファストフード、スナック菓子をパクパク食べていました。しかし、今ではその手の商品はほとんど食べません。「自分や家族が食べる物」に意識を向けるのであれば、まず、商品裏面にある原材料表示を確認してから買い物をすることが大切です。そこに表示されている一つ一つの成分名が理解できなくても、他の商品と比較して、訳の分からないカタカナ表記が少ない方を選択する、というだけでも意味があると思います。僕の場合は、原材料に「たん白加水分解物」と「果糖ブドウ糖液糖」が入っているものは絶対に買わない、というルールを決めるところから始めました。僕は、これらを含む9種の「食品添加物」は避けた方がいいのではないか、と考えています。以下、順を追って説明していきます。



「気持ち悪い」

1 たん白加水分解物

 動物性や植物性のたん白質を塩酸などで分解して作られるもので、ありとあらゆる加工食品に入っています。これにL−グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料)と風味を加えればどんな味でも再現できる、といわれています。しかも、食品添加物ではなく「食品」の扱いとなっているので、使用量にも限度がありません。

 気になるのは、作られる過程で発がん性物質が発生する、という指摘が出ていること。あとは単純に、豚の皮なのか骨なのか、何から抽出されたものなのかが分からないから「気持ち悪い」。これを避けるようにすると、ほとんどの加工食品が買えなくなります。


2 果糖ブドウ糖液糖

 甘いお菓子や飲み物の多くに入っている「魔法のシロップ」です。めんつゆや果実酢などに入っていることもあります。たん白加水分解物と同様、これと香料と水と色素さえあれば、どんな色の、どんな味のジュースだってできてしまいます。

 原料は主にトウモロコシ。そのほとんどが遺伝子組み換えトウモロコシであるのは明らかです。英語ではハイフルクトースコーンシロップ(HFCS)と言います。フルクトースとは果糖のことですから、果糖が多く含まれたコーンシロップということになります。ブドウ糖の方が混合比率が高い場合、ブドウ糖果糖液糖となります。体内でエネルギーとして使われない果糖は中性脂肪に変化して肝臓に溜まっていきます。体に良いはずがありません。


トランス脂肪酸と人工甘味料

3 マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング

 全て「トランス脂肪酸」を含む油脂で、主に植物油等に水素を添加して固めたものです。食品添加物ではなく食品扱いで、菓子パンやお菓子などに含まれています。心臓疾患をはじめとするさまざまな病気との関係が指摘されているトランス脂肪酸については、アメリカや台湾、カナダなどでは事実上使用禁止となっています。一方、日本は野放しのままです。


4 人工甘味料

 種類としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなど。人工甘味料の中には摂っても問題ない、と言われているものもありますが、僕はそれらも含めて入っている商品は一切買いません。


ほとんどインチキ

5 加工デンプン

 加工デンプンという表記の他に、「増粘剤」「糊料」「安定剤」「ゲル化剤」「乳化剤」と表記されたものに入っていることも多いです。

 かまぼこやカニカマなどの練り物に入っていることが多いのですが、商品裏面の表示を見ただけでは分からない場合もあります。かまぼこなどの製造業者はタラなどのすり身を仕入れて使っています。そのすり身を作る際に使われた加工デンプンやリン酸塩は表示しなくてもよいので「魚肉」とだけ表記されます。それが「キャリーオーバー」という変なルールです。「無添加」などと書かれた千円以下のかまぼこに使用されているすり身には、加工デンプンなどが使われていると思って間違いないでしょう。それで「無添加」とは、ほとんどインチキですよ。だから僕はスーパーで売っているような練り物は買わないようにしています。


130人が死亡

6 リン酸塩/リン酸ナトリウム

 この添加物も練り物や加工肉に入っていることが多いです。安いソーセージやハムには必ず入っています。僕はそういった加工肉はスーパーでは買わず、信用できる個人店で購入するようにしています。

 リンは僕らの体に必要な物質ですが、野菜や肉を食べていれば十分に摂れる。リン酸塩などが入っているものを頻繁に食べていると体内のリンが過剰となり、腎臓をやられます。

 ちなみに1955年に起こり、130人のお子さんが亡くなった「森永ヒ素入り粉ミルク事件」の原因はリン酸塩類でした。凝固剤として使用したリン酸塩類が純度の低い安価なもので、多量のヒ素が含まれていたのです。


7 イーストフード

 パン生地の発酵に欠かせないイースト菌の発酵を促すためのもので、文字通りイースト菌のエサということでイーストフード。イースト菌がそれを「食べる」ことで活動が活発になり、パンが早く膨らむわけです。以前、パン屋を経営している友達に、“イーストフード使ってるか?”と聞いたことがあります。すると、“使ってるわけねえじゃん”と。“なんでアレを使うの?”と聞いたら“工場の機械のため。発酵の工程が早く済めば、それだけ機械に対する負担が軽減される”と。消費者側から見ればどうでもいい事情で使われているわけです。


隠してしまおう、という意図

8 調味料(アミノ酸等)

 言わずと知れた「食品添加物の王様」。「L−グルタミン酸ナトリウム」などがひとまとめにされていますが、ほとんどがいわゆる「うま味調味料」でしょう。僕が子供のころは塩などと一緒に食卓に置いてあり、何にでもかけていました。ところが、ある時期、アメリカのニューヨークにある中華街で食事をすると体調が悪くなる、と訴える人が相次いで、MSG(グルタミン酸ナトリウム)が原因ではないか、との声が出てきた。そこからMSG排除運動が始まったのですが、いつの間にか日本では表記がL−グルタミン酸ナトリウムからアミノ酸に変わってしまった。それが今では「調味料(アミノ酸等)」。アメリカなどでグルタミン酸ナトリウムの評判が悪くなってしまったので隠してしまおう、という意図を感じます。


9 カラメル色素

 おいしそうな茶色い色をした加工食品や調味料、お菓子や発泡酒などに使われている着色料です。安すぎる醤油モドキや「三温糖」という茶色の砂糖に使われていることもあります。発がん性あり、と一部ではいわれています。


精製塩に要注意

〈若尾氏はこうした「食品添加物」だけではなく、「塩」と「砂糖」にも注意を払うべきだと忠告する。〉

 精製された塩と砂糖が生活習慣病の元凶であることは疑いようがないでしょう。ただ、テレビに出てくるような偉い先生でも、「塩分を減らしましょう」としか言いません。そうではなく、本来は「精製塩を減らしましょう」と言わなければならないのです。精製塩とは、「塩化ナトリウム」の純度が99.5%以上の塩のことを指します。精製塩=塩化ナトリウムを摂るとなぜ体に良くないかというと、カルシウムやカリウムといった体内で必要なミネラルが、塩化ナトリウムを処理するために消費されてしまうからです。だから、多くのミネラルが含まれた天然の塩と精製塩は分けて語るべきなのに、そういう区別が全くされていないのは問題だと思います。僕は天然塩を使う分には問題ないと考えていますので、それほど使用量を気にせず使っています。

 一方の砂糖については、黒砂糖であれてんさい糖であれ、砂糖は砂糖。なるべく摂らないようにする方がいいと考えています。


途中で一気に「ゼロ」になる?

 食品添加物や精製塩や砂糖をなるべく摂らないために僕が気を付けているのは、ごく単純なことです。できるだけ自宅で調理したものを食べる。外食することもありますが、チェーン店やファミレス、ファストフード店は行きません。そういうお店では天然の塩なんてまず使っていません。使っているとしたら「どこそこの塩を使っています」と必ず謳うものです。だから外食をするにしても、個人でやっているようなお店にしか行きません。

 もちろん食品添加物などについて気にするも気にしないも自由。でも僕は、どうせ食べるのなら、なるべく何が入っているのか分かっているものを、自分で調理して食べた方がいいんじゃないですか、という話をしています。少しのことを気にするだけで、10年後は「大きな差」になっているかもしれませんよ、と。

 一度に全てを変える必要はありません。例えば、月曜日から金曜日まで毎日コンビニ弁当を食べている人で、少しでも食生活を見直そうとしているなら、まずは週に4日にするとか、代わりに定食屋に行くところから始める。そこから徐々にコンビニ弁当を食べる頻度を減らしていくと、なだらかに「ゼロ」になるのではなく、途中で一気に「ゼロ」になるはずですよ。ある時に「コンビニ弁当はもう食べなくていいな」と感じ、いきなりゼロになると思います。



若尾洋祐(わかおようすけ)
予防医学指導士・1級フードアナリスト。1961年生まれ。愛知県犬山市出身。繊維メーカーでテキスタイルデザイナーとして勤務した後に独立。予防医学指導士、1級フードアナリストとして食と健康のセミナーを開催している。著書に『食品添加物 これが貴方の体をボロボロにしている!』『小学5年生でもわかる!! 食と健康のはなし 1』など。


「週刊新潮」2022年3月24日号 掲載