何でもできる役なので縄を結ぶ猛練習も……
役の気持ちや行動を考えるのは楽しいです

 

――杏樹と自分が重なるところはありました?

「どうだろう? 私も性格は『サバサバしている』と言われるので、男勝りなところは似てるのかな? (男性の)俳優さんに負けたくないと思っています。男性にしかできないお芝居もたくさんありますけど、『そしたら、こっちは女性にしかできないお芝居を見せてやろうじゃないの!』みたいな……。なんて、自分は全然新人なんですけど()」。

――そういう心意気はあると。

「そうですね。頑張らなきゃと思います」。

――クールでもあるんですか?

「クールではないです。たぶん。そこは監督さんに『ドスを効かせて』と言われて『ドスって何だ?』と思いましたけど()、自分の出せる一番低い声でしゃべったり、目力を意識してみたりしました。でも、あまりねちっこく意地悪な感じにはしないように……というのも気をつけました」。

――そう聞くと、意外と難しい役ですね。

「そうなんです。あとは内面的に、杏樹はせっかちだから、できないことの多い2人にイライラするところもありますけど、芦屋のお嬢様ということで逆になめられてきたと思うんです。『どうせお嬢様だし』みたいに……。それで1人でいろいろ努力して何でもできるようになったんじゃないかと思います。私の想像ですけど。そんな杏樹からすれば、『みんなで頑張ろう』という2人がちょっとうらやましいんじゃないかと思ったりもします」。

――なるほど。何でもできる役を演じる大変さもあります?

「たとえば縄を結ぶ訓練をするシーンでも、杏樹は1人だけ早く終わるので、縄を結ぶ練習はずっとしてました。別にスピード勝負をする場面ではないですけど、一応本当にできるようにしとかなきゃと思って、6種類の結び方を3分間で全部できるようになりました」。

 

 

――おーっ。すごい。

「結び方は現場で教わって、何日か後にそのシーンの撮影で、それまで猛練習でしたね。休憩時間中にもやっていたし、家にも持ち帰って練習しました」。

――たぶん、そんなに尺のある場面ではないんでしょうけど。

「そんなに映ってないと思います。でも、うまくできることは必要だと思って……」。

 

――そういうディテールは大事ですよね。さらに、杏樹は強気な性格でもあるようで。

「強気で威圧感満載です()。『言われたら絶対ムカつくだろうな』という台詞もいっぱいあって、まず主人公たちを『あんた』と言いますから()。『あんたさぁ』みたいな感じで……。それで意地悪な感じにしないのも難しくて、練習しました」。

――初ドラマで悩むことはなかったですか?

「考えることはたくさんありましたけど、それが楽しかったです。撮影前に『ここは杏樹だったら、どう動くかな?』とか『どんなふうに思ったかな?』とか、1人でいろいろ想像するのが好きなので。『カメラにこう映っているから、杏樹はこの角度で、こういう仕草をしよう』とかも考えたりしましたね」。

――女優に向いてそうですね。美思さん自身は海や船は好きですか?

「実は泳げないんですよ()。1mも。体も浮きません。学校のプールの授業ではビート板を使って1人で練習してました。海も遠くから眺めていることが多いですね。でも、海は好きです。船はこのドラマの撮影で乗ったのが初めてで、とっても大きくて新鮮でした」。

 

――合間の時間に船内を見て回ったりも?

「しました。操縦席が面白かったです。『この舵を回すと本当に船が動くんだな』と思うと、ちょっと手が震えてきました()」。

 

――「あんた」呼ばわりしていた主人公の1人の飯豊まりえさんは、事務所の先輩なんですよね。

「はい。何度かお会いしたことはあったんですけど、しっかりご一緒するのは初めてで、緊張しました。でも、すごく気さくに話し掛けてくださって……。自分の撮影がオフの日に現場を見学させていただいてたら、飯豊さんが早く終わって『ごはんに行こうよ』と誘ってくれました。一緒に本屋さんにも寄って、楽しかったです」。