湊かなえ原作『少女』で共演!本田翼×山本美月 笑顔を封印してみせた新境地
10代の日々を冷静に振り返れる「適齢期」に

 学校では誰ともつるまず、何を考えているかもつかめないミステリアスな由紀を演じるのは本田翼。由紀とは幼馴染で、陰湿ないじめを受けた経験から自殺を考えたこともある敦子を山本美月が演じる。

「私は由紀に対して、自分と近いものを感じてました。高校生の時は結構一匹狼だったので。別に孤立しようとしてるわけではないけど、そうなってしまう感じとか、何かを知りたいと思ったら動き出してしまうところにも共感できました」と本田が言えば、山本も「私は、ちょっと人から一目置かれるような役が多いですけど、逆にそっちの方が遠くて。敦子の方が自分に近いです。女子校に通って、仲のいい友だちに対して疑似恋愛みたいに執着していた部分もあるし。周りの目を気にしていた部分もあったし。それは今もなんですけど」と正直に語る。

 本田は今年24歳で、山本は25歳。10代の日々を冷静に振り返れる年齢になったからこそ、不安定に揺れる少女を演じられたのではないだろうか。

「そう思います。客観的に自分の17歳だった頃を思い出せて、それを自分の役に投影できるのは、やっぱり今ならではなのかなと思いますね。17歳という当事者だとできなかった」と本田。「世界の広さを知らないもんね」と相づちを打つ山本も「今回に限っては本当にそうだったと思います」と言う。「本当に17歳だったら、(主人公たちが暮らす)あの世界の狭さは表現できないかもしれない。その空間が全てだと思っちゃってるから。最後の台詞が言えなかったと思います」


「理解してからじゃないとお芝居はやれない」(本田翼)

 本田も山本も十代からモデルの仕事を始め、女性誌やCMでの活躍からブレイク、演技の道へと進んだ。すでにドラマで何度か共演していて気心が知れているのか、1つ質問すると2人で会話しながら答えを返してくる。互いの言葉に耳を傾けつつ、自分の意見も率直に出し合う姿は、重いストーリーを妥協なく映画化した三島有紀子監督の現場を生き抜いた戦友といった感だ。そして、劇中では張りつめたような暗い表情が多かった彼女たちが、今こうして見せる180度違うやわらかな素顔に女優という仕事の真髄を見る思いだ。

 写真撮影でも、映画やドラマの現場でも、的確に演出意図を読み取り、こなしていく彼女たちが、プロとして心がけているものはと尋ねると、まず山本が「監督が言っていることには100で応えたいっていうのはあるかな」と答える。「絶対負けたくないっていう気持ちもあります。今回、特に今まで演じたことのない役柄だったので、これを演じきったら、もっと世界が広がるかもしれない、違う役柄がもっと入ってくるかもしれないという気持ちもありました。監督は結構、無理難題を言うんですけど、『絶対それに応える、意地でも』と思ってました」

 では本田も、無理難題を投げかけられると燃えるタイプなのだろうか? すると「燃えるけど、普通に悩みますよ」と笑いながら答える。「それはつまりどういうことなのかな?と思う時点で、自分の中にないものを提示されてるわけだから、そこをきちんと理解してからじゃないと、私はやりたくないんですよ。お芝居を」とこだわりを見せる。「一回ちゃんと考えたいんです。でも、時間もなくて『すぐやって』という現場だったので、もう本当に体当たりでやってかなきゃいけなかった。そういうところは苦労しましたね。だから、演じてみて、何か違うと感じたら、『もう一回いいですか』と素直に言ったりもしました」


「周りが見えるようになってきたからこその緊張感」(山本美月)


 女優を始めたのは2人とも2011年から。当時を振り返って、本田は「とりあえず怖かった」と言う。「自分の仕事をちゃんとできてるのかどうかもよくわからないまま、とにかくがむしゃらに突っ走ってきたのが落ち着いて、じゃあ、今度は私、何を頑張らなきゃいけないのかと考えたときに、もう本当にたくさんあって」と、次のステップへ進むための課題に目を向ける。

 山本も「最初は本当に自分のことでいっぱいいっぱいだったんですけど、周りが見えるようになってきて。このスタッフさん元気ないなとか、逆に周りが見えるようになってきたからこそ、ちょっと緊張をするようになってきましたね」。それを受けて、本田はこう結んだ。

「そう。お芝居でも頑張らなきゃいけないけど、立ち振る舞い方やスタッフさんへの気配りも考えなきゃいけないですし。どんどん課題が増えていきますね」