シネマトゥディ
『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』
上野樹里&玉木宏
のだめと千秋先輩の関係は、
トランプでいう8流しみたいなもの
■のだめと千秋先輩の成長ぶりに期待
Q:映画版におけるのだめと千秋先輩の見どころは?
玉木:前編に関して言えば、千秋は伝統あるオーケストラ
の常任指揮者を任されることになるんですが、それがもの
すごく駄目なオケで……。千秋はまじめな男なので、必死
になってオケを立て直そうとするんです。でも、それに
よってのだめとの関係にズレが生じ始める。その二つの
上野:そうそう。千秋先輩は必死に頑張っているのに、
のだめはうじうじした恋愛モードに入っていくんです。
恋のライバルも登場しますし。今までは一緒にいることが
多い二人だったけど、今回は一緒にいることが少なく
なるんですね。まあ、のだめは千秋先輩をストーカー
しますけど(笑)。それぞれが自分の時間の使い方を
考えて頑張らなくちゃいけなくなる。そういった物語の
幅も面白いと思います。
Q:のだめと千秋が成長してきているということですね。
玉木:映画版の台本を読んで真っ先に感じられたのが、
二人の成長ですね。パリに行ってから1年以上が過ぎ、
それぞれ日本にいるときとは違う環境の中にいるんです。
上野:のだめはまだ甘えている感じなんですけど、
それでも千秋先輩にずっとべったりしているわけじゃない。
今までは、のだめちゃんという感じだったのが徐々に大人
の女性になりかけているので、その辺りの変化を観て
もらえたらうれしいですね。
■ヨーロッパでのケタ外れな撮影に感激!
Q:ヨーロッパでのロケも話題ですが、映画版ならではの
スケールを感じる撮影はありましたか?
上野:変態の森のシーンとか、クレーンを使って大掛かり
にしたり、細かいところにこだわったりしていました。
「そこに力を使いますか?」っていうくらい(笑)。
あらゆるところに時間をかけて、真剣に作っています。
もちろん、演奏シーンもすごいですよ。
玉木:数々の有名なホールで撮影ができたこともそう
ですが、ホールで撮影をするときなんて、1,000人近い
観客役のエキストラの人たちが毎日のように来てくれ
たんです。それができたのも、たくさんの地元スタッフの
方々が一生懸命手伝ってくれたからだと思います。
上野:毎回ホールの撮影現場の外に、救急車が待機
していたんです。長時間の撮影だったので、倒れる人が
出た時のために。「救急車か……」って、ちょっとびっくり
しましたね(笑)。それくらい大きなことをしているん
だって感じました。
玉木:そこまでのケアをしてもらっている状況がありがた
かったですね。大きなトラブルもなく済んで良かったです。
Q:旅のハプニング的なものはありましたか?
財布を盗まれたキャストもいるようですが……。
上野:わたしたちは何もなかったです。だいぶ長いこと
向こうにいたのに……。
玉木:そうだよね。僕たちの方がむしろハプニングが
起こりうる状況だったと思うんですけど。
まあ、何事もなくて良かったです。
Q:やはり気になるのはのだめと千秋のロマンスの行方
ですが、映画版ではロマンチックなシーンも観られますか?
上野:ロマンチックって!(笑)
玉木:ロマンチックかどうかはわからないですけど、
今までは二人の恋愛模様がきちんと描かれることが
少なかったので……。
上野:今までよりは、生っぽい感じですかね?
玉木:うん、すごく生っぽいし、一人の女性と一人の男性
として描かれている感はあります。僕ら自身、のだめと
千秋の恋愛感情をどっぷり演じるのは初めてでした。
上野:ただ、あまりにも生っぽすぎると、『のだめ』の場合は
逆にがっかりされちゃう。その加減がすごく難しいですね。
玉木:そうなんですよ。ただ、そういった意味では、今までの
テレビシリーズでは観られなかった、初めてのものが
詰まっている映画だと言えます。
■合わないようで相性ぴったりの理由を分析
Q:のだめと千秋の関係をどう思いますか?
玉木:すごくいい関係だと思います。一見釣り合っていない
ように見えて、実はとても釣り合っている。歯車がぴったり
合っている気がします。それぞれがきちんと自分たちの進み
たい方向を見据えているのも、すごく気持ちのいいことだと
思います。
上野:のだめも千秋も身近にはいないキャラクターに
思えますけど、大げさに描かれているだけであって、
皆どこかにのだめ的な要素だったり、千秋的な要素を持って
いたりすると思うんです。それぞれ目指すものがある中で、
恋愛感情を抱き合っている。多くの場合、恋愛感情だけに
陥りがちでドロドロしたりもすると思うんですけど、二人とも
音楽という共通の目標を背負っているから、健康的な関係で
いられるんですよね。
Q:普通の恋人同士は乱闘とかしないですけどね(笑)。
玉木:まあね。そのへんは誇張ということで(笑)。
上野:トランプの大富豪で言う、8流しみたいなものですよ。
玉木:は、8流し?
上野:ごちゃごちゃっとしたものを、1回すべて流しちゃう
というか。のだめも千秋も、意外といろいろなものを背負って
いる人たちだから、まじめに背負うばかりじゃ人生やってられ
ないでしょう? 「飲んじゃえ!」っていうノリと一緒なんです。
玉木:なるほどね。しかも、そういったものを音楽できゅっと
締めていますからね。たとえ8流しをしても、
その後物語としてきちんと再生しているのが「のだめ」
シリーズのすごさだと思います。
Q:最後に、ご覧になる方にメッセージをお願いします。
玉木:今までテレビシリーズで培ったベースがありつつも、
映画版ならではのプラスアルファの要素がいろいろ詰まって
いると思います。奥深さも増していますし、テレビドラマから
映画になった意味を十分感じさせる作品に仕上がっている
と思います。
上野:人間的に成長したのだめと千秋を、今までよりもっと
身近に感じてもらえたらうれしいです。漫画から生まれた
キャラクターですけど、人間が演じているものですし、
二人とも人間だから。きっと共感してもらえたり、感動して
もらえたりすると思います。もちろん、コメディーとして振り