インフレとデフレ | 矯正知力〇.六

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安倍の経済政策の批判のために基本中の基本から書いてみる。

インフレは貨幣価値が下がること、デフレは貨幣価値が上がること。インフレにはいいインフレと悪いインフレがある。いいインフレは経済成長のもとで起こる。需要が拡大し、設備投資が行なわれる。相対的に物不足になるから物価が高くなる。生産が増すことにより、労働者の賃金も増える。賃金が増えると物やサービスをなおさら買い求める、という良循環が起こる。悪いインフレは物価上昇が急で原材料価格・エネルギー価格が高騰することによって製品が高くなり、商品不足になり、ものが売れなくなる。

デフレは貨幣価値が上がるから一見いいようだが、実は需要が少ないので生産が縮小、賃金が切り下げられ、購買力が減少して、需要がさらに少なくなる、という負の循環で経済規模がどんどん小さくなること。インフレにはいいデフレと悪いデフレがあるが、デフレにはいいデフレというものはなく、悪いデフレだけがある。デフレから悪いインフレにはたった一歩踏み出すだけで移行できるが、いいインフレに持って行くのは難しい。


インフレとデフレどちらが貧乏人にとって得か、金持ちにとって得か。

デフレは経済規模の縮小であって、雇用が悪化するから貧乏人にとっては不利だ。しかし、デフレで物価が下がること自体は貧乏人にとってひとつの救いではあった。金持ちにとってもデフレは好ましくはないが、デフレの環境下でも儲け口からあぶれなかった一部の金持ちは貨幣価値が上がることによって実質的に資産を増やしてきた。

いいインフレ、成長インフレはすべての国民にとっていいことである。インフレ期間中、失業者は減るし、労働者の賃金は上がる。賃金上昇と物価上昇はラグがあるので苦しいように見えるときもあるが、長期的には所得が増して暮らし向きはよくなる。金持ちは経済規模の拡大によって労働者よりもっと恩恵に浴する。

悪いインフレにも程度はいろいろあるが一般的に言って、物価は上昇しても、企業活動はそれに見合っただけの拡大をしないので、貧乏人は損をする。貨幣価値が下がれば、モノ、不動産、株を持っている金持ちは損をしない。

銀行に預貯金している貧乏人は確実に損をする。金持ちの預貯金額は多いが、彼らはモノ、不動産、株に代えたり、あるいは海外の投信、外貨建て債権に振り向けることができる。金持ちはインフレで儲かるというわけではないにしろ、損はしない。結果的に格差は広がる。

一番有利なのは金を借りているひとたちである。金を借りている企業は返さなくていい金が増えるので儲かる。最も儲かるのは金を借りて不動産に投資するファンドである。ファンドに投資する金持ちも儲かる。借り手の最大のものは国民から膨大な借金を負っている国である。貨幣価値が半分になれば国の借金は半分に減るわけである。インフレは国の財政破綻を避ける最後の手段だというひともいる。

 

 

私も経済について一から書き起こすほど物知りではないので、ネットから拾ってサマライズして書いて見る。文章はそのままではなく勝手に切り貼りしているので原文を知りたければあくまでURL参照。文責は私ということで。

安倍の提言の初出
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPTYE8A507K20121107
政府・日銀間で政策協定(アコード)を結び、インフレターゲットを導入する考えを示し、政策目標を達成できなければ、日銀および日銀総裁には責任を求める考えも表明。インフレターゲット設定などができなければ、日銀法改正も視野に入れる考えを示した。




白川・日銀総裁:安倍氏に反論 金融環境「既に緩和」2012年11月21日http://mainichi.jp/area/news/20121121ddn001020003000c.html

白川総裁は物価目標について、80年代後半のバブル期でも消費者物価の上昇率が3%に達したことがないことを踏まえ、「3%は現実的でない。今まで経験のない物価上昇率を掲げ、政策を総動員すると長期金利が上昇し、財政再建にも実体経済にも悪影響が出る」と指摘。さらに「国民が望むのは単なる物価上昇ではなく、雇用や賃金が増加し、緩やかに物価が改善する状態」と述べた。

安倍氏は20日夜、フェイスブック上で、建設国債の日銀引き受けについて「直接買い取るとは言っていない」とし、市場を通じた国債の買い取りが発言の真意だったと指摘。
(#3安倍はフェイスブックが好きだが、これは閉鎖SNSのひとつに過ぎない。新聞に誤報が出たら、新聞社に抗議するのが当たり前だろうが by タラリ)

 

 

安倍政権誕生なら日本経済は本当に復活できるか?
金融政策で対立する“リフレ派”と“改革派”の長短
http://diamond.jp/articles/-/28460

安倍氏の発言要旨を分析すると、主に2つの経済政策がある。1つは10年間で200兆円に上る大規模な公共投資を実施することであり、もう1つは日銀に対して、さらに積極的な金融緩和策の実施を要請することである。

デフレ脱却・経済再建の政策に関しては、大きく分けて2つの考え方がある。1つは、日銀が通貨供給量を大幅に増加させることで、政策的にインフレを起こす考え方だ。これが“リフレーション派”(リフレ派)と呼ばれる。

それに対して2つ目は、日銀がいくらお金を供給しても、企業や国民がお金を使わなければ、デフレから抜け出すことは難しいという主張だ。構造改革などによってわが国経済の基礎体力を回復させることの方が重要と考える。そうした考え方を“改革派”と呼ぶことにする。

“リフレ派”の考え方では、インフレやデフレは基本的に貨幣的な経済現象であるから、中央銀行が積極的にお金を供給し続ければデフレから脱却できると主張する。それと同時に、円資金を大幅に供給することによって、円高傾向に歯止めをかけることが可能になると見ている。

一方“改革派”は、日銀がお金を供給しても、企業や国民が将来の不安などによってお金を使わなければ、お金はうまく回らないと考える。お金がうまく回らないと、デフレから脱却することは難しい。

?さらに為替市場の円高傾向についても、わが国の金融政策のみによってそのトレンドを変えることは難しいと見る。たとえば、円・ドルレートについても、米国という相手があるため、米国の経済状況・資金供給量などの要因が重要と主張する。

しかし、欧米諸国が大規模な不動産バブルの後始末=バランスシート調整の最中にある現在、かつてのような「貨幣供給を増やせば全てが解決する」という単純なリフレ万能論は陰を潜めている。

その背景には、米国のFRB、欧州のECB共に必死に金融緩和策を実施しているにもかかわらず、今までのところ、期待されたような効果が顕在化していないことがある。

また、積極的な金融緩和策を続けることでデフレから脱却し、インフレ状態になったとき、今度はそのインフレ率を都合の良い水準に止めることが難しくなる。悪性のハイパーインフレの怖さは、第一次世界大戦後のドイツの例を見ても明らかだ。

さらにもう1つの懸念は、日銀による国債の引き受けや買入れが長期間続くと、国債発行に歯止めがかからなくなることだ。政府が国債をいくら出しても、それを日銀が購入し続けると、理論上、無制限に国債の発行が可能になる。国が青天井に国債を発行すると、いずれ国債の信用力が低下することは避けられない。つまり、国自身が信用を失ってしまうのである。

 

 

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51828991.html
インフレを政策によって実現することが可能か:これは可能である。

日銀があらゆる金融資産を買いまくれば、いずれインフレは起こる。これは財政政策なので、理論的にも総需要が追加される効果は明らかだが、今までのような数十兆円の「包括緩和」ではインフレ予想を起こすほどの効果はない。本当にインフレが起こるまでやるには、数百兆円規模の資産買い入れが必要だろう。

この弊害は次のようなものだ。日銀が数十兆円のキャピタル・ロスをこうむるおそれがある:これは一般会計で補填されるので、財政危機をさらに悪化させる。市場から財政ファイナンスとみなされると、国債の相場が崩れるおそれがある:これは悪い金利上昇を引き起こし、国債の暴落をもたらす。

他方、インフレのメリットは、実質金利や実質賃金が下がって企業の調整が楽になることぐらいだ。しかし2000年代の日本では、デフレ下でも実質金利も実質賃金も下がっており、インフレにするメリットは乏しい。激しいインフレになると給与所得者や年金生活者のの実質所得は下がり、原油価格が上がるだろう。

要するに、インフレによって企業の利益は増えるかもしれないが、財政が破綻して日本経済が崩壊するリスクがある。だから問題は、国債暴落のリスクをどう評価するかに尽きる。「2%ぐらいのインフレになったところで、金融を引き締めればよい」という説があるが、悪い金利上昇が起こったときは、金利を上げると国債が暴落してさらに資産の海外逃避が進み、インフレが激化する。つまり財政インフレに金融政策はきかないのだ。

もちろん長期金利が史上最低水準になった国債が、今すぐ暴落することはないが、2%のインフレでうまく止めることができる確率はゼロではない。これは賭けである。かりに90%の確率でマイルドなインフレで止めることができるとしても、10%の確率で日本経済が壊滅するとすれば、それはハイリスク・ノーリターンの危険なギャンブルである。

コラム:「2―3%インフレ目標」ではなぜまずいのか=熊野英生氏
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPTYE8B501P20121206
高いインフレ率と低い長期金利は相容れない。猛烈な金融緩和によって、地価・株価・商品といった資産価格が上昇すると、投資家の運用資産は、債券から値上がりする各種資産にシフトする。1%前後の長期金利はとても維持できなくなる。
日銀が金融政策の手段を動員して、インフレ率(=物価上昇率)を達成しても長期金利が上昇すれば意味がなくなる。(#金利が高くなれば企業が銀行から金を借りることもできなくなって経済成長はできなくなるわけだ。そのときは失業率も改善しない。by タラリ)


インフレ・ターゲットは本来、高めのインフレ率を押さえ、景気過熱を防ぐ仕組みだ。デフレを矯正する仕組みとして用いられたことはない。

日本の経済・財政状態は2―3%の長期金利に耐えられない。長期金利が急上昇すれば、財政再建は頓挫しかねない。政府債務の利払い費用が増えれば、税収はそれに食いつぶされてしまう。銀行が債券含み損・実現損を出せば、貸出のリスク許容力が低下する。事業法人は、国内での資金調達が不利になり、設備投資を手控える。

日銀に求められる優先的役割は、可能な限り中長期金利を低位安定に保つことである。今の日銀は、インフレ目標など敷かなくてもよい。暗黙のうちに国債管理政策に組み入れられており、長期金利を低位にすることに力を注いでいる。

 

10年以上続いた日本経済の「不安な安定」
その崩壊を予感させる3つの要因 伊藤元重
http://diamond.jp/articles/-/29096

日本はGDP比で200%を超えるような公的債務を抱えている。こんなに国債を保有して大丈夫なのだろうか。なぜ、破綻しないかと言うと、10年物の国債金利が0.7%近くと世界最低の水準であるからである。政府は40兆円以上の財政赤字を新規の国債発行で賄っている。幸いなことに、市場にはお金がジャブジャブにあって、その行き場がない。これが国債購入に回る。そのお金はどこから来るかといえば、家計部門の貯蓄と企業の内部留保である。このお金を運用する先(企業)がないから、銀行は預金はいくらでも集まるのだが、それを融資する貸し出し先がない。結局、国債で運用するしかない。

デフレが続くから金利も上がらないし、支出を抑えた家計や企業から貯蓄資金が流れ込んでくる。この資金が国債を買い支えるので、国債の利回りも当分低いままとなる。こういう状態が10年以上続いている。この10年の日本は、「幸せな不況」あるいは「不安な安定」と言ってもよい状況だ。何も大きな変化は起きない。景気は悪いが、社会は安定している。ただ、閉塞感が強い。そして公的債務が着実に増えていく。今からもそうなのか。

1.日本の国債は国内の金融機関がもっているので安心だ、と言われても安心にはならない。国内の金融機関も国債価格が下がると思えば、国債を売りに出る。多くの金融機関が売り始めれば、国債の価格は一気に下がる。

2.直近では日本の家計の貯蓄性向は急速に低下している。高齢化が進んできたからだ。高齢化が進むほど、過去の蓄えを崩して消費に回す。家計の貯蓄の減少を補っているのは企業の内部留保の増加である。かりに企業の投資が活性化して、貯蓄資金が投資に回るようになれば、政府の財政赤字を埋める資金が不足することになる。そうなれば、国債の利回りにも影響が出てくる。皮肉なことに不況が長引けば財政は安定状況が続くが、経済が活性化するほど財政運営が難しくなる。

3.原発停止以来、電力コストが上昇している。値段の高い天然ガスを大量に輸入することで、その輸入額が2兆円前後も増大しているという。コスト上昇は最終的には電力価格の上昇につながる。こうした変化が安定的な経済状況に変化をもたらす可能性も否定できない。

 

 

 

日銀による金融政策は、企業の投資需要に対する資金の供給が目的である。企業が投資先を道けられない状況では効果が無い。マネーサプライをいくら増やしてもそれは日銀の当座預金に積みおかれる。

年間40兆円にも上る貯蓄超過(内部留保)を積み上げている企業は、金利の安い資金といえども必要としない。なぜなら、彼らは金利のかからない自己資金さえ余らせているのだから。

日本が輸出立国といわれていたのは過去の話で現在の日本のGNPは8割が内需である。国内需要の低迷が投資需要を冷え込ませている。日本企業が97年以来下げ続ける賃金水準削減が、消費低迷と貯蓄超過の正体であるといえる。政府は景気を浮揚させる目的で非正規雇用など労働条件の緩和を進め、逆進課税を強め、結果的にはデフレ経済に誘導してきた。企業の儲けは一時的に膨らんだが、景気の改善にはつながらなかった。

デフレを脱出するにはまず有効需要を引き出すことである。需要の喚起のために従来行なわれてきたのが公共事業であった。公共投資も過去20年間行なわれてきたが、景気はよくならなかった。

公共投資は、資源配分として、またお金の使い方として効率のいい投資ではないし、富の再分配政策として考えると、メリットを受ける人に大きな偏りがある。

かつては道路・鉄道・港湾・空港設備を作る、公共事業は効率がよかった。第一に高度成長から置いていかれている地方に仕事を持って来る、そしてインフラを整備することによって物流、人の往来を盛んにして地方にも工場を作ることが可能になる。投資をした金額以上の効果が返って来ることが期待された。しかしっ、現在では投資に見合う公共事業がほとんどない。また、土木工事のやり方も変わった。人手を要した工事も大きな土木機械をひとりが操作するので地方に金が落ちないのである。立ち遅れた地方への富の再分配にはならないのである。


安全面で必要なインフラ投資は行なうとしても、それ以外の需要の拡大は、減税や給付金のような「広く薄く、使い道が自由で、支給に裁量が働きにくいお金」の支出に重点を移す方がいい。