胸がときめいてしかたない、しかしこれはときめきなのか、単に呼吸不足なのか、だなんて、そんな違いがわからなくなるほど馬鹿じゃないなりに、私は今強烈に猛烈に恋をしていますわ、恋をしちゃってるわけですわ

 

これはもう抗えないものだったといっても過言ではなくむしろ足りないくらいで、まさしく衝突もの。隕石。隕石が落ちてきても文句は言えまい。文句をいうほどの偶然ではなかった。文句をいう隙もない。だってあれはまさしくまさに運命、偶然、必然、神様が、なにか意味があって結びつけたものだとしか考えられない。こんな偶然ある?こんな出会いある?そんなことを本気で真剣に思って信じるほどに、私は彼に惚れている。惚れて溺れて泣きそうになっている。事実幾度と泣いては埋まらない心の痛みを風がびゅうびゅう吹きすさむのを感じるだけで、なす術もなく苦しみとかなしみとやりきれなさと刹那に耐える。そして耐え切れずにまた泣いて、彼のことを考えては眠る。

 

そんな日が一週間も続いたのに、いまだに色褪せず、ついには大学までいってしまった。ちっぽけな言い訳と口実を抱えて。やってしまった。プライド高さを自覚している私が、悟られたくないけれど気づいてほしいと半分狂気の沙汰で向かった学校。知っている街だったからなおさら胸が苦しくなった。入ったことのない敷地。いるかもしれない、いないかもしれない。会える保障なんてないし、会えたら奇跡。あんなに広い構内で、たったひとりの目当てのひとだけをみつけるなんて不可能に近い。実際不可能だった。学校に来ているかもわからないのに、喫煙所の前で数分、待った。黒髪、眼鏡、高身長、細身。ひとつでもあてはまるひとが通り過ぎると、文字通り息が止まった。違うことは一瞬にしてわかるけれど、安心と落胆のため息をはく。会えたら奇跡。

 

会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう。去年の年末にみた「ひとのセックスを笑うな」での最後のシーンの言葉。そう、会えなければ終わるなんて、そんなものじゃないだろう。そんなものじゃない。終わり?冗談じゃない、せめて一度、会って、なにかわからないけど納得するまで、なにに納得するのかわからないけど、納得するまで、終われない、終わらない。会える。会える手段はまだ残っている。そう考えたら少し気が楽になった。

 

執着でしょうか。でもあんな出会いかたしたら、あんなことされたら、誰だって忘れられないと思う。忘れられないほど、私は強く濃くキョーレツな思いをしたし、時間を過ごした。次会えたら、どうか、どうか私らしさを保ったままで、ばかみたいなプライドをかなぐり捨てて、素敵な笑みを浮かべて彼と話せることができるだろうか。うろたえて、動揺して、プライドの高さにおしつぶされて後悔の念にさいなまされるような、そんな今みたいな思いはしなくてすむだろうか。