器用をすてる | Absolute Gem

器用をすてる

司馬遼太郎氏の天明の絵師の文面に、

「いっそ、自分の器用をすてればよろしゅうございましょうか」

与謝蕪村の弟子であった呉春の言葉である。
弟子入りしてまもなく絵を描くことを早々にマスターし、
蕪村から天才と言われた呉春である。

蕪村はこう答えた。
「人間、持ってうまれたものを捨てられるわけでもなく、また捨てる必要もない。
死ぬまで持ちこしゆくものさ」

器用すぎた呉春は最期まで写生主義に終わり、
富を得る代わりに師であった蕪村を超えることはできなかった。

器用をすてる、ふと、そんな言葉になんとなくパブロ・ピカソを想像した。
彼の幼少期の作品は、今の代表作とは全く違うものを産み出していた。

そんな彼はきっと一度自分の器用をすてさり、
自らの内面、精神から描く手法を再構築したのではないか、そんな気がするのである。

ピカソは生存中、そして未来に渡って評価された稀有な
アーティストであることは間違いない。

それは、器用をすてることをできたからではないか、と。