おれはいぬだ

おれはばんけんだから
みみをとがらせ
しっぽをたてて
あやしいやつから
いえをまもる

おれはごしゅじんさまがだいすきだ

ごしゅじんさまのかおをみると
みみはよこにたおれてしまうし
しらないうちにしっぽまでふっている

ごしゅじんさまとたくさんさんぽする
まわりにきをくばりながら
おれはごしゅじんさまをまもる

おれはいぬでほこりたかい

だから
ごしゅじんさまのいうことしかきかない

ごしゅじんさまは
ないしょでおやつをくれる
しかも
じゃーきー

おれは
ごしゅじんさまのいうことしかきかない

なにも
じゃーきー
のためじゃないぞ
ねんのため





ごしゅじんさまと
ながいながいじかんをすごした

ずっと
ずっといっしょだった




あるひ
ごしゅじんさまは

ごめんな

とおれにいった

なんのことやらわからないおれは 
ききみみをたてたんだ

きんじょのおばさんたちが

もうおとしだからかうのがむずかしくなって
ほけんじょへつれていくんですって

といってた
ほけんじょってなんだ?
まあ
ごしゅじんさまがつれていってくれるところなら
いいところなんだろう


それからなんにちかして
みなれないくるまがやってきて
ごしゅじんさまは
おれをそのくるまにのってきた
おとこのまえにつれだし
りーどをわたそうとした

え?
なにしてるの?

おれはあっけにとられた

つぎのしゅんかん
ごしゅじんさまはりーどをにぎりしめて
はしりだした

そして
すこしすすむとしゃがみこみ
おれのくびわをはずしてこういった

にげろ!
そしていきろ!
もうこっちをふりむいたらだめだ
さあいけ!

おれはなにがおきているのか
すぐにはわからなかったが
ごしゅじんさまの
ふるえるようなこえと
ほほをつたうなみだで
もうおれはここにはいられないんだ
そうりかいした  
 
おれははしった

かなしかった
さみしかった

おれははしった
はしりつづけるしかなかった







きがつけばしらないまち 

しってるものはなにもない
こういうのを
こどく
っていうのかな

たとえ
たべるものがみつからなくても
あめをしのぐばしょもある

またあしたがある

おれはいぬだ

おれはいぬでほこりたかい

とてもつよいのらいぬなのだ