(超訳)
みんな顔や風貌がいいってことが理想的なんだろう。
ボソッと言った言葉も耳障り悪くなく、愛嬌があって、
ベラベラ無駄口を叩かない人となら、ずっと面と向かってたいよね。
逆に、
立派に見える人が幻滅するような本性をさらしてるのが見えたときっていうのは、マジで残念。見ててツライ。
人柄、階級、見た目は生まれついてのものだが、
心は「賢く、より賢く!」と成長させないといかんだろうに。
見た目や性格がイイ人も、才能がないっていうことになってしまうと、
品格も地に落ちて、シャクにさわるような顔のヤツら(品性下劣な官職?)のソーシャルに交わってしまって、さらにヤツらに簡単に気圧されてしまうっていうのは、本当に不本意な現象だ。
望ましい(人が本来願うべき)ことは、
王道で正しい文学、文才、和歌、音楽、また学問や政治制度に通じた学識と美意識の高い人、みんなの憧れになる人…っていうのが、正しいし、尊いんじゃないだろうか。
上手な字でスラスラとものを書き、鶴の一声でもってオピニオンシップを発揮し、「酒呑まんかい!」と言われたら嫌そうな顔しながらでも一応飲んで、ゲロゲロ吐かずにそこそこイケちゃう…くらいの男がいいよね。
(原文)
人は、かたち・有樣のすぐれたらんこそ、あらまほしかるべけれ。物うち言ひたる、聞きにくからず、愛敬ありて、言葉多からぬこそ、飽かず向はまほしけれ。めでたしと見る人の、心劣りせらるる本性見えんこそ、口をしかるべけれ。
しな・かたちこそ生れつきたらめ、心はなどか、賢きより賢きにも、移さば移らざらん。かたち・心ざまよき人も、才なくなりぬれば、しなくだり、顔憎さげなる人にも立ちまじりて、かけずけおさるるこそ、本意なきわざなれ。
ありたき事は、まことしき文の道、作文・和歌・管絃の道、また有職に公事の方、人の鏡ならんこそいみじかるべけれ。手など拙からず走りかき、声をかしくて拍子とり、いたましうするものから、下戸ならぬこそ男はよけれ。
(解説)
前回の愚痴の続きです。
いかにも、随筆。思ったことをバンバン書いています。
一般の理想をとりあえず回想。
これくらいの人なら愛嬌あるよね~ていうのを提示。
その後です。向上心のないエリートの凋落を指摘してから、この段の冒頭に書いた「願いって山ほどあるけど」という問題定義のアンサーに帰ってきます。
兼好の言う理想のニンゲンは、
文芸に秀でた、あるいは公職でキッチリ仕事する、人から目標にされるような人!ということですね。
兼好自身が、こういった世間でいう上流階級と交わりがあって、そのなかで和歌などを詠んだり、教えたりしていたので、彼としては当然と言えば当然の答えです。
さらに加えて、一応酒の席でも周りに負けない、むしろ自分のペースを崩さない人とも言っています。
なんか、世捨て人のクセに、ソーシャルの圧力に負けない人を理想としています。そうでありたいという本人の意思も見え隠れしているように思いますね。