子どもの足と靴:オーストリアスポーツ科学者ヴィーラント・キンツ氏による会見に出席してきました! | 一生の足を健やかに育てる、マスターシューアドバイザー伊藤笑子の足育のススメ!

昨日5月19日は〝育児の日〟でしたね。

 

オーストリア大使館商務部商務参事官邸で行われた、ヴィーラント・キンツ氏会見に日独小児靴学研究会のメンバー5名とともに参加してきました。

 

少し早めに集合して、大使館から送られてきた『Eltern」(両親)』という育児雑誌に掲載されたキンツ氏の記事を日独通訳者のベーレ操さんに GWの休暇中にもかかわらず、急ぎで翻訳をお願いしていたので、その中身を解説しながら、メンバーに事前レクチャー。

この記事のスポンサーが「CROCS」であることに違和感を感じたのは、私だけではないと思います....

 

 

麻布十番の暗闇坂を登り、オーストリア大使館商務部商務参事官邸へ。

 

 

 

たくさんの参加者がひしめき合う中で、東京と長野の幼稚園620名を対象にした子どもの足と靴の調査結果の会見でした。

 

 

 

 

 

キンツ氏のこれまでの調査研究によると、

 

●ヨーロッパにおける研究では半数以上の子供がサイズの小さすぎる靴を履いているという結果が出ている。

 

●オーストリアの子供69%が小さすぎる外履き用の靴をはいており、88%の子供が小さすぎる室内履きを履いているとう結果が出ている。

 

●ドイツ、スイス、リヒテンシュタイン、アイルランド、フィンランド、オランダでも調査を行なったところ、同じような結果であった。

 

そして、今回の日本における調査では、

 

1. 調査エリア:長野・東京にある9箇所の幼稚園

2. 対象:女児299人、男児321人 計620人の幼稚園児

3. 方法:足長計測
     外履き・室内履きの靴内サイズの計測

     正しいサイズとは、足長よりも最低12mm長い

 

4. 結果:

[外履き]

23.1%は、足に合った外履きを履いていた。

72.1%は、小さい外履きを履いていた。

5人に1人は、足長より小さい靴を履いていた。

 

[室内履き]

15.2%は、足に合った室内履きを履いていた。

81.6%は、小さい室内履きを履いていた。

3人に1人は、足長より小さい靴を履いていた。

 

幼稚園児の72.1%が小さい外靴を履いているという結果と、小さい靴を履いている子どもは、母趾の変形も伴っていることが多く見受けられたとのことでした。

 

 

伊藤は、約20年、幼稚園児の足型計測を行っており、靴の適合チェックも適時にしてきましたが、これほどまでの数字を見たことがありません。違和感の拭えない結果について、会見の場で、質疑応答させていただきました。

 

伊藤「改めてお尋ねいたします。キンツさんは、正しい靴のサイズは足長に対して最低12mm以上余裕のある靴と定義されているので、〝小さい靴を履いていた〟と分類される方法は、足長に対して、靴内寸法(捨寸)が12mm以下であった場合でしょうか ? 」

 

キンツ氏「そうです」

 

伊藤「日本では、靴メーカーも販売現場でも、子ども靴の捨寸に対して、〝10mmまたは5mmが適切である〟と示していることが多いため、購入時にすでに小さい靴のサイズから履きはじめているという現状があります」

 

キンツ氏「10mmでも小さいです。5mmなどはありえないくらい小さすぎます」

 

そのあとも個別にセッションさせていただき、

 

「日独小児靴学研究会では、靴の購入時には「捨寸を10mm-15mm取るのがよい」と示していますが、そのアドバイスを基にしても、日本の子ども靴は、踵幅の大きい靴、後足部の固定力の低い靴がほとんどですので、15mm取ると大きすぎるという感覚になる人がほとんどです。キンツ氏のおっしゃる購入時に必要な捨寸の17mmでは、靴が脱げてしまい〝足に正しくあっている靴〟とはなりません。

 

また、幼稚園時の72.1%が小さい靴を履いているという結果は、捨寸12mm以下を小さいと定義した上での結果であることがきちんと示されていないまま、数値だけが一人歩きすると日本の消費者が混乱しないかと危惧しています」

 

と申しました。しかし残念なことに、

 

「踵部分は大した問題ではなく、足長に対して捨寸が12mm以下の靴を履かせてはいけないということが大事である」...というキンツ氏のお考えと「靴の構造自体が、足に対して必要な捨寸を保てるかどうかに大きく関与している」と考えている伊藤とはそれ以上の建設的なセッションにはなり得ず、いつまでも平行線でした汗 が...

 

 

今回の大規模な調査により得られた結果から「12mm以下の捨寸は小さすぎる靴である」という解釈とその「小さすぎる靴を履いている子どもが72.1%もいる」という結果は、保護者向け啓発に対してはある意味、衝撃的な結果であるがゆえに、有効なシグナルになるとは思います。

 

一方で、データをもとに多角的な視点をもって解釈すること、日本における子どもの足と靴の問題の解決方法を見出すにあたって、捨寸だけでは解決つかないことがあまりにも多いので、それを整備することをやっていかないといけないという課題も明確になりました。

 

そして、ヨーロッパにおいても、様々な研究結果に基づく指標や解釈があり、研究者によるバイアスをいかに客観的に捉えて、汎用に耐えられる指標を作るか ?

「正しさ」の多様性、それを示すことの難しさを改めて感じたことが、今回の収穫でした。


 

会見のあと、JAGSSのメンバーとおよそ麻布十番らしくない居酒屋で、アフターMTGを行ない、メンバーが様々な研究を聴講する時にその方法と結果によって導き出される考察とは、背景によってどのような方向を向くのか ? といるフローがあること、そして、それを教育や啓発に使用する際の注意点などをきちんと理解し、研究に対する目と耳が育ってくれていたことが、私にとっては何より最大の収穫でした!

 

 

 

最後に、
キンツ氏にサインもいただき、お土産にはキンツ氏が特許を取られた「プラス12」というメジャーをいただきました。このメジャーで足長に対して、捨寸が最低12mmを保てているかがわかるようになっています。ありがとうございました!ペコリ

 

 

子どもの足と靴:オーストリアスポーツ科学者 ヴィーラント・キンツ氏による会見

プロジェクト運営、コーディネート、翻訳、通訳:

HAGEN FUSSFUERSORGE代表クレメンス・ハーゲン氏

HM SAPERE ハーゲン愛美氏
オートフィッツ中村 奈穂子氏
(株)知足堂 渡邊務氏

 

 

足ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号
フラウプラッツ代表

日独小児靴学研究会共同代表

マスターシューアドバイザー
伊藤笑子(MHSc )
ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号ヒカリ3号