都会の片隅(?)に暮らしていると、
同じアパートに住んでいる人の顔も知らなかったりする。
階が違ったりしたら、もう、まったくわからん。
私の部屋はアパートの1階で、
居間の大きな窓を開けると、ベランダ的スペースと、小さな庭がある。
ある夜、帰ってきて、窓を開けたら、
庭の木にTシャツが引っ掛かっているのが見えた。
上の階の人が落としたのだろうか。
ここのところ風が強かったし、他から飛んできたのかもしれない。
しかしやはり確率的には上の階が高いだろう。
しかしもう夜中、尋ねる時間ではない。
それに突然尋ねられて困った顔をされるのも嫌だ。
かと言って、捨てちゃうのもしのびない。
じゃあ、ポストに入れておくか。
突然ポストに大きな荷物が入っていたら驚くだろうか。
時限爆弾かもしれないとか叫んじゃったりしないだろうか。
地面に落ちた洗濯物なんかもう着ないって潔癖症の人だったらどうする?
こんなの送ってくるなんて信じられない!とか・・・
ん~。どうしようかなー。
この間約1時間。
散々考えた末、
ちょっとお洒落な感じのお店のビニール袋を探してTシャツを入れ、
手紙を貼ってポストに入れておくことにした。
うちのポストのところは暗くて夜中開けたら驚きそうなので、
できるだけ最初の一行がわかりやすくばばーんと見えるように書いた。
103号室のゆきまると申します。
今日、庭にこれが引っかかっていました。
風が強い日も多かったので、
もしかしたらもっと遠くから飛んで来たのかもしれないのですが、
上の階の方にまず聞いてみようと思い、お手紙書いてます。
もし違ったら、隣の部屋に回してみてください。
最後の文章がちょっと・・・と思ったが、それなりに面白い結果になりそうだし、いいか。ということで。
それから音沙汰ないまま1週間ほどがたち、
忘れかけていた頃、ポストに紙袋が入っていた。
紙袋には、可愛い文字で
「長そでTシャツ、ありがとうございました」
紙袋の中にはレモンケーキが一つ。
よかったー。良い人だったー。
なんか感動しちゃうわー。
色々考えたけど、やっぱりお返ししてよかったわー。
と思いながら、
窓を開けたら、
庭の木にTシャツが引っ掛かっているのが見えた。
庭に出たら、ビーチサンダルも落ちてた。
かたっぽだけ。
階上の人が、
私の中で、
良い人から、
おっちょこちょいさんに変わった瞬間だった。