(GWの旅行記の続き)旅行3日目。いよいよこの日から今回の旅行のメインの旅程に入ります。まずはチェコのオストラヴァというまちに、今年生誕200周年を迎えるスメタナ/ボヘミアのブランデンブルク人を観に行きました。

 

 

 

National Moravian-Silesian Theatre

Bedřich Smetana

THE BRANDENBURGERS IN BOHEMIA

(Antonín Dvořák Theatre)

 

Conductor: Jiří Habart

Stage director: Jiří Nekvasil

Set designer: Petr Matásek

Costume designer: Zuzana Bambušek Krejzková

Choreography: Lea Bessoudo Greck

Motion cooperation: Jana Tomsová

Chorus master: Jurij Galatenko

Dramaturg: Juraj Bajús, Eva Františáková

 

Volfram Olbramovič, Mayor of Prague: David Szendiuch

Oldřich Rokycanský, a knight: Jiří Miroslav Procházka

Junoš, a young resident of Prague: Martin Javorský

Jan Tausendmark, a young resident of Prague: Pavel Divín

Varneman, a captain of Brandenburger Mercenaries: Václav Morys

Jíra, a vagabond: Gianluca Zampieri

Ludiše, Volfram's daughter: Tamara Morozová

Vlčenka, Volfram's daughter: Barbora Garzinová

Děčana, Volfram's daughter: Michaela Zajmi

 

National Moravian-Silesian Theatre’s opera chorus & orchestra and ballet

 

 

 

(写真)本公演のパンフレット

 

(写真)モラヴィア・シレジア国立劇場(複数の劇場があり、この劇場はアントニン・ドヴォルザーク劇場)。劇場正面に大きな2本の木があるのがとても印象的。劇場の中はかなり豪華な造りです。

 

 

 

 

 

オペラの前に、この日の移動と観光のことから。ウィーンからオストラヴァまで4時間の直行列車で移動して、日中はオストラヴァのまちを歩きました。

 

 

(写真)列車に乗る前のウィーン中央駅での朝食。ヨーグルトがあったので、たっぷり取りました。

 

(写真)オストラヴァ中央駅に到着。オストラヴァはブルノの東、ポーランドとの国境に近いまち。人口約30万人で、実はプラハ、ブルノに続くチェコ第3のまちですが、地球の歩き方に載っていないこともあり、あまり知られていないまちだと思われます。

 

(写真)ホテルに荷物を置いて、まずはランチ。牛肉のハンバーガーとオストラヴァのビール。ビールはドライで、シメイのゴールドに味が似ていました。美味い!この日は快晴でしたが、屋外でのランチがめっちゃ気持ち良い!

 

 

(写真)救世主大聖堂。とても立派な教会です。ファザードの上にあるキリストの像が印象的。中では、祭壇の上の横に長いフレスコ画が見事でした。

 

また、今年の聖金曜日(3月29日)には市民の方々がゴルゴタの丘をイメージした山を登って追体験し、翌日の聖土曜日にかけて市民の方々が十字架を背負ってまちを練り歩かれている写真が展示されていました。その時間帯は私はバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ/マタイ受難曲を聴いていたので、とても親近感を感じました。

 

 

(写真)ストドルニ通り。ここがオストラヴァで最も賑わう通り、ということでしたが、昼間はそんな雰囲気は一切なく?そぞろ歩くと、いい感じのアイリッシュ・パブが何軒かあったので、きっと夜は賑わうことでしょう。

 

 

(写真)新市庁舎の展望台。ここからのまちの眺めがとても良かったです。展望台は四角い造りで、パッと見、ポーランドのワルシャワ中央駅そばの文化科学宮殿の展望台のことを思い出しました。

 

 

(写真)オストラヴァはかつて炭鉱で栄えたまち。展望台からまちの外れにある工場が見えました。

 

 

 

(写真)オストラヴァのまちは、オストラヴァ川沿いに広大な公園があります。この日は日中かなり暑くなりましたが、公園の木陰の中を歩くのが本当に心地良い!多くの市民の方がそぞろ歩きを楽しまれていました。また、赤軍の像がありましたが、親子連れがかくれんぼして遊んでいました。この平和がいつまでも続いてほしい。

 

 

 

途中に寄ったカフェでは可愛らしいビーグル犬がお出迎え(私は犬に懐かれるのが特技です笑)。後でカフェの前を通ったら、店員さんの女性2人がアイスクリームを持ってモデルさんのように写真撮影会をしていました!笑 親指を上げて、イイネ!のポーズを送る私。旅のちょっとした交流は楽しいものです。

 

 

 

 

 

さあ、いよいよ本題のスメタナのオペラです。スメタナのオペラは8作品ありますが、「売られた花嫁」が有名で、後は「ダリボール」と「リブシェ」のことをご存知の方がいらっしゃるかどうか、ではないでしょうか?

 

私は2007年にプラハ国民劇場で「リブシェ」を観ましたが、スメタナのオペラがいかに素晴らしいか、この時に思い知りました。これまで「売られた花嫁」「ダリボール」「リブシェ」「秘密」の4作品を観たことがありますが、スメタナの第1作目のオペラ「ボヘミアのブランデンブルク人」は初めて。とても楽しみです。

 

 

 

「ボヘミアのブランデンブルク人」のあらすじをごく簡単に。13世紀、ブランデンブルク軍の支配に苦しむボヘミア。反乱運動のリーダーの農奴ジラ、プラハ市長と3人の娘、長女ルディシェの恋人のユノシュ、ブランデンブルク軍の協力者タウゼントマルク、ブランデンブルク軍の隊長ヴァルネマンを中心に物語が進みます。

 

裏切り者のタウゼントマルクは奸計によりプラハ市長にジラを捕えさせて、さらにはルディシェまで自分のものにしようとします。悲しみと偽りの続くボヘミアですが、この後いったいどうなるのでしょうか?

 

 

 

 

 

第1幕。風雲急を告げる激しい音楽で始まります。地方へ避難しているプラハ市長は横暴なブランデンブルク人たちに対して煮え切らない態度を取りますが、ボヘミア国王が屈辱的な仕打ちを受けたことを聞いて、ようやく立ち上がる決意をします。盛り上がる音楽が素晴らしい!

 

 

続いてプラハ市長の3姉妹のシーン。長女のルディシェが愛するユノシュに不安に感じるアリアが、美しい前奏も含めて素晴らしい!ブランデンブルク人に協力するタウゼントマルクがルディシェに言い寄りますが、毅然として拒否。

 

その後にブランデンブルク人たちがここに向かってきていることを聞きますが、神に救いを求める3姉妹の3重唱から女性たちの合唱に展開する歌が美しい!

 

 

 

場面転換してプラハの夜の広場。貧乏な農奴のリーダーのジラが貧乏万歳の歌を歌いながら登場しますが、リズミカルで明るい歌が小粋で逞しくて素敵!

 

(この歌の旋律は、ド~レド~レドッレドッレ、ミ~ファミ~ファミッファミッファ、ソソソソラソファミ、ファファファファソファミレと素朴ですが、めっちゃ癖になる!笑)

 

 

続いて印象的な旋律に導かれる「私たちの時が来た」の歌が極めて感動的!ミュージカル「レ・ミゼラブル」の群衆がフランス国旗を打ち振る、あの有名な「民衆の歌」のシーンのよう!最後に転調を繰り返して高まり加速する音楽が最高!スメタナって、天才!観客のみなさんも大盛り上がりでした!

 

(参考)スメタナ/ボヘミアのブランデンブルク人より「私たちの時が来た」。冒頭の感動的な合唱が、2:46に帰って来た後の盛り上がり方がめちゃめちゃ素晴らしい!オペラの途中の出てくる合唱ですが、単独でも歌われているようです。

https://www.youtube.com/watch?v=rgQQPtab57k (4分)

※Czech Lionの公式動画より

 

 

そこに3姉妹が救いを求めに来ますが、3姉妹の悲しげな3重唱からの合唱への展開に痺れます!そこにルディシェを追ってタウゼントマルクも現れますが、タウゼントマルクからささっと剣を取り上げるジラ様が素敵!

 

しかし、プラハ市長が現れ、タウゼントマルクが諫言すると、体裁のことを考えたプラハ市長によって、ジラは身柄を確保されてしまいます…。最後のジラの歌い出しからの悲劇的な音楽は、まるでヴェルディのオペラのフィナーレのように劇的!めちゃめちゃ素晴らしい!

 

 

 

 

 

第2幕。ブランデンブルク軍から避難する民衆の中で、一人の老人の歌う歌が素晴らしい!神に救いを求める歌で終始短調の悲壮な歌ですが、最後にほんのり長調になるのがとてもいいですね~。

 

ブランデンブルク本国から、3日以内にボヘミアから引き上げよ、との奇跡的なお達しが届きました!喜ぶ民衆の歌に、オクターブ丸々一音ずつ上がる旋律が現れて痺れます!

 

 

裁判にかけられるジラ。毅然と真実を語るのは立派ですが、率直で乱暴な物言いが災いしてしまって、裁判官たちから死刑を言い渡されてしまいます…。

 

 

 

 

 

第3幕。ブランデンブルク軍を率いるヴァルネマンが登場。ボヘミアを占領する悪役側ですが、軽やかなキャラクター・テノールで、どこか憎めない人物。自分たちへの協力者にもかかわらず、人柄を見てタウゼントマルクのことを見限ります。

 

 

そのタウゼントマルクが、ここで祖国を裏切ったことを後悔する素晴らしいアリアを歌います!本当に嫌な奴ですが、そんな奴にもスメタナがどんだけ素晴らしい音楽を付けていることか!観客からやんやの喝采となりました!

 

しかし、その後にタウゼントマルクから諦めの悪いセリフがあり…。

 

観客のみなさん:こんなんなら、さっき拍手しなければ良かった!笑

 

 

最後はジラがユノシュたちによって助け出されて、祖国の裏切り者のタウゼントマルクが民衆にコテンパンにやっつけられて、めでたしめでたしとなります。ここで、ト書き通りにジラ万歳!の晴れやかなラストを迎えると思いきや…、

 

ジラがプラハ市長の家来からぞんざいに扱われて舞台から憤然として去っていき、民衆が今にもプラハ市長に対して飛びかかりそうな、革命の雰囲気に満ちたラストで終わりました!そう来たか!

 

 

 

 

 

いや~、凄い!スメタナの第1作目となるオペラ、めちゃめちゃ素晴らしかったです!

 

 

開演前に劇場の芸術監督の方がスピーチで、ボヘミアのブランデンブルク人はスメタナの最初のオペラだが、音楽の完成度が非常に高い、ということをおっしゃっていましたが、正にその通り!

 

 

ストーリーも含めて、ヴェルディ/ナブッコに雰囲気が似ているかな?と思いましたが、ワーグナーの影響も感じます。加えて民族的な音楽もふんだんに入って最高!スメタナの作曲の技術やオペラへの適用の巧みさに大いに唸った、素晴らしい公演でした!(続く)