(昨夏の旅行記の続き)旅行13日目。この日から観劇の舞台はザルツブルクへと移ります。ここからの3日間は、コンサートやオペラが、トリプルヘッダー → ダブルヘッダー → ダブルヘッダー!とても濃密な3日間をもって、旅行のフィナーレを迎えます。

 

まずは大好きなザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団(MOS)によるモーツァルト・マチネ。しかも歌劇「牧人の王」の演奏会形式という素晴らしいプログラムの公演からスタートです!

 

 

SALZBURGER FESTSPIELE

Mozart Matinee

(Mozarteum Großer Saal)

 

Conductor: Ádám Fischer

Alessandro: Daniel Behle

Aminta: Emöke Baráth

Elisa: Nikola Hillebrand

Tamiri: Julie Roset

Agenore: David Fischer

Mozarteum Orchestra Salzburg

 

WOLFGANG AMADEUS MOZART

Il re pastore(Concert Performance)

Serenata in two acts K. 208 on a libretto by Pietro Metastasio

 

 

(写真)会場はモーツァルテウム。何度も聴きに来ている、大好きなホールです。

 

 

 

 

 

その前にこの日の朝の様子を少しだけ。早朝にバート・イシュルからザルツブルクまでバスで移動しましたが、バスの停留所近くのバート・イシュル鉄道駅のホームに、パンをちぎっては鳩に餌をあげているお姉さんがいて、そのほのぼのとした光景にほっこりしました!笑

 

 

バート・イシュルからザルツブルクへのバスは、ザルツカンマーグート地方のハイライトの観光名所を通る大好きな1時間半。特にザンクト・ヴォルフガング湖の対岸から見るイム・ヴァイセン・レッスル(ラルフ・ベナツキーのオペレッタ「白馬亭にて」の舞台のホテル)や教区教会が朝日に輝いていて、本当に美しい!

 

 

美しい風景をたっぷり楽しんだ後、バスはザルツブルクに到着。ホテルにスーツケースを預けて、さっそく旧市街方面に繰り出しますが、ザルツブルク駅前のオーブス(ザルツブルクのトロリーバス)の自動券売機には、何と、吸い込まれて抜けなくなってしまったクレジットカードが残置されていました!うわ~!危ない危ない!

 

私は海外旅行では基本クレジットカードで支払いますが、こういうことがたまにあるので、近くに管理の方がいなさそうな券売機では現金を使うようにしています。クレジットカードが吸い込まれてしまったらアウトですし、どうしても貯まる小銭の整理もできて一石二鳥なので。

 

 

 

(写真)モーツァルト・マチネの前は、1週間前の8月12日に続いて、大好きなミラベル庭園をゆっくり散策することとしました。オーブスをミラベル・プラッツで降りた時、目の前の聖アンドレ教会の鐘が盛大に鳴りましたが、何だか歓迎されているようで嬉しかったです!

 

 

 

 

 

 

(写真)ミラベル庭園の美しい花々。写真のように、どこを切り取っても本当に美しく優雅な光景が広がります。

 

(写真)綺麗に剪定されたトンガリ頭の樹木。これ、とても気になりますね。今回の旅の3日目で楽しんだチェコのレドニツェ城にあるような巨大なトンガリ頭でなく、高さ1mくらいで本当に可愛らしい。

 

私は能の舞台だったり、2022年には広島の縮景園にも行きましたが、この小さなトンガリ頭がわざわざ配置されているのは、庭園をより大きく見せるための工夫なのではないか?と思いました。

 

 

 

(写真)ミラベル庭園をたっぷり楽しんだ後は、モーツァルトの住居が目の前の絶好のロケーションのカフェで一休み。ヒンベアー・トプフェン・トルテとメランジェ。

 

 

 

 

 

さて、いよいよコンサートです!モーツァルトの歌劇「牧人の王」は、実は2006年に同じくザルツブルク音楽祭でオペラの公演を観ています。前回の記事でも出てきたアンネッテ・ダッシュさんがアミンタを歌った最高の公演!今回のアダム・フィッシャーさん指揮の公演もとても楽しみです。

 

 

(写真)その2006年のザルツブルク音楽祭での牧人の王のDVD。この年のザルツブルク音楽祭は、モーツァルト生誕250周年を盛大に祝って、モーツァルトの22のオペラを一挙上演する!という、あり得ないような離れ業を成し遂げました!!!さすがモーツァルトの生誕地ザルツブルク!!!

 

この時のモーツァルトの22のオペラ公演のDVD全集は確か10万円以上したと思いましたが…、ザルツブルク音楽祭で最高のモーツァルトのオペラ公演をいろいろ観てきた感動と興奮で、東京に帰ってから勢い余って(笑)買ってしまった良き思い出があります。有名な6大オペラだけでなく、モーツァルトの天賦の才を大いに実感できる若書きのオペラをいつでも観ることができるのは嬉しいものです。

 

 

 

そして、今回の演奏会形式のコンサートを聴いた感想ですが、とにかくアダム・フィッシャーさんのシンプルかつツボを押さえた活き活きとした指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏がめちゃめちゃ素晴らしかったです!

 

歌手のみなさんも本当に見事!特に、アミンタのEmöke BaráthさんとエリーザのNikola Hillebrandさんの2人が歌も演技も素晴らしく、大いに感動しました!それぞれが名刺がわりのアリアを歌った後、第1幕最後の二重唱は飛び切りの素晴らしさ!

 

Emöke Baráthさんは2017年のシルヴァン・カンブルラン/読響のメシアン/アッシジの聖フランチェスコの天使役も見事でしたが、今回のアミンタも役によく合っていて、大いに魅了されました!

 

Julie Rosetさんのタマーリのアリアも印象に残りました。Daniel Behleさんは私が2017年にバイロイト音楽祭でワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガーを観た時のダーフィット役。さすが!としか言いようがないほどの立派さ!

 

 

 

第1幕終わった後はテラスで幕間のドリンクを楽しみましたが、ちょうど12時の鐘が周囲のあちこちの教会から聞こえてきて、素晴らしい雰囲気にさらにテンション上がりました!ザルツブルク音楽祭は最高の音楽が聴けるだけでなく、こういうところも魅力です。

 

 

 

後半の第2幕も、エリーザ、アミンタ、タマーリ、アジェーノレと、それぞれの想いをアリアで歌って、本当に素晴らしかった!特に大好きなアミンタのアリア「あの人をぼくは愛そう、心変わりはすまい」を再び実演で聴くことができて感無量!

 

(参考)モーツァルト/歌劇「牧人の王」からアミンタのアリア「あの人をぼくは愛そう、心変わりはすまい」

https://www.youtube.com/watch?v=KvMfBcai6DA (9分)

※ソーニャ・ヨンチェヴァさんご自身がアップされている動画より

 

 

最後はアレッサンドロ大王がみんなの希望通りにカップルをまとめて、ラストは王様と愛を讃える五重唱で幕を閉じました。

 

 

 

いや~、さすがはモーツァルト・マチネ!素晴らしい公演でした!2006年の感動再び!特にアミンタとエリーザが強力で、2006年に聴いた、アンネッテ・ダッシュさん(アミンタ)とマルリス・ペーターゼンさん(エリーザ)の最高のコンビを思わせました!こうしてザルツブルク音楽祭で経験を積んで、さらに大きく羽ばたいていくだろう若手のアーティストの方々の歌に触れることができるのは本当に嬉しいものです。

 

 

そして、この素晴らしいコンサートを司っていたのは、何と言っても指揮者のアダム・フィッシャーさん!私はアダムさん指揮のコンサートはハイドンの聖地アイゼンシュタットで開催されるハイドン音楽祭で何度か聴いていて、その切れ味の良いハイドンに大いに魅了されましたが、モーツァルトも素晴らしいですね!

 

終わった直後に、ちゃめっ気たっぷりに舌出したり、歌手に向けてガッツポーズしたり、アダムさんの飾らない素朴な立ち振る舞いは本当に好き。素晴らしいモーツァルトの公演に、客席は総立ちで大いに盛り上がっていました!(続く)

 

 

 

 

 

 

 

(追伸)ところで、一昨日1月19日(金)は東京オペラシティ コンサートホールに、鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンのブラームス/ドイツ・レクイエムの公演を聴きに行きました。めちゃめちゃ素晴らしかった!最高のドイツ・レクイエム!

 

私は2018年にクリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデンの同曲の公演を聴いていて、これを超えるドイツ・レクイエムを聴くことはおそらく一生ないだろう、くらいに思っていましたが、バッハ・コレギウム・ジャパンの歌と演奏は、また一味違う魅力を持った、これまた最高の公演でした!

 

(参考)2018.5.1 ドレスデン国立歌劇場合唱団の創設200周年特別コンサート(ブラームス/ドイツ・レクイエム)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12384006081.html

 

 

特に、第3曲「主よ、教えたまえ」が圧巻!私、ドレスデンで聴いた時は第3曲後半のフーガの場面で、ティーレマンさんの指揮に煽られて、たたみかける合唱のフーガに圧倒され、「バッハを超えたバッハ!」という感想を持ちましたが、鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンはオルガンをバーンと効かせつつ悠々としたテンポで進めて、そこにBCJの強力な合唱陣が絡み合い、まるでいま正に目の前に神が出現しているかのよう!

 

その歌詞の通り、「正しい者の魂は神の手の内にあり、どんな責め苦もそれに触れることはない」ことをBCJの歌と演奏をもって大いに感じた、極めて感動的な瞬間でした!(加えて、第6曲「私たちはこの世に」も聴き応え抜群!)

 

バス・バリトンのヨッヘン・クプファーさんの第3曲と第6曲での見事な歌、ソプラノの安川みくさんの第5曲のピュアで美しい歌も素晴らしかった!安川みくさん、昨年9月のBCJのシューベルト/ミサ曲第5番でも、こんなにも美しい歌声のソプラノがいるんだ!と驚きましたが、今回もその歌声に心洗われました。

 

 

 

そして、やはりこのタイミングで聴くドイツ・レクイエムには、能登半島の大震災で犠牲になられた方々のことを思わずにはいられません…。苦難や死を迎えた人々を慰める歌詞の一つ一つが心に響きます。どうか、今回の震災で亡くなられた方の魂が安らぎを得て、また、今も困難に直面している方々が慰めを見出すことができますように。