(夏の旅行記の続き)旅行11日目。この日もバート・イシュルでオペレッタを観ますが、夜の公演なので、日中にエクスカーションを入れるチャンスです。

 

今回の夏の旅行で、この日の観光をどうするか?時間を多くかけて検討しました。まだ行ったことのない、美しいゴーザウ湖(有名なハルシュタット湖よりもっと奥に位置)に行くことはすぐに決まりましたが、組み合わせのプランがなかなか決まらなかったからです。

 

 

 

その理由は、組み合わせとして真っ先に挙がる有力な候補が、ゴーザウ湖からすぐ行けるドナーコーゲル登山だったので。Googleで“Donnerkogel”で検索すると、以下のような写真が沢山出てきます。

 

 

(写真)ドナーコーゲル登山の途中に出てくる「天使の階段」または「天国のハシゴ」。TBSテレビの「日立 世界ふしぎ発見!」でも取り上げられたそうです。

※DACHSTEIN-Salzkammergutのウェブサイトより

 

 

 

これ、めっちゃヤバイですよね???笑 高所恐怖症はないので、この高~い空中の階段を登ること自体はできると思いますが、装備が必要だったり、ガイドさんのサポートが必要だったり、気楽に利用できるものではなさそう。万が一トラブルに見舞われて、夜のオペレッタがパーになったら、元も子もありません。

 

 

 

ドナーコーゲルのウェブサイトも確認しましたが、以下の記載がありました。高さこそ2,000mくらいなので、今までオーストリアで何度も楽しんで来ている高さの山ですが、難しさや条件が“difficult”とあり、シロウトが、のこのこと登りに行くのは避けた方が良さそうな雰囲気でした。

 

(写真)ドナーコーゲルのウェブサイトの記載。”difficult”が並んでいて厳しそうですが、その下の”Great panorama”がとても気になる! 

 

 

 

しかし、そのウェブサイトの上の方には、以下のマークがありました???

(写真)ドナーコーゲルのウェブサイトにあった犬のマーク(拡大)

 

 

むむむ???これは一体どういうことなんだろう?ワンコがあんな空中の階段を登れる訳ないない!と思いましたが、よくよく調べてみたら、ドナーコーゲルはヴィア・フェラータ(岩場に固定のワイヤーロープが設置されていて、ハーネスやカラビナで確保して登っていく岩登り)によるルートの他に、装備なしで歩いて登っていける通常のルートがあるようなんです。

 

ヴィア・フェラータのルートの方に「天使の階段」があって、通常のルートだと犬を同伴して登っても良い、という意味の犬のマークなんですね。

 

 

 

しかし、通常のルートがあったとしても、“difficult”には変わりありません。そこで、当初の旅程では無理はしないで、別の比較的気楽に周われるハイキングコースに行くことを考えていました。

 

その中で、前日バート・イシュル・レハール音楽祭で、レハール/この世は美しい、を観たんです!オーストリアらしい山を舞台にしたオペレッタに大いなる感動!

 

さらには、前日のバイロイト→バート・イシュルの間の移動で列車が遅れて時間がなくて、バート・イシュル近郊の山登りができませんでした…。山登りへの渇望感が出てきたところに山のオペレッタを観て、俄然、山登りをしたい気持ちが高まるフランツ!

 

 

 

これはもはやドナーコーゲルにチャレンジするしかないな?

 

きっとドナーコーゲルに登れ!という神様のお告げに違いない!

 

 

 

もう決心しました。この日のドナーコーゲル登山チャレンジが決まった瞬間でした。

 

 

 

 

 

そして迎えた当日8月18日。お天気は山登りにうってつけの快晴!バート・イシュルからバスで1時間弱でゴーザウ湖に到着。まずはゴーザウ湖の周りを散策しました。

 

ここは風がないと鏡のようになる湖面に周囲の山々が写る、その美しさで知られています。湖の周りは1周5kmのハイキングコースになっているので、ハイキングを楽しむことにしました。

 

 

(写真)まず湖に着くと、この素晴らしい光景が迎えてくれます!大いなる感動!湖と取り囲む山々の景観、特に湖に山が見事に写り、綺麗に上下対称となった光景が本当に素晴らしい!

 

(写真)正面のダッハシュタインの山の上には氷河が見えます。やや青みがかった色の氷河を肉眼で見ることができ、感動しました!

 

 

 

(写真)そして、この山が私がこの後に登るドナーコーゲルです(写真の一番右の山)。白い岩肌の山と、深緑の森と、うす緑の草地のコントラスト、それを見事に写す湖がとても美しい!ハイキングで歩いて行くと視点がどんどん変わっていくので、それも楽しかったです。

 

(写真)ややっ!?湖に波を立てて進む謎の生き物が?すわネッシーか???

 

と思ったら、鴨のみなさんでした、笑。こうして縦に並んで泳ぐと、きっと水の抵抗が軽減されるんでしょう。何だか、アイススケートの団体戦みたい。

 

 

 

(写真)随所で湖の美しい光景を見ながらのハイキングはめっちゃ楽しい!この日は森林の管理の方々が剪定作業をされていたので、湖の南側半分は立ち入り禁止。北側半分のみでしたが、1時間くらい湖畔のハイキングを楽しみました。ぜひまたリピートして、今度は1周まるまる歩いてみたいです。

 

 

 

 

 

そして、いよいよ難易度が高いとされているドナーコーゲル登山に向かいます!

 

 

(写真)このロープウェイの駅から上に上がります。

 

(写真)ロープウェイで上に上がって、まずはこのような感じの道を歩きます。まだまだ歩きやすいですが、それでも岩が多いですね。

 

(写真)ここが通常のルート(右)と、ヴィア・フェラータで登る、より上級編のルート(左)の分かれ道です。

 

(写真)これ見てください!岩肌に人がびっしり!こちらがそのヴィア・フェラータで登るルートですが、沢山の人が登りに来ているので、渋滞が起こっています。ザイルにつないであるとは言え、ちょっと怖いですね…。

 

(写真)右の通常のルートを進んで10分くらい歩くと標識がありました。ドナーコーゲルまで2時間の表示。いよいよこれからですね!(なお、これ以降、このような分りやすい表示は一切出てきません。)

 

(写真)ドナーコーゲル登山の最初の辺り。写真のように、ルート上の岩にオーストリアの国旗が描かれていて、それを目印として進みます。

 

(写真)だんだん道が岩だらけで険しくなってきました…。

 

(写真)こうなってくると、もはや道はなく、あるのは岩だらけの山肌。完全な岩登りとなります。オーストリアの国旗の目印がないと、どう進んだら良いのか分らなくなります…。

 

(写真)こんな感じの岩壁もバンバン出てきます!身体のバランスや足を滑らせないように気を付けながら、慎重に登って行きます。

 

(写真)もはや、どうやって進んで良いのか、すぐには分らなくなってきました…。とにかく、オーストリアの国旗の目印を頼りに、自分で足場や安全を考えながら登って行きます。登り方は一通りだけではありません。

 

(写真)足だけで登るのは危険です。写真上のお兄さん(赤の矢印)のような感じで、常に両手または片手で4点か3点を押さえながら、バランスや体重移動を考えながら登ります。

 

(写真)こんな感じの崖もバンバン出てきます(左上がルート)。もしも足を滑らせて落ちてしまったら、ダメージ大きそうですね…。とにかく足を滑らせないように一歩一歩、慎重に進みます。

 

(写真)真っ直ぐ上に登るというよりは、写真のように斜めの岩肌を横に移動していって、結果、だんだん登っていく、という感じの行程が多かったです。

 

 

 

私は学生時代はサッカー部で、今でも泳いだり走ったりして身体は相当鍛えており、体力にはかなり自信があります。なので、身体的にキツイことはありませんでした。

 

しかし、横や斜めの行程が多く、ちゃんと上に登っている、頂上に向かっているという実感がなかなか湧かないので、精神的にキツかった感じです…。

 

 

 

(写真)なので、こういうユーモアのあるサインが出てくるとホッとします!大丈夫だよ、心配しないで。ちゃんと頂上まで行けるよ!と、アドバイスする山岳ガイドさんの笑顔を連想します。こういうセンスはとてもいいですね!

 

 

 

(写真)と、安心してはいられません。あれっ!?据え付けのザイル(登山用の鉄製のロープ・写真中央)が出てきた!?聞いてないよ~!!!笑

 

 

 

でも、確かに傾斜がキツくて、すぐ下が崖なので、ここはザイルが必要なのかも?こんな感じでザイルに掴まりながら登らなければ行けない場所も4ヶ所くらいありました。

 

そのうち、1ヶ所はそれに従って進んで行くと、頂上でなく他の場所に行ってしまうザイルなんです。うっかり行きかけましたが、何か違う?と思って戻ったら、正しいルートは別でした。ああ、怖い怖い…。

 

 

 

(写真)さらに険しくなってきました!うわ~!これ、どこをどう登ったらいいんだろう?とにかくオーストリアの国旗の目印を頼りに岩に食らい付きます。とにかく、登れども登れども岩が続いて、頂上は全く見えず、「本当に頂上に着くんだろうか?」と疑心暗鬼になってくるのが怖いところ。自分との闘いですね。

 

 

 

そんなこんなで1時間以上、岩と格闘していたら、たまたまオーストリアの方と遭遇したところ、「あそこに○○がいるよ!」と小声で声を掛けられました。その親切なオーストリアの方の指さす方向には…、

 

 

(写真)何と!アルプスカモシカです!!!初めて見ました!超感動!苦労して登ってきて良かった!

 

2019年にウィーンで観たミュージカル“I am from AUSTRIA”では、主人公のエマとジョズィがオーストリア最高峰のグロースグロッスナーにヘリコプターで旅しますが、そこにも登場したくらい、アルプスカモシカはオーストリアを代表する動物です。現地で生アルプスカモシカを見ることができて感無量!

 

 

(参考)2019.4.27 ミュージカル/I AM FROM AUSTRIA(ライムント劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12460415538.html

 

 

 

(写真)そして、この辺りからの風景。美しいオーストリアの農村の風景が広がって、風光明媚とはこのこと!ただ、足場が悪いので、あまり見とれていると危ないので先に進みます。

 

 

 

(写真)引き続き、難しい岩場のルートが続きますが、1時間以上登ってきて、コツを掴んでだんだん慣れてきました。

 

(写真)心に少し余裕が出てきたのか、可愛らしい高山植物の花の写真も撮りましたが、結局この1枚だけでした。全然余裕ないじゃん!笑

 

(写真)まだまだ厳しい岩場が続いて、またもや据え付けのザイルが出てきました!最初はおっかなびっくりでしたが、この辺りまで来ると、さあ出て来ましたね?OKOK!と、ひょいひょいと手繰って登っていきますが、同時に「慣れ」や「感覚の麻痺」は逆に怖いな、ということも実感しました。

 

 

 

(写真)そうこうする内に登り始めてから1時間40分くらい経ったら、視界が開けて、空を近く感じて来ました!いよいよ頂上が近くなってきたのかも?

 

(写真)そして、オーストリアの国旗が2つ並ぶ岩の先を抜けると…

 

(写真)やったー!!!遂に頂上に辿り着きました!!!大いなる感動!!!

 

 

 

ふもとの標識から1時間50分かけて、遂に頂上に辿り着くことができました!!!!バンザーイ!!!

 

頂上には既に10人くらいの方々がいました。おそらくヴィア・フェラータのルートで、真っ直ぐ登って来られた方々ですね。

 

 

 

 

 

(写真)そして、どうですか?この壮大なパノラマ!!!ドナーコーゲルのウェブサイトに“Great panorama”と書いてありましたが、正にその通り!お隣の山を見ていただければ分るように、ドナーコーゲル自体も非常に急峻な尖った山なので、逆に足下には何もなく断崖絶壁なので、だから見晴らしが抜群なんです!

 

 

(写真)朝に散策した美しいゴーサウ湖。ドナーコーゲルの山頂から見ても、惚れ惚れするほど美しい!また、氷河も太陽の光にきらめいて、眩いばかりの美しさ!

 

 

(写真)ドナーコーゲル山頂の十字架。真ん中にエーデルワイスが描かれているのが本当にいいですね~!赤と白のオーストリア・カラーのジャージの方もいらっしゃっていい感じ。

 

(写真)鳥を発見!こんな高いところにいるんですね~。ドイツの最高峰ツークシュピツェに登った時にも見たキバシカラスだと思います。

 

(写真)しばらく景色を楽しんでいると、先に来ていた方々が何か食べ始めました?きっと、登山で体力を使ったので、帰り道で疲れないように、栄養補給しているんですね~。私も真似して、非常食で持ってきたモーツァルトクーゲルをいただきました、笑。

 

(写真)30分くらい最高のパノラマを楽しんだ後、とても名残惜しいですが、頂上を後にして、下山しました。

 

 

 

帰り道は同じルートを降りて行きますが、降りる方が足を降ろした岩がズレたり崩れたりすることもあって、ヒヤッとした瞬間が何度かありました。とにかく安全第一、慎重に降りて行きました。

 

 

 

(写真)ドナーコーゲルから無事に降りてきて、ロープウェイ駅の近くの山小屋まで辿り着きました。もうお腹ペコペコなので、ここでランチと行きましょう!

 

(写真)オーストリアのビールKobersdorfer。これです、これ!山登りを達成した後のビールはめちゃめちゃ美味い!!!喉カラカラだったので、ほとんど一気飲みしました!笑

※良い子は真似をしないようにしましょう。

 

(写真)ランチはバジリコのペンネ。ビール2杯目も行って計1リットル。山登りで500mlのミネラルウォーターを2本飲み干しました上でビール2杯なので、2時間の登山は予想以上に水分が必要なことを実感しました。

 

 

 

(写真)ケーブルカーを降りて、再びゴーザウ湖。朝は風がなくて水面に山が写っていましたが、午後は波があってもう綺麗に写っていません。朝はラッキーだったんですね~。

 

(写真)ゴーザウ湖畔のレストラン。お昼過ぎた時間でしたが、大勢のお客さんで賑わっていました。ゴーザウ湖で1日ゆっくりのんびりするのもいいですね。

 

(写真)再びゴーサウ湖畔から見るドナーコーゲル。あんな高くて急な山に登ったとは改めて感無量!達成感が半端なかったです!

 

 

 

 

 

なお、(日本人にとってポピュラーな場所ではないのでまずいらっしゃらないと思いますが)この記事を見て、ドナーコーゲルに登ってみようと考えられる方も、もしかするといらっしゃるかも知れません?その場合、以下の点も含めて、くれぐれもご注意ください!

 

 

◯私は体力にかなり自信がありますが、それでもそれなりに疲れました。2時間の岩登り&2時間の岩降りはかなりキツイので、無理は絶対に禁物で!

 

◯途中、山小屋などはありません。雨が降ったら岩が滑って動けなくなる可能性があり、しのぐ場所もないので大変危険です。お天気には十分注意して、微妙な場合は途中で引き返した方が良いと思います。

 

◯ハイキングでなく登山の範疇に入ると思われるので、水分や非常食、防寒対策など、山登りの準備をしっかりして登りましょう。

 

◯道がなく岩登りとなりますが、オーストリアの国旗の目印が分りにくい場所が時々あります。迷ったら、他の方が登っていくルートを頼りにするようにしましょう(道中10人くらい見かけました)。

 

◯私は(厚手の靴下を履いた上で)いつもハイキングで使っているグリップの良いジョギングシューズで登りましたが、登山靴の方が無難です。岩が滑りやすいのと、滑って岩に足をぶつけて怪我するリスクがあるので。

 

 

 

 

 

私は日本の山も含めて、そんなに多くの山を登ってきた訳ではありませんが、今回のドナーコーゲル登山は間違いなく、人生で最も難しかった山登り。そして最高の山登りとなりました!!!(夜の観劇の記事に続く)