コロナ禍で外国人指揮者の来日が難しい状況の続く中、常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレさんがいよいよ読響の指揮台に帰ってきました!モーツァルトにブルックナー、非常に楽しみなコンサートです!

 

 

読売日本交響楽団第604回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ

ピアノ:岡田 奏

 

モーツァルト/ピアノ協奏曲第25番ハ長調

ブルックナー/交響曲第6番イ長調

 

 

 

外国人指揮者の入国は引き続きハードルが高いですが、今回、セバスティアン・ヴァイグレさんは14日間の隔離措置(その間ホテルに缶詰)を受け入れ、それをクリアして、いよいよ読響に客演されるものです。

 

 

 

前半はモーツァルト。岡田奏さんのモーツァルトは、昨年5月にもヴァイグレさんと読響の伴奏で21番を聴きましたが、その時と同じく、弱音を駆使したチャーミングなモーツァルト。ニュアンスに溢れ、とても小気味の良いピアノです。第1楽章のカデンツァは堂に入った表現とタッチに大いに魅了されました!岡田奏さん、また一段と成長された印象。

 

ヴァイグレさんと読響は、しっとりしたモーツァルト。先週聴いた鈴木雅明/東響の活き活きとしたモーツァルトとは一線を画しますが、この演奏にもモーツァルトの愉悦を感じます。上質なモーツァルトを2週続けて聴けて、また、ゲアハルト・オピッツさんの老練なピアノを聴いた翌日に、若手ピアニストの溌剌としたピアノを聴けて、何とも言えない幸せを感じました。

 

 

 

後半はブルックナー。前半は協奏曲なのでソリストである岡田奏さんを紳士的に讃えていましたが、後半は交響曲なのでセバスティアン・ヴァイグレさん一人で登場。指揮台に上ると、観客からの拍手のボルテージが上がり、それにたっぷりと丁寧に感謝の会釈をするヴァイグレさん。この時点でかなり胸に熱いものが込み上げました。

 

 

第1楽章。冒頭からオケを良く鳴らしつつ、丁寧にニュアンスの付けられた比較的オーソドックスな演奏で進みます。第3主題の後、ホルンが鎮まるニュアンスにはグッと来ました。その後のつなぎの音楽では、チャーミングな高山植物、きらめく雪山などアルプスの光景が目に浮かび、感動を呼びます。何と美しい曲!早くも涙が流れます。

 

第1主題の逆さまの音型がだんだんと加速する大好きなシーン。スケール大きくゆったり進み、アッチェレランドは最後の方のみ。充実の響きで悠々進める音楽は真に感動的!私はヴァイグレさんの指揮に「ドイツの本格派の指揮者」のイメージを持っていますが、そのことをつくづく感じる瞬間。

 

最後の盛り上がりに向けた、金管がこだまするシーンもたっぷりで神々しい!また、さっと引いて、大きく弾ける瞬間にもゾクゾク来ます!この日の読響の金管群のみなさまは絶好調でした。GJ!ラストの行進、迫力の音楽は、ギリギリまでインテンポで突き進み、最後の最後だけリタルダントを入れました!素晴らしい第1楽章!

 

 

 

第2楽章。この楽章もニュアンスをよく付けつつ、読響の重厚なオケ響きを活かした、ゆっくり目の演奏。この楽章の第1主題&第2主題&第3主題がどれだけ深い音楽か!大いに魅了されつつ、改めて思い知りました!

 

特に2回目の第2主題を、ヴァイグレさんが気持ち速めに進めたシーンには大いにクラクラしました…。信仰の喜び、自然への感動。冷静さを保っても、溢れる喜びと感動を抑えることはできません。心が盛り上がる、その様子を大いに感じました。

 

最後に弦楽がきらびやかに一音一音降りてくる場面は、ワーグナー/ローエングリンの第1幕への前奏曲にも似た、何か神々しいものが降臨してくる光景が見えるようでハッとしました!随所で感動の音楽に涙した、最高の第2楽章!

 

 

(写真)ジョヴァンニ・セガンティーニ/信仰による慰め(魂の昇天)。

※ハンブルク美術館で購入した絵葉書より

 

ヴァイグレさんと読響の感動的な第2楽章を聴いていて、繰り返し脳裏に思い浮かんだのは、2018年にハンブルク美術館で観たセガンティーニのこの絵。セガンティーニはスイスでアルプスやそこで暮らす人々の絵を多く書いた画家です。ブルックナー6番はスイスとは切っても切れない深い関係にある曲だと強く感じます。

 

 

 

比較的ゆったりしたテンポで充実の音楽を楽しめた第3楽章に続いて、第4楽章も比較的ゆったり目のテンポ。丁寧に充実の音楽を紡いでいきます。このテンポで決して飽きさせずもたれず、密度の濃い音楽を聴かせるヴァイグレさんと読響はただ者ではありません。

 

第4楽章はこんなにも素晴らしい音楽だったのか!そのことを強く感じながら、充実の響きに身を委ねるのが、どれだけ心地良いことか。最後はスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響の大伽藍とは一線を画した、ストレートなエンディング!まるで音楽が終わりではなく、この先も意気揚々と進んでいくことを示すような、見事な終わり方。素晴らしかったです!

 

 

 

全くもって見事なブルックナー!!!セバスティアン・ヴァイグレさんのスケールの大きな指揮に大いなる感動!!!

 

読響は、スクロヴァチェフスキ/読響時代の伝統を受け継ぐ、「ブルックナーの読響」を印象付けた素晴らしい演奏!!!

 

 

 

いや~、めっちゃ凄かったです!何より、ブルックナー6番という曲が、どれだけ素晴らしい曲なのか。悠々としたテンポで圧倒的に見せつけた、非常に説得力のある演奏でした!

 

私はブルックナー6番では、2005年のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響、2014年のリッカルド・ムーティ/ウィーン・フィル(ザルツブルク音楽祭)の演奏が、忘れられない最上の思い出になっていますが、今日のセバスティアン・ヴァイグレさんと読響の演奏も、それらに並ぶ特別な思い出になるでしょう。

 

 

 

終演後は熱烈な拍手の嵐!その中、ヴァイグレさんがオケのみなさんに深く感謝をされつつ、大いに手応えを感じていた様子がよく分りました。拍手はオケが下がった後も全く弱まることなく、ヴァイグレさんが最後に出て来られて、いわゆる一般参賀となりました。大勢の観客がスタンディング・オベーションでヴァイグレさんを讃えるシーンは極めて感動的!!!

 

それはコロナを乗り越えて、世界的な指揮者が日本に来てくれたことはもちろんですが、この素晴らしいブルックナーに大いに共感し、そして感動した観客がいかに多かったのか、事実として表わすものでしょう。ヴァイグレさんも何度も何度もお辞儀とお礼で返します。14日間のホテル缶詰を経て迎えたこの日は、ヴァイグレさんにとっても、特別な日となったことでしょう。

 

 

 

本ブログでも感想記事を書きましたが、11月のウィーン・フィルの来日公演は、コロナ禍の中でのスペシャルで意義深い出来事となりました。今日のセバスティアン・ヴァイグレさんが読響の指揮台へ帰ってきてくれたコンサートも、それとはまた別の感動を呼び起こす、特別なコンサートとなりました!

 

まだまだコロナで大変な状況が続いてはいますが、その一方で、それを凌駕する大きな感動と希望がある。素晴らしい音楽家のみなさまにただただ感謝感謝です!

 

 

 

(追伸)このコンサートに合わせて、読響は2021/2022シーズンのプログラムを発表しました。これがまた攻めに攻めた魅力的なプログラム!!!フランツは現在、定期演奏会の会員ですが、プログラムを見た瞬間に更新することを即決。その時間、ものの10秒!速っ!(笑)

 

オペラを得意とするセバスティアン・ヴァイグレさんの指揮、エレーナ・パンクトラヴァさんと藤村美穂子さんが対決するR.シュトラウス/エレクトラ、読響の看板であるブルックナー、俊英の鈴木優人さんのコンサート(シューベルト/グレートは何と3回目の親子対決!笑)など、極めて魅力的なプログラムです。

 

名曲シリーズと土曜・日曜マチネーシリーズも聴きに行きたいコンサートが目白押しなので、よく考えつつ、もう1シリーズ追加したいと思います。以下、特に注目のコンサートを一部ご紹介します(会場は※の公演以外は全てサントリーホール)。

 

 

 

2021年

 

5月21日(金)

(指揮:下野竜也/ピアノ・アンドレ・ラプラント)

マルティヌー/過ぎ去った夢

モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番

マルティヌー/交響曲第3番

 

6月15日(火)

(指揮:セバスティアン・ヴァイグレ/ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー)

ヴェルディ/歌劇「運命の力」序曲

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲

ブラームス/交響曲第1番

 

6月29日(火)

(指揮:セバスティアン・ヴァイグレ/クラリネット:ダニエル・オッテンザマー/ファゴット:ソフィー・デルヴォー)

グルック(ワーグナー編)/歌劇「オーリードのイフィジェニー」序曲

R.シュトラウス/クラリネットとファゴットのための二重小協奏曲

フランツ・シュミット/交響曲第4番

 

7月21日(水)

(指揮:コルネリウス・マイスター/ソリスト:調整中)

ヘフティ/変化(日本初演)

ブルックナー/交響曲第2番(1877年稿/ノヴァーク版) ほか

 

10月29日(金)

(指揮:鈴木優人/ピアノ:ヴィキングル・オラフソン)

ライマン/シューベルトのメヌエットによるメタモルフォーゼン(日本初演)

アデス/イン・セブン・デイズ(日本初演)

シューベルト/交響曲第8番「グレート」

 

11月20日(土)・21日(日)

※会場:東京芸術劇場コンサートホール

(指揮:鈴木優人/ピアノ:ミシェル・カミロ)

R.アルフテル/祝典序曲

カミロ/ピアノ協奏曲第2番「テネリフェ」(日本初演)

ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」

 

2022年

 

1月20日(木)

(指揮:ローター・ツァグロゼク)

メシアン/われら死者の復活を待ち望む

ブルックナー/交響曲第5番

 

2月10日(木)

(指揮:セバスティアン・ヴァイグレ/エレクトラ:エレーナ・パンクトラヴァ/クリテムネストラ:藤村美穂子/クリソテミス:アリソン・オークス)

R.シュトラウス/エレクトラ(演奏会形式)